家族は、困ったときに支え合う存在。
そう考えられてきた時代は、決して遠い過去ではありません。
しかし今、
「家族がいれば何とかなる」という前提は、静かに崩れ始めています。
とりわけ、親の介護と単身化の進行は、
家族の役割そのものを問い直す大きな要因となっています。
本記事では、家族が果たしてきた「保険機能」を整理した上で、
それがなぜ不安定になっているのかを、
ライフステージの視点から考えていきます。
家族が担ってきた「保険機能」とは何か
経済学や社会保障の文脈では、
家族はしばしば「非公式な保険」として位置づけられてきました。
家族の保険機能の具体例
・病気や失業時の生活支援
・高齢期の介護や見守り
・金銭的・心理的なセーフティネット
公的制度が十分でなかった時代、
家族はこうした役割を自然に担ってきました。
しかし、この仕組みは
家族が安定的に存在すること
ケアを担える人がいること
を前提にしています。
この前提が、いま大きく揺らいでいます。
親の介護が突きつける現実
家族の保険機能が試される場面として、
最も現実味を帯びているのが「親の介護」です。
介護は突然始まる
介護は、多くの場合、予告なく始まります。
・親の病気や転倒・骨折
・認知機能の低下
・配偶者を亡くした後の生活不安
こうした出来事が重なると、
家族は短期間で重大な判断を迫られます。
家族だけでは支えきれない理由
現代の介護が、家族だけで成り立ちにくい理由は明確です。
・少子化によるケア担当家族資源の希少化
・共働きが前提の生活構造
・子育て期と介護期の重なり
・介護期間の長期化
特に40〜50代では、
仕事・子・親の三重負担に直面するケースも少なくありません。
この状況で、家族にすべてを任せる設計は、
現実的とは言えなくなっています。

単身化が進む社会で家族はどう変わるのか
家族の保険機能を不安定にしているもう一つの要因が、
単身世帯の増加です。
単身=不利、とは限らない
単身化=リスク、と決めつける必要はありません。
問題は「孤立」と「無準備」です。
・生活設計を自分でコントロールできる
・役割の偏りが生じにくい
・早期から備えを考えやすい
一方で、「家族が支えてくれるだろう」という前提で
準備を先送りしてきた場合、
単身化は大きな不安要因になります。
問題は「孤立」と「無準備」
重要なのは、
単身かどうかではなく、孤立しているかどうかです。
・支援制度を知らない
・相談先がない
・判断を一人で抱え込む
こうした状態に陥ると、
家族の有無に関わらず、リスクは急激に高まります。
ライフステージ別に見る「家族の保険機能」
30〜40代|親の変化に気づき始める時期
この世代では、
親の老いが「兆し」として現れ始めます。
・通院回数の増加
・生活の小さな支障
・金銭管理の不安
この段階で重要なのは、
「まだ大丈夫」と思い込まないことです。
40〜50代|介護が現実になる転換点
本格的に介護が始まると、
家族の保険機能は急激に試されます。
・誰が担うのか
・仕事を続けられるのか
・公的サービスをどう使うのか
・介護に必要な費用は大丈夫か
この時期に備えがないと、
介護離職や生活不安につながりやすくなります。
60代以降|家族に頼らない設計が重要に
高齢期に近づくほど、
「家族が何とかしてくれる」という前提は危うくなります。
・配偶者の健康問題
・子ども世代の生活不安
・介護を受ける側になる可能性
・介護費用をどう支えるか(資産・収入)
この段階では、
家族を補完する仕組みをどれだけ持っているかが鍵になります。
家族の保険機能は「崩壊」したのか
家族の保険機能は、完全に失われたわけではありません。
しかし、以前と同じ形では機能しなくなっているのは事実です。
・家族に過度な期待をしない
・外部の制度・サービスを前提に組み込む
・役割を固定しない
・家族間のコミュニケーションはどうなっているか
これらを前提にした再設計が求められています。

結婚・家族をどう位置づけるか
結婚や家族は、
人生において大切な存在であることに変わりはありません。
しかし、
「家族がいるから安心」という発想から、
「家族がいても、備えは必要」という発想へ
切り替える必要があります。
LIFE STAGE NAVI では、
家族を否定するのではないことは当然として、
家族に過度に依存しない人生設計を重視しています。

次に考えるべきテーマ
・家族の変容を前提に、社会政策はどうあるべきか
・結婚・家族・単身のいずれを選んでも不利にならない制度とは
・個人が今からできる備えは何か
次の記事では、シリーズの総括として、
家族の変容と社会政策の現在地を整理していきます。
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