98歳義母「特養」介護体験記|コロナ禍における施設介護生活の記録

LIFE STAGE

【編集注|LIFE STAGE NAVI掲載にあたって】

本記事は、筆者自身が2020年から2022年にかけて経験した、
98歳の義母の**特別養護老人ホーム(特養)**での介護体験を記録したものです。

記事内で触れている介護環境や面会制限等は、
新型コロナウイルス感染症の影響下にあった当時の状況を前提としています。

一方で、要介護4への認定変更を経て特養へ移行した判断の過程や、
家族として施設介護と向き合った経験は、
現在においても共有可能な示唆を含むものと考え、
本記事は原文の構成と表現を尊重した形で再掲載しています。

本体験記シリーズについて

本シリーズは、筆者が家族として経験した
義母の高齢期から看取り、そして死後の対応に至るまでの過程を、
実際の出来事と判断をもとに記録したものです。

サービス付き高齢者向け住宅での生活、
特別養護老人ホームでの施設介護、
そして看取り後の見送りと終活の実践――

それぞれのフェーズは、
介護や終活を考えるうえで切り分けて語られることが多い一方、
現実には連続した時間の中で起きています。

本体験記は、制度や一般論を整理することを目的としたものではなく、
家族の立場からどのような選択と対応が必要だったのかを、
当時の状況を前提に淡々と記録することを意図しています。

これらの体験を通して見えてきた課題や気づきについては、
今後、介護や終活をテーマとした別シリーズの中で、
より整理された形で取り上げていく予定です。


2015年からの介護体験を振り返る
『93歳義母「サ高住」介護体験記|2015年2月21日~12月31日回想記録』を前回投稿しました。
⇒ 


本稿は、義母介護体験シリーズの<第2フェーズ>。
『98歳義母「特養」介護体験記|2020年5月2日~2022年1月25日回想記録』です。

93歳でサ高住に入所し、5年余り生活していた義母が2020年98歳の時に同施設内で再度骨折。
高齢であること、と本人の希望により手術を回避。
いわゆる「保存治療」を選択したことで、介護再認定を要請。要介護4の認定を受けました。
そして、入所要件を満たしたため、特別養護老人ホーム(特養)に転所。

以降の、コロナ禍における特養入所から、看取りを迎えるまでの記録と回想記。
種々の思いや介護制度・介護システム等の内容も加え、以下の11記事の介護体験記にまとめました。

なお掲載記事内容は、当時2020年~2022年時点での介護保険制度に基づいています。
そのため、現在の介護保険制度と異なる部分もあります。ご了承ください。

『98歳義母「特養」介護体験記・構成』
  1.98歳義母が、サ高住から特養に移りました(2020/5/2)
  2.要介護1から要介護4への区分変更で5年間生活のサ高住退所へ(2020/7/6)
  3.特養入所決定後のサ高住生活状況と退所まで(2020/7/7)
  4.5年間のサ高住生活総括(2020/7/8)
  5.特養入所決定から入所まで(2020/7/9)
  6.コロナ禍における特養入所生活3カ月の状況(2020/7/10)
  7.特養・サ高住必要費用比較(2020/7/11)
  8.サ高住・特養利用体験から考える介護システム(2020/7/12)
  9.特養入所の99歳義母、月末救急外来、月初予約なし再診外来へ(2021/2/1)
 10.義母、特養で100歳の誕生日を祝って頂く(2021/10/15)
 11.特養入所の100歳の義母、介護タクシーで整形外科外来受診(2022/1/25)

6年前2014年の12月に左脚大腿骨骨折で手術入院。その結果要介護1の認定。
こうして当時93歳の義母が、翌年2015年3月下旬、サ高住・サービス付き高齢者住宅に入所。


それから5年後の昨年2019年12月に、再度左脚大腿骨を骨折。
手術のリスクを考え、回避して、保存状態での完全に車椅子による日常生活に。
そのため、ほぼ全介助が必要な<要介護4>に認定区分変更。

この認定を受けて、2つの特別養護老人ホーム経営事業グループに、入所申し込みを提出。
どちらも1~2年の待機が必要と当初の返事。
しかし運良く、一方のグループが、その年2020年5月に新しい特養を開所する予定があり、まだ申し込みを受付中と。
そこで、これは!と2月に義母の面談を実施してもらうことに。
かつ面談時に、ほぼ入所が可能との内諾も得られ、昨日5月1日開所日に1番乗りで入所が実現したのです。

最初のサ高住入所に至った経緯や、入所までの経験、そして5年間のサ高住の生活。
そして、要介護4になってから、特養入所申し込みから契約、そして入所まで。

サ高住入所の時期、一般的なデイサービスや訪問介護の利用経験はありません。
しかし、介護保険制度に関して、種々経験をしており、介護保険制度改革もテーマに加え、取り組んでいく予定です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2001年に安楽死を世界で初めて合法化した国オランダでは、毎年6千人以上が安楽死しているといいます。
同国で先月、判断能力を失い、病状の改善の見込みがない重度の認知症(アルツハイマー病)患者の、事前に安楽死の意思を明示する書面があるなどの条件を満たせば、関わった医師の責任は問われない旨の判決が出されました。
安楽死が許容される対象の幅が認知症にも広げられる判断になったわけです。

なぜオランダの例を持ち出したのか。
今回の特養入所にあたって、施設サイドから、終末期における「延命治療や胃瘻(いろう)の希望の有無」の意思表示を求められ、「希望しない」旨を誓約しました。
義母の長女である私の妻の意思でもあり、身元保証人となっている私の意思でもあります。
私の場合は、生とはなにか、死をどう考えるかについての確固たる考えに基づくもの。当然自分の死について、事前に家族に伝えるべき内容・方法と同じです。

介護問題や介護制度を考えることは、人生の終え方、終末期のあり方も制度化・システム化することも含むと考えています。
住み慣れた地域や家で、家族に看取られて最期を迎えることが理想なのか。
そこにも踏み込む必要があると思うのです。

さまざまな問題を抱え、それらがますます重く、大きくなっていく介護問題。
現在の介護保険制度が導入されて、今年2020年で20年。
5年前の義母の要介護度区分認定申請から、介護保険利用家族として種々考え、感じることになりました。

少子高齢化は当然、20年以上前から予想され、また想定内のこととして進行してきました。
そのプロセスにおいて、介護保険制度が問題となるであろうことも想定されていたはず。
にもかかわらず、否、だからこそ、制度は初めに比べ、どんどん悪くなってきています。

その大きな要因は、現制度が、「住み慣れた家で介護を受ける」ことが自然であり、介護を受ける人の自然な気持ちである。
このような、口当たりの良い、耳障りの良いスローガンを掲げ「在宅介護主義」を絶対化したことにあります。

それは、介護財政に負担がかからないようにするための方便でもあったのです。
しかし、現実には、介護給付の膨大な増加、介護士不足、介護業界の低生産性・低い労働条件・労働環境、介護離職、老老介護、介護殺人などの社会問題を引き起こしてきています。
その改善・解消の目処も立っていません。

介護財政問題は、医療財政の莫大な赤字と年金財政負担が加わり、現役世代の社会保険料負担の過重な拡大に繋がっています。
安倍内閣による全世代型社会保障制度の改善ポイントは、高齢者負担の増加と現役世代の負担の抑制、という急場しのぎ。
それは、事の本質から外れる、単なる一時しのぎの法改正にとどまるものです。

(以上2020年7月6日、記)


2014年12月に義母の骨折を原因として始まった介護生活。
翌2015年のサ高住入所とその後の5年間の施設生活と介護生活において、介護保険制度や介護士不足、介護離職等さまざまな介護問題を見聞きし、考えること、考えさせられることが多くありました。

その状況は、義母が一昨年亡くなった後も変わることなく、私たち夫婦自身の介護問題に連なってきています。
体験記は、お読み頂く方々の介護に対する備えに多少なりとも参考になるのではという思いから。
しかし、それにとどまらず自分自身の備えを日常でも意識しておくべきという戒めの意味も持ちます。

次に、「要介護1から要介護4への区分変更で5年間生活のサ高住退所へ」というテーマで、介護施設変更事情をもう少し詳しく回想します。

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