「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ|ステップ4
はじめに
介護と仕事を両立しようと考えたとき、
「どこに相談すればよいのか分からない」
「制度が多すぎて、自分に何が使えるのか判断できない」
こうした壁に直面する方は少なくありません。
実は、介護離職を防ぐために最も身近で、かつ実務的な支援を担っているのが、自治体と地域の支援制度です。
本章(ステップ4)では、
・自治体が提供する介護支援制度の全体像
・担当部署や相談窓口の探し方
・地域包括支援センターの役割と活用方法
・地域の介護資源・支援ネットワークの事前調査
といった内容を、「調べる → 相談する → 使いこなす」という実践視点で整理しました。
制度を「知っている」だけで終わらせず、
必要なときに、迷わず使える状態をつくること。
それが、介護離職を防ぐための大きな一歩となります。
“この章でできるようになること”4点
▢ 自分の自治体の介護支援制度を体系的に把握できる
▢ 相談すべき部署・窓口が明確になる
▢ 地域包括支援センターを迷わず活用できる
▢ 介護が本格化する前に地域資源を整理できる
本記事は「自治体 介護支援制度 活用」「地域包括支援センター 相談」などを探している方に向けた、実践重視のガイドです。
※本記事は、Webサイト・介護終活.com(https://kaigoshukatsu.com)で公開していた「第4章の関連記事(旧:4-1〜4-4)」を、重複を整理しつつ統合・加筆修正した“改訂統合版”です。
旧記事は、内容の重複を避けるため、順次、非公開化/リダイレクト/canonical設定などで整理します(検索エンジン向けにも重複を残さない運用を行います)。
ステップ4-1|あなたの自治体の介護サービスと担当部署の探し方:制度の全体像を把握する
自治体の介護支援制度を活用するために〜
介護支援制度を活用する第一歩は、
「自分の自治体に、どのような制度があり、誰が窓口なのか」を正しく知ることです。
本節では、自治体が担う介護支援制度の全体像を整理しながら、
特別養護老人ホーム、在宅介護サービス、介護予防施策など、
自治体がどのような役割を果たしているのかを確認します。
あわせて、介護支援を担当する部署や相談窓口の探し方についても解説し、
「どこに相談すればよいか分からない」という不安を解消します。
なお、自治体による支援制度は、その地域の特性や住民のニーズに基づいて設計されています。
一方、民間企業や団体が提供する支援制度には、
国が法律を制定し、その法律に基づいて実施・運用するものと、
企業や団体が独自に従業員向けに提供するものがあります。
これらの民間の取り組みについては、次章以降のステップ5=第5章と、ステップ6=第6章で取り上げます。
1.自治体ごとの介護支援制度の概要
自治体ごとの介護支援制度は、その地域の特性や住民のニーズに基づいて設計されています。
まず、自治体が主導する介護支援制度の一般的な特徴や概要等を整理しました。
1)特別養護老人ホームの利用申請と選考基準
地域密着型特養の建設に関する認可権は自治体にあり、地域のニーズに応じて施設の設置を推進する役割を果たしています。
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護者が安心して生活できるよう支援するための施設です。
特養の入居者選考は、その運営事業者が行い、自治体が直接選考に関与するわけではありません。
しかし、特養への入居資格は、原則として「要介護3」以上の認定を受けた高齢者に限られています。
誰もが利用できるわけではなく、多くの地域では、施設数を上回る申込があり、入所待機者が多数います。
自治体が、要介護度の認定を行う審査を行っており、認定結果が特養入居のための不可欠な条件となるため、非常に大きな責務を担っているのです。
2)在宅介護サービスの種類と利用方法
在宅介護サービスは、介護保険制度において規定されている介護サービスです。
自宅で生活する高齢者が日常生活を送るために必要な支援を受けるための制度です。
これには、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどのサービスが含まれます。
自治体によっては、これらのサービスに対して補助金や助成金が提供されている場合があり、介護者や家族の負担軽減に役立てられています。
サービスを利用する際には、まず地域包括支援センターや担当部署に相談し、利用可能なサービスの内容を確認した上で、必要な手続きを行います。
自治体によって提供されるサービス内容や支援の範囲は異なるため、事前に確認することが必要です。
3)介護支援制度の財源と運用
介護支援制度の運用には、国や地方自治体からの交付金、介護保険料、利用者負担金が財源として使われています。
特に介護保険制度は、全国共通の枠組みとして設けられており、各自治体がその制度に基づいて運用を行っています。
一方で、自治体ごとの財政状況や地域特性によっては、独自の財源を用いて追加的な支援を行う場合もあります。
これにより、地域ごとに提供されるサービスの充実度や内容に違いが生じることがあります。
自治体ごとの特徴や財政状況を把握することは、地域における介護支援制度の利用において重要な要素となります。
4)要支援認定者に対する予防介護サービス
<要支援1>および<要支援2>の認定を受けた高齢者に対する予防介護サービスは、介護保険制度の改正により、地方自治体の管理に移管されています。
地域包括支援センターを中心に、介護予防プランの策定や支援が行われており、自治体はその地域特有のニーズに応じた介護予防サービスを提供しています。
予防介護には、運動指導、栄養指導、日常生活の支援が含まれ、要介護状態への進行を防ぐための取り組みが行われています。
自治体ごとに提供されるプログラムやサービスが異なるため、利用者は自治体の担当部署で詳細な情報を得ることが求められます。
2.自治体の介護担当部署の連絡先と相談窓口の紹介
介護支援制度を利用する際には、自治体の担当部署への相談が不可欠です。
1)介護担当部署・相談窓口
担当部署の名称は自治体によって異なります。
以下に、一般的な担当部署名と、実際にそれを用いている自治体の例を挙げます。
・介護保険課 (例: 横浜市、札幌市)
・高齢者福祉課 (例: 名古屋市、京都市)
・福祉保健部介護保険担当 (例: 広島市)
・保健福祉部介護福祉課 (例: 福岡市)
・健康福祉局高齢者支援課 (例: 仙台市)
これらの担当部署では、介護サービスに関する相談や申請手続きを受け付けています。
多くの自治体では窓口だけでなく、電話やオンラインでの相談にも対応しています。
2)担当部署をネットで検索する方法
自治体の担当部署を特定するためには、インターネット検索が非常に有効です。
具体的には、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで「担当部署および 介護支援 [自治体名]」と入力することで、該当する部署の情報や連絡先が表示されます。
この方法を活用することで、各自治体の公式ウェブサイトの該当ページに直接アクセスでき、さらに詳細な情報を得ることができます。
また、検索結果には、各部署が提供する具体的なサービスや、相談窓口の開設時間、オンラインでの相談手続きの有無などが含まれていることもあります。
適切な検索ワードを活用することで、迅速に必要な情報を得ることが可能です。
3.地方自治体の介護支援策2例:モデル事例とその効果
自治体が独自に制定・運営している介護支援策の例を以下挙げました。
1)横浜市の事例
横浜市では、高齢者が自宅で安心して生活できる環境を整えるため、地域包括ケアシステムを推進しています。
市内の医療機関や介護施設と連携し、訪問介護やデイサービスの利用を促進する独自のプログラムを提供しています。
また、介護者向けの相談窓口やカウンセリングなど、介護者の精神的な負担を軽減するための支援も行っています。
これにより、利用者の安心感が向上し、介護者の負担も軽減され、継続的な介護をサポートする要素の一つになっていると考えられます
この公式情報は、横浜市の介護保険関連のページで確認できます。
こちらで、地域包括ケアシステムの取り組みや支援サービスの詳細が確認可能です。
(参照リンク)⇒ 高齢者福祉・介護 横浜市 (yokohama.lg.jp)
2)千葉市の事例
千葉市では、介護者のリフレッシュを目的とした短期介護サポートプログラムを提供しています。
このプログラムでは、介護者のメンタルケアにも重点が置かれ、
介護者が一時的に介護から離れ、精神的・身体的な休息を取ることができるようにするなど、
介護者が継続的に介護を行える体制を整えています。
このプログラムを利用できることを知っていれば、介護離職のリスクを低下することが可能な要素にもなりえますね。
千葉市の介護支援策に関する公式情報は、以下のリンクから確認できます。
介護者支援や各種サービスに関する情報が掲載されています。
(参照リンク)⇒ 千葉市:保健福祉局健康福祉部在宅医療・介護連携支援センター (city.chiba.jp)
ここでは、2つの大都市の事例を紹介しました。
介護を担う方、介護を受ける方が居住する自治体の担当部署や地域包括支援センターに、それぞれ独自のどのような介護支援制度があるか。
ぜひ事前に(もちろん事後でも)問い合わせ、有効に活用できるようにして頂ければと思います。
次節は、「自身の自治体の介護支援制度と活用方法調べ」がテーマです。
【次に取るべき行動(ミニチェック)】
□ 自治体名+「介護保険課(高齢者福祉課)」で検索し、担当部署ページを開いた
□ 担当部署の 電話番号/所在地/受付時間 をメモした
□ 「地域包括支援センター」のページも同時にブックマークした
□ 相談したいことを3点に絞ってメモした(例:要介護認定、在宅サービス、施設入所)
□ 介護が必要な方の状況(年齢・症状・困りごと)を簡単に整理した
□ 次の平日で「電話相談 or 窓口相談」の予定を入れた

ステップ4-2|あなたの自治体の介護支援制度を調べ尽くす|公式情報・窓口活用ガイド
自治体の介護支援制度は、
知っているかどうかで、利用できる支援の幅が大きく変わります。
本節では、自治体の公式ウェブサイトやパンフレット、相談窓口を活用し、
自身の地域にどのような介護支援制度があるのかを、
効率よく、漏れなく調べる方法を解説します。
実際の自治体事例も交えながら、
「調べて終わり」ではなく「使える情報」に変えるための視点を整理します。
1.自治体の公式ウェブサイトやパンフレットの利用方法
自身の自治体が提供する介護支援制度について調べる際、まず活用したいのが自治体の公式ウェブサイトや提供されているパンフレットです。
それらの利用方法について、提案します。
1)自治体の公式ウェブサイトでの情報収集
自治体の公式ウェブサイトは、介護支援制度に関する最新情報を得るための重要なリソースです。
ウェブサイトでは、介護サービスの概要や申請手続きに関する詳細が掲載されているため、まずはこれを確認することが大切です。
また、検索機能を活用することで、特定のサービスや支援制度に関する情報を迅速に見つけることができます。
2)関連資料のダウンロードと活用
多くの自治体では、公式ウェブサイト上でパンフレットや申請書類のダウンロードが可能です。
これらの資料は、自宅でゆっくりと確認できるため、事前に必要な情報を把握しておくのに便利です。
また、印刷して利用することで、窓口での相談時にも役立てることができます。
3)ウェブサイトの更新情報とお知らせの確認
自治体のウェブサイトには、介護支援制度に関する最新の更新情報やお知らせが掲載されることが多いです。
特に、制度の変更や新たな支援サービスの追加がある場合、これらのお知らせを見逃さないように定期的にチェックすることが重要です。
これにより、最新の情報に基づいて適切な手続きを行うことができます。

2.自治体の窓口で介護支援制度情報を得る方法とその手順
自治体の窓口で直接情報を得る方法も有効です。
事前にウェブサイトで調べた情報を持参し、窓口の担当者と直接相談することで、より具体的なアドバイスや最新の情報を得ることができます。
担当窓口については、前節の記事を参考にしてください。
窓口では、担当者に状況を詳しく説明し、必要な書類を確認することが重要です。
例えば、申請に必要な書類や、サービスの利用条件について詳細に確認しておくと、後の手続きがスムーズに進むでしょう。
1)事前準備としての情報整理
窓口での相談を効果的に行うためには、事前に必要な情報を整理しておくことが重要です。
公式ウェブサイトで収集した情報やダウンロードした資料を確認し、質問したい内容や確認しておきたい事項をリストアップしておくと、スムーズな相談が可能になります。
2)担当者とのコミュニケーションのポイント
窓口では、担当者に自分の状況を正確に伝えることが大切です。
例えば、介護が必要な家族の状況や、どのような支援が必要なのかを具体的に説明することで、適切なアドバイスを受けることができます。
また、わからない点があれば、遠慮せずに質問し、納得いくまで確認することを心がけましょう。
3)窓口での手続きの流れと必要書類
窓口での手続きには、申請書類の提出や面談などが含まれる場合があります。
事前に必要な書類を準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。
特に、介護サービスの利用申請には、具体的な書類が必要となるため、できれば、事前に確認しておくのが良いですね。
手続きが完了するまでの流れや、次回の訪問時に必要な事項についても、しっかりと把握しておきましょう。
3.地方自治体の事例
ここでは、仙台市、高松市、由利本荘市、3つの自治体のホームページから、介護に関する情報を入手する方法を確認してみました。
1)仙台市の例
仙台市では、公式ウェブサイトで介護サービスの申請手続きや利用方法について詳しい情報を提供しています。
申請書類のダウンロードや、サービス利用の手順が詳細に記載されており、介護者やその家族が必要な情報にアクセスしやすくなっています。
また、パンフレットもオンラインで提供されており、紙媒体での情報が必要な方にも対応しています。
詳細はこちら ⇒ 高齢の方|仙台市 (city.sendai.jp)
2)高松市の例
高松市では、地域包括支援センターを通じた情報提供が積極的に行われ、窓口での相談体制が整っています。
初回相談時には利用可能なサービスや支援制度について詳しく説明が行われ、その場で必要な手続きを始めることができます。
また、介護者向けのサポートプログラムも充実しており、介護者が安心して介護を行えるように様々な支援が提供されています。
詳細はこちら ⇒ 高齢者の支援|高松市 (city.takamatsu.kagawa.jp)
3)秋田県由利本荘市の例
由利本荘市では、公式ウェブサイトで介護支援制度の詳細な情報を提供しています。
市のウェブサイトには、介護サービスの申請手続きや利用方法、提供されるサービスの種類が分かりやすくまとめられ、利用者が必要な情報に簡単にアクセスできるようになっています。
また、パンフレットもオンラインで提供されており、窓口での相談も積極的に行われています。
地域包括支援センターを通じて、介護サービス利用の手順についても詳しい説明が行われています。
詳細はこちら ⇒ 介護サービス|由利本荘市公式ウェブサイト (yurihonjo.lg.jp)
冒頭述べたように、皆さんがお暮しの地域の自治体のホームページから、高齢者福祉や介護という政策と情報について種々検索し、調べ、活用できるようにして頂きたいと思います。
まとめ
介護支援制度を効果的に活用するためには、自治体が提供する情報を正確に把握し、適切な手続きを行うことが重要です。
本節では、自治体の公式ウェブサイトやパンフレットを活用した情報収集の方法、そして窓口での具体的な相談手順について説明しました。
また、東北地方や四国地方の自治体の事例を通じて、実際の利用方法を具体的に示しました。
地域の介護支援制度を活用することで、介護者やその家族の負担を軽減し、より良い介護環境を整えることが可能です。
自身の自治体で提供される介護支援制度を理解し、スムーズに利用できるよう、本記事を参考にしていただければと思います。
地域ごとの制度や手続きに違いがあるため、常に最新の情報を確認し、適切な支援を受けられるよう努めましょう。
次節は、「地域包括支援センターの役割と利用方法」をテーマにします。
【次に取るべき行動(ミニチェック)】
□ 自治体HPで「介護」「高齢者」「地域包括」「申請」のキーワード検索を試した
□ 必要そうな パンフレット/申請書 を1つ以上ダウンロードした
□ 制度名・連絡先・URLをまとめる「自分用メモ(1枚)」を作り始めた
□ 不明点(利用条件・費用・対象者)を質問リストにした
□ 窓口に行く場合の持ち物(保険証、本人情報、メモ等)を確認した
□ 制度改正や更新情報(お知らせ欄)を一度チェックした

ステップ4-3|介護の頼れる味方:地域包括支援センターの役割と活用ガイド
自治体の介護支援制度を活用するために〜
介護に関する悩みや不安を、
一人で抱え込まないための総合相談窓口が、地域包括支援センターです。
本節では、地域包括支援センターが担う役割や支援内容を整理し、
どのような相談ができ、どのように活用すればよいのかを具体的に解説します。
介護者本人だけでなく、
家族全体を支える仕組みとしての地域包括支援センターの活用法を確認していきましょう。
1.地域包括支援センターの基本機能と支援内容
地域包括支援センターは、高齢者が可能な限り自立した生活を送れるよう支援するために設置された施設です。
ここでは、センターが果たす基本機能を以下の項目ごとに詳しく説明します。
1)介護予防ケアマネジメント
介護予防ケアマネジメントは、要介護状態になるリスクが高い高齢者に対して、介護が必要になる前に適切な介護予防サービスを提供する機能です。
地域包括支援センターでは、介護予防に必要なプランを作成し、運動プログラムや栄養指導、社会参加活動を通じて、健康維持や機能向上をサポートします。
2)包括的・継続的ケアマネジメント支援
この機能は、介護サービスを必要とする高齢者が、地域の中で適切なケアを受けられるよう、包括的かつ継続的に支援するものです。
地域包括支援センターでは、介護サービス提供者や医療機関、福祉機関との連携を図り、高齢者一人ひとりのニーズに応じたケアプランを作成します。
これにより、利用者が必要なサービスを適切に受けられるよう調整し、生活の質を維持・向上させることを目指します。
3)介護者支援
介護者が過度な負担を抱え込まないようにするための支援も、センターの重要な役割です。
地域包括支援センターでは、介護者向けの相談窓口を設け、ストレスマネジメントや介護技術の向上をサポートするプログラムを提供しています。
また、介護者同士の交流を促進する場を設けることで、介護者が孤立せず、共に支え合える環境を整えています。
4)認知症予防と対応
地域包括支援センターは、認知症の予防や、認知症の高齢者とその家族への支援を行う役割も担っています。
具体的には、認知症予防のためのプログラムの提供や、認知症サポーターの養成講座を開催し、地域全体での認知症対策を推進します。
また、認知症に関連する相談にも応じ、必要なサービスや支援を受けられるように調整します。
5)権利擁護
高齢者がその権利を侵害されないようにするための支援も、地域包括支援センターの重要な役割です。
例えば、成年後見制度の利用を支援したり、高齢者が消費者被害や虐待から守られるようにするための相談を受け付けます。
センターでは、専門のスタッフが法律的な助言や手続きの支援を行い、高齢者が安心して生活を送れるようサポートします。
6)虐待防止と対応
高齢者虐待の防止や、虐待が疑われるケースへの対応も、地域包括支援センターの重要な機能です。
センターでは、虐待に関する相談を受け付けるとともに、必要に応じて関係機関と連携し、迅速な対応を行います。
また、地域全体での虐待防止の啓発活動も積極的に行い、高齢者が安心して生活できる環境を整備します。
2.地域包括支援センター利用手続きと相談の進め方
地域包括支援センターを利用する際には、まずセンターに電話や直接訪問して相談を開始します。
その利用手続きについて、一般的な方法を紹介します。
1)初回相談の準備とアプローチ方法
地域包括支援センターを利用する際、まずは初回相談の準備が重要です。
相談の前に、家族や介護者の状況、必要な支援内容について整理し、メモを取っておくとスムーズに進みます。
センターに電話で予約を入れるか、直接訪問して相談を始めることが一般的です。
初回相談の際には、担当者に家族の状況を詳しく説明し、どのような支援が必要かを明確に伝えることが大切です。
2)相談内容に基づく支援計画の提案
初回相談が終わった後、地域包括支援センターのスタッフは、利用者のニーズに応じた支援計画を提案します。
この計画には、どの介護サービスを利用すべきか、どのような福祉支援が利用可能かが含まれます。
支援計画は、利用者の状況や希望に基づいて柔軟に調整されるため、提案された内容について疑問がある場合は、その場で質問し、必要に応じて変更を依頼することができます。
3)継続的なフォローアップとサービスの見直し
支援計画が決定した後も、地域包括支援センターは定期的なフォローアップを行います。
利用者の状況が変わった場合や、サービスに対する満足度を確認するために、定期的にセンターのスタッフと連絡を取り合うことが重要です。
必要に応じて支援計画の見直しや、サービスの追加・変更が行われるため、常に利用者にとって最適なサポートが提供されるよう努めます。

3.地方自治体の地域包括支援センターの特徴事例
1)横浜市の例
横浜市では、地域包括支援センターが地域の高齢者支援の中核として機能しており、幅広いサービスを提供しています。
具体的には、介護者支援プログラムや認知症予防教室が定期的に開催されており、これらのプログラムに参加することで、介護者自身も支援を受けることができます。
また、同市独自の取り組みとして、介護者向けのカウンセリングサービスがあり、介護者が精神的な負担を軽減できるよう支援しています。
(参照リンク)⇒ 高齢者福祉・介護 横浜市 (yokohama.lg.jp)
2)広島市の例
広島市では、地域包括支援センターが地域住民との連携を重視しており、住民同士が助け合うコミュニティづくりを支援しています。
このセンターでは、地域での支え合い活動を推進し、介護が必要な高齢者が孤立しないよう、地域ぐるみでのサポート体制を構築しています。
さらに、広島市では、介護者向けのサポートグループが活発に活動しており、介護者同士が情報を共有し、助け合う環境が整っています。
(参照リンク)⇒ 広島市地域包括支援センター(高齢者の皆さんの「総合相談窓口」) – 高齢者福祉|広島市公式ホームページ|国際平和文化都市 (hiroshima.lg.jp)
3)倉吉市の例
倉吉市では、地域包括支援センターが地域の高齢者支援の中心的な役割を果たしており、特に高齢者の介護予防と生活支援に重点を置いています。
具体的には、倉吉市の地域包括支援センターでは、認知症予防教室や介護者向けの交流会が定期的に開催されています。
これらのプログラムは、介護者が知識を深めると同時に、他の介護者と情報交換を行う場としても活用されています。
また、同市では、地域住民による見守り活動が積極的に推進されており、高齢者が孤立しないよう地域全体で支える体制が整っています。
さらに、介護が必要な高齢者に対しては、地域の介護サービス提供者との連携を強化し、利用者が適切なサービスを受けられるようサポートしています。
(参照リンク)⇒ 地域包括支援センターのご案内/倉吉市公式ウェブサイト (kurayoshi.lg.jp)
まとめ
地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、さまざまな支援を提供する重要な拠点です。
本記事では、センターの基本機能として介護予防ケアマネジメント、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、認知症予防と対応、介護者支援、虐待防止の役割を解説しました。
また、地域包括支援センターを利用する際の手続きや相談の進め方、さらに具体的な地方自治体の事例を紹介し、センターの実際の利用方法や地域での支援体制の構築に役立つ情報を提供しました。
地域包括支援センターの機能を理解し、必要なときに適切に利用することで、高齢者やその家族がより安心して生活できる環境を整えることができます。
地域の資源を最大限に活用し、支援が必要な方々が孤立せず、地域全体で支え合える社会を目指しましょう。
【次に取るべき行動(ミニチェック)】
□ 最寄りの地域包括支援センターの 場所・電話番号 を控えた
□ 「何を相談できるか」を自分の言葉で1行にまとめた(例:介護サービスの使い方を知りたい)
□ 初回相談で伝える要点を整理した(本人状況/家族状況/困りごと/緊急度)
□ 相談の結果「次にやること」をその場で確認する意識を持った
□ 必要なら「ケアマネ紹介」「要介護認定」「サービス調整」につなげてもらう前提で相談す
□ 連絡先を家族とも共有した(紙でもスマホでもOK)
ステップ4-4|介護制度を使い切るための準備:地域情報の事前調査とネットワーク構築
介護が必要になってから慌てて情報を探すのではなく、
事前に地域の介護資源を把握しておくことが、介護離職防止につながります。
本節では、地域の介護サービス提供者や支援団体を調べ、
必要なときにすぐ動ける体制を整えるための方法を紹介します。
地域住民や支援グループとのネットワークづくりを含め、
「いざという時に頼れる地域」を準備する視点を整理します。
1.地域の介護サービス提供者のリスト作成と活用
地域で利用できる介護サービス提供者のリストを作成することは、介護制度を効果的に活用するための第一歩です。
このリストには、訪問介護サービスやデイサービス、ショートステイ施設などの情報を網羅的に含め、利用者自身ののニーズに応じたサービスを迅速に選択できるようにします。
<リスト作成の事例>:
例えば、東京都多摩市では、市内の介護サービス提供者を一括して検索できるデータベースを市の公式ウェブサイトで公開しています。
このデータベースでは、サービス提供者の名称、住所、連絡先、提供されるサービス内容、料金体系などを一覧で確認することができ、利用者が自分のニーズに合ったサービスを簡単に選択できるようになっています。
(参照リンク)⇒ https://www.city.tama.lg.jp/
このようなリストを作成する際には、公式ウェブサイトやパンフレットを参考にしつつ、必要に応じて直接サービス提供者に問い合わせることで、より詳細な情報を収集します。
これにより、リストが常に最新の情報を反映するよう維持することが重要です。
2.地域住民や支援グループとのネットワーク構築|情報入手のための検索方法
介護においては、地域住民や支援グループとのネットワーク構築が非常に重要です。
これにより、地域全体で高齢者や介護者を支える環境を整えることができます。
特に、支援グループやボランティア団体とのつながりを持つことで、介護者が孤立せず、困ったときにすぐに助けを求められる体制を整えることができます。
これらの情報を入手するための基本的な検索方法を以下、挙げます。
1)インターネット検索
GoogleやYahoo!などの検索エンジンを利用し、「[自治体名] ボランティアグループ 介護」「[地域名] 介護支援グループ」「[地域名] NPO介護関連」などのキーワードで検索することで、地域の支援グループやボランティア団体の情報を簡単に見つけることができます。
2)SNSの活用
FacebookやX(旧Twitter)などのSNSを活用し、「地域名 + 介護支援」などのハッシュタグで検索すると、地域で活動しているグループやイベントの情報を得ることができます。
また、地域のコミュニティグループに参加することで、より多くの情報交換が可能になります。
3)自治体の公式ウェブサイト
多くの自治体では、地域のボランティアグループや支援団体の情報を提供しています。
自治体の公式ウェブサイトの「福祉」や「地域支援」のページを確認することで、地域住民向けの支援情報を入手することができます。

3.地域介護情報入手に関する地方自治体の事例
1)岐阜県高山市の事例
高山市では、地域の介護サービス提供者との連携を強化し、介護者が安心してサービスを利用できる環境を整えています。
この自治体では、定期的に介護者向けのセミナーや交流会が開催されています。
介護者同士が情報を共有し合う場が提供されているのです。
さらに、地域住民が協力して高齢者の見守りを行う「高山見守りネットワーク」という取り組みが機能しており、
地域全体で高齢者を支える体制が確立されています。
(参照リンク)⇒ 福祉・介護保険|高山市 (takayama.lg.jp)
2)奈良県橿原市の事例
橿原市では、地域住民とのネットワーク構築が積極的に行われており、地域全体で高齢者を支える環境が整っています。
この自治体では、地域住民による見守り活動が盛んで、介護が必要な高齢者が安心して暮らせるよう、住民同士の協力が推進されています。
また、介護者向けの支援グループも活発に活動しています。
定期的に交流会やセミナーが開催され、介護者同士が情報を交換し、支え合う場が提供されています。
(参照リンク)⇒ 高齢者福祉・介護/橿原市公式ホームページ (city.kashihara.nara.jp)
3)沖縄県名護市の事例
名護市では、地域の高齢者を支えるための多様な支援活動が行われています。
特に、地域のボランティアグループと連携した「名護市高齢者サポートネットワーク」があります。
地域住民が協力して高齢者を支援する体制が整っているのです。
また、同市は、介護者向けのワークショップやセミナーを定期的に開催。
介護者が最新の介護技術や知識を学び、交流を深める機会を提供しています。
これにより、介護者が孤立せず、地域全体で支え合う環境が整備されています。
(参照リンク)⇒ 高齢・介護・障がい者 | 名護市役所 (city.nago.okinawa.jp)
まとめ
地域の介護制度を効果的に利用するためには、地域の介護サービス提供者のリストを作成し、適切なネットワークを構築することが不可欠です。
本稿では、リスト作成の事例やネットワーク構築の方法、さらに具体的な地方自治体の事例を紹介しました。
これらの情報を参考に、自分の地域で利用できる支援制度を調べて把握し、介護の負担を軽減できるよう取り組んで頂ければと思います。
【次に取るべき行動(ミニチェック)】
□ 地域の介護サービス提供者を調べる検索語を決めた(例:「○○市 訪問介護 事業所」)
□ 使う可能性が高いサービスを3つに絞った(訪問介護/デイ/ショート等)
□ 候補事業所を3件だけピックアップし、連絡先を控えた
□ 「困ったときに頼れる先リスト(A4 1枚)」を作り始めた
□ 地域の支援団体・家族介護者の会を検索して1つ見つけた
□ 家族内で「緊急時の連絡順」を決めた(誰がどこへ電話するか)

総括|自治体の介護支援制度を活用するために〜
ステップ4=第4章では、
自治体と地域が担う介護支援制度を、実際に使いこなすための方法を整理しました。
自治体ごとの介護支援制度の全体像を把握し、
担当部署や相談窓口を特定すること。
公式情報や窓口を活用して、自身の地域の制度を調べ尽くすこと。
そして、地域包括支援センターや地域ネットワークを、
日常的な支えとして活用していくこと。
これらはすべて、
**介護と仕事を両立するための「準備」であり「防御策」**でもあります。
介護離職は、突然起こるものではありません。
多くの場合、
「相談先が分からない」
「制度を知らなかった」
「一人で抱え込んでしまった」
その積み重ねの先に生じます。
本章で紹介した視点と方法を活用し、
地域と自治体を“味方”につけることで、
介護と仕事の両立を現実的な選択肢として維持していきましょう。
次章では、職場や企業が提供する支援制度に目を向け、
「仕事側からの介護離職防止策」を具体的に整理していきます。
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