変わる家族のかたちと人生設計|家族規模の変化をライフステージから考える

LIFE STAGE

結婚するかどうか、子どもを持つかどうか。
かつては「いずれそうなるもの」と考えられてきた家族のかたちが、いま大きく揺らいでいます。

それは価値観の変化だけでなく、働き方、所得、社会保障といった現実的な条件の変化と深く結びついています。
本記事では、家族規模の変化を単なる社会問題としてではなく、人生のライフステージごとの選択と備えという視点から捉え直します。

本シリーズでは、日経〈やさしい経済学〉で取り上げられた
「変わる家族のあり方」を手がかりに、
結婚・家族・少子化・介護といったテーマを、
経済学の解説ではなく、人生のライフステージという視点から再構成しています。

家族を「あるべき姿」で語るのではなく、
現実の条件のもとで、
人はどのような選択を迫られているのかを整理することが、本シリーズの目的です。

少子化や未婚率の上昇、単身世帯の増加。
こうした現象はしばしば「家族が壊れている」「若者の価値観が変わった」と語られがちです。

しかし実際には、家族を取り巻く前提条件そのものが、大きく変化しています。

・長期的な賃金停滞と雇用の不安定化
・共働きを前提としなければ成り立たない家計構造
・住宅費・教育費・医療費といった固定的な生活コストの上昇

これらの要因が重なり合い、「家族を持つこと」が感情や理想だけでは判断できない時代になりました。
家族はもはや自然に形成される単位ではなく、条件を見極めた上で選択される存在になりつつあるのです。

経済学の視点では、家族は単なる私的な集団ではなく、重要な機能を担ってきた存在と捉えられてきました。

1)生活コストの共有
住居費や生活費を複数人で分担することで、個人の負担を軽減する。
2)リスクの分散
病気や失業といった不測の事態を、家族内で支え合う。
3)ケアの提供
子育てや介護といった無償のケア労働を家族内で担う。

ところが現在、これらの機能は以前ほど安定的に機能しなくなっています。
共働きが前提となり、家族内でケアを担う余力が減少。収入格差や雇用不安によってリスク分散も難しくなっています。

結果として、「家族を持てば安心」という前提は、現実と合わなくなりつつあります。

家族の意味は、年齢や置かれた立場によって大きく異なります。
ここでは、年代というライフステージごとに、一般的とされる事情・状況をベースに整理してみましょう。

この世代にとって、結婚は「いつか自然にするもの」ではなくなりました。

・不安定な雇用
・将来の収入見通しの不透明さ
・住宅取得や子育てにかかる費用の重さ

こうした現実の中で、結婚や出産を慎重に考えるのは合理的な判断、あるいは当然のことと言えます。
結婚しない、あるいは先送りするという選択は、必ずしも消極的なものではなく、どんな人生を送るか、自分の人生を守るための判断になっているのです。

40代になると、家族の意味はさらに多様かつ複雑になります。

・子育ての真っ只中にいる人
・子どもを持たない選択をした人
・親の介護が現実味を帯びてくる人

同じ世代でも、家族構成によって負担の内容や程度が大きく異なります。
この時期は、「どんな家族を持つか・形成するか」よりも、家族に何を期待し、何を期待しないかを明確にすることが重要になります。

高齢期に近づくにつれ、家族は安心材料であると同時に、不確実な存在にもなります。

・配偶者が先立つ可能性
・子どもが近くに住んでいない現実
・家族に過度な負担をかけたくないという思い
・既に単身中高齢者生活に入っている可能性

家族がいること自体が、老後の安全を保証するわけではありません。
むしろ、単身・非婚であっても、早めに備えを整えている人の方が、安定した生活を送れるケースも増えています。
無論、単身者として日常や将来への不安を抱えている方々も多いでしょう。

家族の役割が変化する中で、重要になるのは家族以外による支え方・支えてもらい方をどう組み合わせるかです。

・公的制度(年金・医療・介護)を正しく理解する
・民間サービスや行政機関やNPOなどの地域資源を活用する
・自助としての資産形成や住まいの選択を考える

家族にすべてを委ねる時代は終わりつつあります。
だからこそ、「家族があるかどうか」ではなく、どのような備えを持っているか取り組んでいるかが問われるようになっています。

結婚するか、しないか。
子どもを持つか、持たないか。

これらに正解や絶対的な規定・基準はありません。
しかし、家族を取り巻く前提条件が大きく変わったことは、紛れもない事実です。

重要なのは、世間の「普通」に合わせることではなく、
自分のライフステージや価値観・想いに合った判断を、情報と現実に基づいて行うことでしょう。

LIFE STAGE NAVI では、結婚や家族だけでなく、
介護、老後資金、住まい、単身リスクといったテーマも含め、
人生を長期的に見渡すための視点を提供していきます。

次の記事では、家族規模の縮小がもたらす「性別役割」と働き方の変化を、掘り下げていきます。

本記事は、「変わる家族のあり方」を
ライフステージ視点で再構成する連載の一部です。

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