家族規模縮小の本質とは何か|性別役割分業が崩れた社会での人生設計

LIFE PLAN

「家族が小さくなった」「結婚しない人が増えた」。
こうした変化は、少子化や価値観の多様化として語られることが多いテーマです。

しかし、家族規模の縮小は、単なる人数の問題ではありません。
その背景には、かつて家族を支えていた“性別役割分業モデル”が、社会的にも経済的にも機能しなくなった現実があります。

本記事では、家族規模縮小の本質を、
働き方・生計・ライフステージの変化という観点から読み解いていきます。

かつての日本社会では、

・男性が主に稼ぎ
・女性が家事・育児・介護を担う

という「性別役割分業」を前提とした家族モデルが、長く主流でした。

このモデルのもとでは、家族が大きいほど役割分担が成立しやすく、
子どもを持つことも、経済的・社会的にある程度合理性を持っていました。

しかし現在、この前提は大きく崩れています。

・一馬力では生活が成り立ちにくい
・共働きが標準化した一方で、家事・育児の負担は依然として家庭内に残る
・非正規雇用や収入格差の拡大

こうした条件のもとでは、家族を拡大すること自体が、大きなリスクになり得ます。
家族規模の縮小は、選好の変化ではなく、合理的な適応行動として進んでいる側面が強いのです。

しかし、家事・育児を完全に外部化することを想定すると、一体「家族とは何か?」「家族とは何のためのものか?」という根源的な問いかけが必要になってくるのではと思われます。

性別役割分業が成り立たなくなった最大の要因としては、経済構造の変化があります。

・実質賃金の伸び悩み
・長時間労働を前提とした雇用慣行
・教育費・住宅費の上昇

これらにより、「一家の大黒柱」が家族全体を支えるモデル、主として「夫・父」、時には「妻・母」一方が家族全体を支えることが、現実的でなくなりました。
結果として、夫婦共に働くことが前提となり、家庭内でケアを担う余地が縮小しています。

本来であれば、共働き社会では、

・保育
・介護
・家事支援

といったケア労働が、社会全体で支えられる必要が生じます。

しかし実際には、これらの負担は依然として家庭に残り、
特に女性に偏りやすい構造が続いています。

この「働きながら家庭内ケアも担う」二重負担は、
家族を持つこと、子どもをつくることへの心理的・現実的ハードルを高めています。

性別役割分業の揺らぎは、ライフステージごとに異なる形で現れます。

この世代では、結婚や出産が、

・キャリアの中断
・収入低下
・働き方の制約

につながる可能性が、現実的な問題として意識されています。

特に女性にとっては、「家庭を持つこと」が
経済的自立を損なうリスクと重なって見える場面も少なくありません。

結果として、結婚や出産を慎重に判断する、あるいは選択しないという判断や決断が増えています。
晩婚化や晩産化という事象にそれらが現れてもいます。

現状の負担

40代になると、性別役割分業の問題は、より具体的な負担として現れます。
・子育てと仕事の両立
・親の介護の開始
・家事負担の偏り
これらが重なることで、家庭内の役割分担が限界・臨界を迎えるケースも少なくありません。
この時期は、「役割を分ける」発想そのものを見直す必要に迫られます。
よりソフトな言い方をすれば「ライフスタイル」の見直し・再設計・再構築を迫られることに繋がります。

起こりうる結果|離職・離婚も

厳しい言い方をすれば、両立の困難度が高まることで、介護離職や子育て離職を余儀なくされる。
あるいは、離婚とそれによるシングルマザー、シングルファーザーが増加する。
社会問題に至るケースが、既に想定内のこととされているのです。

高齢期に近づくにつれ、性別役割分業はさらに脆弱になります。

・配偶者の健康問題
・単身化の進行
・介護を担う人がいない現実

家族内で役割を固定してきた場合ほど、
一人が欠けたときの影響は大きくなります。

この段階では、家族モデルそのものを前提にせず、
外部資源を含めた生活設計が不可欠になります。

家族が小さくなったことは、しばしば否定的に語られます。
しかし、重要なのは人数ではなく、その家族が持続可能かどうかです。

・無理な役割分担を前提にしていないか
・将来の変化に耐えられる設計になっているか
・家族以外の支えを組み込めているか

家族規模の縮小は、
旧来の性別役割分業モデルからの「撤退」「回避」であり、
現実に即した再設計の結果とも言えます。

これから結婚や家族を考える際に重要なのは、

・役割を固定しないこと
・将来の変化を前提にすること
・家族以外の支えを早めに組み込むこと
・個々人の生き方・価値観を理解・尊重し、協力・協調に繋げること

性別役割分業が前提だった時代の家族観を、そのまま引き継ぐことはできません。
だからこそ、自分のライフステージに合った形で家族を設計する視点が必要になります。

・子どもを持つことの「便益」と「負担」は、誰がどのように引き受けているのか
・なぜ少子化対策は、個人の合理性と噛み合わないのか
・家族に代わる支えは、どこまで社会化できるのか

次の記事では、少子化をめぐる経済学の「無理筋」を手がかりに、
子どもを持つことを巡る現実と制度のズレを掘り下げていきます。

本記事は、「変わる家族のあり方」を
ライフステージ視点で再構成する連載の一部です。

シリーズ第1回、前回記事は、こちらで確認できます。
⇒ 変わる家族のかたちと人生設計|家族規模の変化をライフステージから考える – Life Stage Navi

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