【最終考察】家族の変容と社会政策の現在地|結婚・家族を「前提」にしない時代の生き方とは

子育て・教育

結婚、出産、家族形成。
これらは長らく、多くの人にとって「人生の標準ルート」として扱われてきました。

しかし、ここまで見てきたように、
家族を取り巻く経済的・社会的条件は大きく変化しています。

本記事では、シリーズ全体を振り返りながら、
「変わる家族」を前提に、個人と社会はどう向き合うべきかを整理します。

このシリーズで扱ってきたのは、
単に家族の形が多様化した、という話ではありません。

変わったのは、次の三点です。

・家族が自然に成立する存在ではなくなったこと
・家族が担ってきた役割を、単独では果たしきれなくなったこと
・家族を持つことが、個人のリスクにもなり得る時代になったこと

これらは価値観の変化ではなく、
雇用、賃金、社会保障といった構造的な変化の結果です。

かつては、結婚し、家族を持つことが、
生活の安定や老後の安心につながると考えられていました。

しかし現在では、

・結婚しても経済的に不安定なケース
・家族がいても介護や老後に不安を抱えるケース
・単身でも計画的に備え、安定した生活を送るケース

が並存しています。

つまり、結婚や家族は
人生を安定させるための前提条件ではなく、数ある選択肢の一つ
になったと言えます。

日本の社会政策は、長らく家族を暗黙の前提としてきました。

・介護は家族が担う
・子育ては家庭が中心
・困ったときは身内で支え合う

しかし、単身化・非婚化が進む中で、
この前提はもはや現実と合わなくなっています。

にもかかわらず、多くの制度は今なお、

・「家族がいること」
・「支え合える親族がいること」

を暗黙に期待しています。

このズレが、個人の不安や負担を増幅させています。

少子化や家族の変化を巡る議論では、
個人の選択が道徳的に評価されがちです。

しかし、本シリーズで見てきたように、

・子どもを持たない判断
・結婚を慎重に考える姿勢
・家族規模を小さく保つ選択

はいずれも、現実的な合理性を持った判断です。

これらを「問題」として個人に押し付ける限り、
社会的な課題は解決に近づきません。

今後、必要になるのは、

・家族形成・家族構成に依存しない社会保障
・単身でも不利にならない制度設計
・子どもを持つ・持たないで負担が極端に変わらない仕組み

です。

これは「家族を否定する政策」ではありません。
むしろ、家族に過度な役割を押し付けないための政策です。

家族がある人も、ない人も、
どちらも安心して生きられる社会でなければ、
家族そのものも持続可能になりません。

なお、本シリーズと直接・間接に関係する社会政策・社会制度に関するテーマは、関係サイトONOLOGUE2050で取り上げていきます。
当サイトからも紹介することがありますので、都度ご覧頂ければと思います。

結婚や家族を巡る議論が混乱しやすいのは、
「一律の正解」を求めてしまうからです。

しかし実際には、

・年齢
・働き方
・家族構成
・健康状態

によって、最適な選択は大きく異なります。

だからこそ、
ライフステージごとに、何がリスクで、何を備えるべきか
を考える視点が不可欠になります。

LIFE STAGE NAVI では、

・結婚を勧める
・非婚を推奨する
・子どもを持つべきだと主張する

といった立場は取りません。
但し、結婚したい人は結婚して欲しいですし、子どもが欲しい人には子どもを持って欲しい。
これがシンプルかつ率直な気持ちです。

当サイトが重視するのは、

・どんな選択をしても
・どのライフステージにあっても
・不安を極力抑えることが可能な「備え方」を提示すること
・その折り折りにベター=より望ましい選択が可能になるような提案や情報をお伝えできること

です。

家族は、人生を豊かにする可能性を持つものです。
しかし、過度な期待を持ったり、背負わせたりすると、想定外に個人を困惑させたり、追い詰めたりすることになりかねません。
そういう意味では、優しさと丁寧さが肝要と考えています。

結婚や家族は、
人生のゴールでも、義務でもありません。

大切なのは、

・どんな人生を送りたいのか
・どんなリスクを引き受けられるのか
・どんな備えを用意できるのか

を、自分の言葉で整理してみることをお薦めします。

家族の変容は、不安の原因となる可能性があります。
しかし、人生を再設計する余地、設計し直す機会が広がった状況があることを示しています。

本シリーズでは、
結婚や家族を「個人の価値観」や「道徳」の問題としてではなく、
働き方、所得、社会保障、介護といった
現実の条件の変化の中で捉え直すことを試みてきました。

家族規模の縮小、性別役割分業の限界、
少子化の構造、そして家族の保険機能の揺らぎ。
これらはすべて、
人生設計・ライフデザインの前提が変わっていることの表れです。

このシリーズは、ここで一区切りとなりますが、
問題そのものが終わるわけではありません。

・単身・非婚の老後をどう設計するか
・親の介護と仕事をどう両立するか
・家族に頼らないセーフティネットをどう組み立てるか

LIFE STAGE NAVI では、
これらのテーマを、今後もライフステージ別に掘り下げていきます。

「変わる家族」は、危機ではありません。
前提が変わった社会で、どう生きるかを問い直すチャンスです。

結婚・家族をどう選ぶか。
そして、どう備えるか。

その判断に必要な視点を、
これからも LIFE STAGE NAVI は考察し、提供していきます。


当記事を除く当シリーズ4記事は、以下からご覧頂けます。
・シリーズ記事1:変わる家族のかたちと人生設計|家族規模の変化をライフステージから考える – Life Stage Navi
・シリーズ記事2:家族規模縮小の本質とは何か|性別役割分業が崩れた社会での人生設計 – Life Stage Navi
・シリーズ記事3:少子化を巡る経済学の「ムリ筋」|子どもの便益は誰のものなのか、という問い – Life Stage Navi
・シリーズ記事4:家族の「保険機能」は本当に崩壊したのか|親の介護と単身化が突きつける現実 – Life Stage Navi

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