AIの進化による労働喪失の懸念は、上記のように、これまでにも繰り返し議論されてきました。
近年、その議論が現実味を帯びて再燃したきっかけは、ある衝撃的な予測を含む論文の発表にあります。

1)📘 労働喪失論の原点:2013年オックスフォード論文の衝撃

AI社会化に拠る労働喪失論が広く社会に認識される契機となったのは、2013年に発表されたオックスフォード大学の研究者、カール・ベネディクト・フレイ(Carl Benedikt Frey)氏マイケル・A・オズボーン(Michael A. Osborne)氏による論文「The Future of Employment: How Susceptible Are Jobs to Computerisation」です。

項目概要
発表年2013年
論文名「雇用の未来:コンピューター化によって仕事はどれだけ影響を受けるのか」(The Future of Employment: How Susceptible Are Jobs to Computerisation?)
衝撃的な予測米国の全雇用のうち、およそ47%が、今後10〜20年でコンピューター化(AIやロボット技術)によって自動化される高いリスクに晒されていると試算しました。


この研究では、米国の職業のうち約47%が「高い確率で自動化される可能性がある」と試算され、知的労働も含めた広範な職種がAIやロボティクスによって代替される未来像が提示されました。
この「47%」という具体的な数字は、世界中の政策立案者や産業界・企業経営者はもちろん、働く人々にも強い衝撃を与え、「AIは特定の単純作業だけでなく、広範囲のホワイトカラー職をも代替し得る」という認識を一気に広げました。

この論文の特徴は、単なる技術論ではなく、職業ごとの「自動化感受性」を定量評価した点にあります。
それにより、AI社会化が単なる効率化ではなく、雇用構造そのものを揺るがす可能性を示しました。

2)「体系化された知識」の代替という核心

フレイ氏とオズボーン氏の研究以降、労働喪失論は単なるブルーカラー(製造業など)の自動化に留まらず、ホワイトカラー(知的労働者)の代替へと焦点が移りました。
この点は、冒頭の記事内での米国の現状分析と完全に一致しています。
記事内の裏付け:
 米フォード・モーターのCEOが「AIによってホワイトカラー職の雇用が半減する」と予想した点。
 スタンフォード大学の試算で、コード生成などの「体系化された知識」に依存するソフトウエア開発の分野で若年雇用の大幅な減少が示された点。
 顧客の問い合わせに応じるカスタマーサービスなど、定型的な知識やルーティン作業を含む職種でのAI活用が進んでいる点。
これらの分析は、AIが「体系化・ルーティン化された知識」の処理において人間に優位性を持ち始めたという、オズボーン氏らの予言の現実化の初期段階を示しています。
このように、10年後の2025年、フレイ&オズボーンの予測は現実のものとなりつつあることが分かります。

3)📉 若年層の雇用減少:預言が現実に変わる

上述の米スタンフォード大学デジタル経済研究所の研究者たちは、ソフトウェア開発分野における22〜25歳の雇用が、2022年後半のピークから2025年7月までに約20%減少したと試算。
コード生成などの体系化された知識は、生成AIによって急速に代替されているのです。
さらに、セントルイス連邦準備銀行のエコノミストたちも、AI導入と失業率の上昇との相関を認める分析を発表。
特に大卒若年層(20〜24歳)の失業率が、2024年末の7.5%から2025年8月には9.2%へと上昇した事実は、景気循環では説明しきれない構造的変化を示唆していると言えます。

4)🧩 労働喪失論・雇用喪失論の本質:社会構造の転換点

フレイ&オズボーンの論文が示した「自動化の感受性」は、単なる技術的予測ではなく、社会設計の再考を促す警鐘でした。
2020年代半ばの米国では、若者のキャリア選択や教育制度、企業の人材戦略にまで影響を及ぼすこの変化が現実化しています。
セントルイス連銀のエコノミストらが「AIによる労働喪失・雇用喪失の初期段階を目撃している可能性がある」と認めたことは、この喪失論が、かつての懸念から現在の統計的な現実へと変化したことを裏付けるものと言えます。
AI社会化は、労働市場の根幹を揺るがす「社会的転換点」であり、今後の政策形成や社会設計において中心的な論点となるに違いありません。

次項では、現在の日本の実情と課題について概括してみることにします。

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