「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ|ステップ5
はじめに
介護は、ある日突然始まります。
にもかかわらず、いざ直面すると
「何を申請できるのか」「会社にどう伝えるのか」「収入はどうなるのか」が分からず、
結果として休めず・頼れず・追い込まれてしまうケースが少なくありません。
本章(ステップ5)では、育児・介護休業法を軸に、
介護休業(最長93日)と給付金、介護休暇、短時間勤務やテレワーク等の両立制度、そして職場の理解形成
までを「制度→手続き→現実的な運用」の順で整理します。
さらに、令和6年改正で強化された 雇用環境整備/個別周知・意向確認/40歳等への情報提供/介護テレワーク努力義務 も踏まえ、
“辞めないために、次に何をするか” が分かる形でまとめます。厚生労働省
※本記事は、Webサイト・介護終活.com(https://kaigoshukatsu.com)で公開していた「第5章の関連記事(旧:5-1〜5-4)」を、重複を整理しつつ統合・加筆修正した“改訂統合版”です。
旧記事は、内容の重複を避けるため、順次、非公開化/リダイレクト/canonical設定などで整理します(検索エンジン向けにも重複を残さない運用を行います)。
ステップ5-1|育児・介護休業法の要点と、介護休業を「取れる状態」にする準備(令和6年改正のポイント含む)
はじめに
この章の“地図”
・休める制度=介護休業(最大93日)
・お金=介護休業給付金(賃金の一定割合で補填)
・日常の調整=介護休暇/短時間勤務/柔軟な働き方
・続ける土台=職場の理解・ルール整備・相談導線
育児・介護休業法は、介護が必要になったときに「休む」「調整する」「続ける」ための土台になる法律です。
ポイントは、介護休業(通算93日)だけでなく、介護休暇や労働時間調整などの“両立制度”もセットで設計されていることです。
また令和6年改正では、
介護離職防止のために、
①雇用環境整備(研修・相談窓口など)
②介護に直面した人への個別周知・意向確認
③40歳等への情報提供 ④介護テレワークの努力義務 などが整理され、企業側の対応がより明確になりました。
厚生労働省
本節では、制度の全体像を押さえたうえで、介護が始まる前後に“まず整えるべき段取り”を確認します。
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※以下扱い検討
育児・介護休業法は、従業員が育児や介護を理由に職を離れず、仕事と両立できるようにするための重要な法律です。
特に、少子高齢化が進む日本において、労働力を維持しながら家族を支える環境を整えるために制定されました。
この法律の概要と申請手続き、給付金の受給方法、そして現行制度の課題と今後の展望について解説します。
なお参考までに、当記事の最後の方に、関連する条文を転載しています。
記事内容と該当する条文とを対照して頂ければと思います。
1.介護休業の申請から受給までの手続きと期間
1)育児・介護休業法の概要
「育児・介護休業法」は、通称であり、正しくは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」という名称です。
この法律は、従業員が育児や介護に専念するための時間を確保するためのものです。
少子高齢化社会に対応するため、1991年に制定され、現在は対象者は正社員だけでなく、一定条件を満たす非正規雇用者も含まれています。
①<軸になる休業規定>
同法の軸になっているのは、次の規定です。
a. 育児休業:子供が1歳(特別な事情がある場合は最長2歳)になるまで取得可能。
b.介護休業:要介護状態にある家族一人につき、通算93日間取得可能。
②<対象外になり得るケースがあるため“要件確認”が重要>
育児・介護休業法の制度は広く整備されていますが、実務上は 雇用形態(有期/無期)、勤続期間、週所定労働日数、労使協定で除外できる範囲 など、いくつかの要件確認が必要です。
就業規則や社内規程の定め方によって運用も変わるため、会社の人事・総務に早めに確認しましょう。
参考:厚生労働省「育児休業制度特設サイト(関連資料)」https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/document/厚生労働省
③<労使協定・要件で扱いが変わる代表例(断定せず“確認導線”を提示)>
たとえば制度によっては、労使協定により一定の労働者を除外できるケースや、入社後一定期間の要件が関係するケースがあります(例:週の所定労働日数が極端に少ない等)。判断を自己完結せず、社内規程+厚労省資料の両方で確認するのが安全です。都道府県労働局+1
2)育児・介護休業申請手続きの流れ
育児・介護休業の申請は、以下のステップで行います。
① 申請書類の準備
・育児休業申出書や介護休業申出書を記入し、必要な添付書類を揃えます。
・介護休業給付金申請書の準備も必要です。
介護休業の場合、家族の要介護状態を証明する診断書などが必要です。
② 申請の提出
・休業開始の1ヶ月前までに提出することが推奨されますが、企業の規定によって異なる場合があります。
③ 受理と確認
・企業が申請を受理すると、確認書類が発行され、正式に休業が承認されます。
PDFダウンロード: 介護休業給付金申請書 PDF
PDFダウンロード: 介護休業申出書 PDF
3) 受給可能期間
育児休業は子供が1歳(または特別な事情がある場合は2歳)になるまで取得でき、介護休業は家族一人につき93日間です。
・育児休業は連続して取得することも、分割して取得することも可能です。
・介護休業も、必要に応じて複数回に分けて取得することが可能です。
※関連リンク: 厚生労働省 育児・介護休業法について

2.介護休業中の給与補填と社会保険の取り扱い
1)給与補填制度
育児・介護休業中は、通常の給与が支払われないため、以下の補填制度を利用することができます。
① 育児休業給付金
・育児休業開始から180日間は、平均賃金の67%が支給されます。
・その後は、50%が支給されます
② 介護休業給付金
・介護休業期間中は、平均賃金の67%が支給されます。
2)社会保険の扱い
育児・介護休業中は、社会保険料の取り扱いが重要です。
・社会保険料の免除
休業中の健康保険および年金保険料は、申請により免除されます。
免除手続きは企業が行いますが、従業員からの申請が必要です。
※関連リンク: 日本年金機構 社会保険料の免除について
3) 手続きの流れ
給与補填や社会保険の免除を受けるための手続きは以下の通りです。
① 給与補填の申請
・給付金の申請書類を企業経由でハローワーク(公共職業安定所)に提出します。
② 社会保険料の免除申請
・社会保険料の免除申請は、企業を通じて行います。

3. 育児・介護休業法の制定の歴史と改正の変遷
1) 育児・介護休業法の成立背景と初期の目的
育児・介護休業法は、少子高齢化の進展と共働き家庭の増加に対応するため、1991年に制定されました。
法案の主な目的は、育児や介護の負担を軽減し、特に女性の社会進出を支援することにありました。
初期の法案は、育児休業が主な対象で、子供が1歳になるまでの休業を保障するものでした。
2) 1995年の改正:介護休業の導入
1995年には、育児休業に加え、介護休業制度が導入されました。
介護問題が社会的課題として注目され始め、法改正が行われたのです。
3) その後の改正と拡充
育児・介護休業法は、社会のニーズに応じて何度も改正されてきました。
① 2009年改正
・非正規雇用者も一定条件下で休業を取得できるように拡充されました。
・短時間勤務制度が法定化され、育児と仕事の両立を支援する施策が強化されました。
② 2016年改正
・育児休業期間の延長や介護休業の分割取得が可能となりました。
③ 2021年改正
・パパ育休(出生時育児休業)が導入され、男性も育児休業を取得しやすい環境が整備されました。
4) 最新の改正と将来の展望
育児・介護休業法は、今後も改正が検討されています。
今年2024年5月にも新たに改正が行われました。
① 令和6年改正(2024年5月成立)|施行日は段階的です
令和6年改正は、公布(2024年5月31日)後、2025年4月1日施行と2025年10月1日施行に分かれて順次始まります。制度説明や社内対応は「いつから対象か」を確認しながら進めると混乱が減ります。
介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化として、以下の努力義務などが盛り込まれました。
・介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置(面談実施や書面交付による)
・介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供
・仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口の設置等)
・要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう事業主に努力義務
・介護休暇について、引き続き雇用された期間が6ヶ月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止
② 将来の改正動向
・今回の改正以降も、この法律の遵守・実行度の評価や社会的な動静に基づき、介護と仕事を両立させるための法改正が行われると考えます。


参考(公式):
① 令和6年改正法の概要
② リーフレット「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法 改正のポイント」
③ 厚生労働省 育児・介護休業法の歴史https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
④ 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索
⑤厚生労働省「育児休業制度特設サイト(関連資料)」https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/document/厚生労働省
※動画・リーフレット・規定例・Q&Aがまとまっています(令和6年改正=2025年4月/10月段階施行対応)。厚生労働省

4. 現状の育児・介護休業制度の問題点と今後の予想
1) 現状の課題
育児・介護休業制度には利点がある一方で、以下の問題点が指摘されています。
・男性の育児休業取得率の低さ
依然として男性の育児休業取得率が低く、企業文化や職場の理解不足が原因とされています。
・介護休業の取得困難
介護休業は予測しにくく、長期にわたることが多いため、取得が難しい場合が多いのが現実です。
・経済的負担
休業中の給付金は通常の収入に比べて減少し、家計に与える影響が大きい現状があります。
・中小零細企業の運用課題
中小企業や零細企業では、労働力や人的労働を補う設備等のリソースが限られているため、育児・介護休業制度の運用が困難な例が報告されています。
・独立事業主における問題点
独立事業主にはこの制度自体が適用されず、育児・介護に対応するための別途対策が必要です。
2) 今後の予想
今後、以下のような施策が進められると予想されます。
・男性の育児休業促進策の強化
企業に対するインセンティブ制度の導入や、育児休業取得の義務化が検討されています。
・介護休業制度の拡充
介護離職を防ぐため、休業期間の延長や、経済的支援の強化が進められる可能性があります。
・経済的支援の充実
休業中の経済的負担を軽減するため、給付金の引き上げや新たな支援制度が創設されることが期待されています。
・中小零細企業、独立事業主等を支援する制度
育児・介護休業法の改正ではカバーできないこれらの課題について、補助金や給付金などが検討される可能性があります。
まとめ
育児・介護休業法は、労働者が仕事と家庭の両立を図るための重要な法律であり、特に少子高齢化が進む社会においてその意義は増しています。
しかし、男性の育児休業取得率の低さや、中小企業における運用の課題、独立事業主への対応が不十分であることなど、現状には多くの課題が残っています。
今後も法改正や制度の拡充が期待されており、企業や個人がより柔軟に対応できる環境の整備が求められます。
ただ、現実として、労働者が介護の必要に直面した時、労使双方が仕事と介護の両立支援制度を十分に理解していない、もしくは制度を十分に活用できないなどによって、介護離職に至るケースは多々あり、双方の一層の努力が求められることが分かります。
次節は、「介護休業制度と介護休業給付金の活用法」がテーマです。
ステップ5-1|次に取るべき行動
□ 自分が利用できる制度を把握する
・介護休業/介護休暇/短時間勤務の違いを整理
・自社の就業規則・社内制度を確認
□ 令和6年改正の対象時期を確認する
・2025年4月/10月、どの制度がいつから使えるか確認
□ 相談先を明確にする
・社内(人事・総務)
・社外(厚労省資料、地域包括支援センター)
(参考):「育児介護休業法」<総則><介護休業>規定条文
平成三年法律第七十六号
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(通称「育児介護休業法」)
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律(第一号に掲げる用語にあっては、第九条の七並びに第六十一条第三十三項及び第三十六項を除く。)において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 育児休業労働者(日々雇用される者を除く。以下この条、次章から第八章まで、第二十一条から第二十四条まで、第二十五条第一項、第二十五条の二第一項及び第三項、第二十六条、第二十八条、第二十九条並びに第十一章において同じ。)が、次章に定めるところにより、その子(民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百十七条の二第一項の規定により労働者が当該労働者との間における同項に規定する特別養子縁組の成立について家庭裁判所に請求した者(当該請求に係る家事審判事件が裁判所に係属している場合に限る。)であって、当該労働者が現に監護するもの、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十七条第一項第三号の規定により同法第六条の四第二号に規定する養子縁組里親である労働者に委託されている児童及びその他これらに準ずる者として厚生労働省令で定める者に、厚生労働省令で定めるところにより委託されている者を含む。第四号及び第六十一条第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)を除き、以下同じ。)を養育するためにする休業をいう。
二 介護休業労働者が、第三章に定めるところにより、その要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業をいう。
三 要介護状態負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう。
四 対象家族配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母をいう。
五 家族対象家族その他厚生労働省令で定める親族をいう。
(基本的理念)
第三条 この法律の規定による子の養育又は家族の介護を行う労働者等の福祉の増進は、これらの者がそれぞれ職業生活の全期間を通じてその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むとともに、育児又は介護について家族の一員としての役割を円滑に果たすことができるようにすることをその本旨とする。
2 子の養育又は家族の介護を行うための休業をする労働者は、その休業後における就業を円滑に行うことができるよう必要な努力をするようにしなければならない。
(関係者の責務)
第四条 事業主並びに国及び地方公共団体は、前条に規定する基本的理念に従って、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の福祉を増進するように努めなければならない。
第三章 介護休業
(介護休業の申出)
第十一条 労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、第三項に規定する介護休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、介護休業をしたことがある労働者は、当該介護休業に係る対象家族が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該対象家族については、同項の規定による申出をすることができない。
一 当該対象家族について三回の介護休業をした場合
二 当該対象家族について介護休業をした日数(介護休業を開始した日から介護休業を終了した日までの日数とし、二回以上の介護休業をした場合にあっては、介護休業ごとに、当該介護休業を開始した日から当該介護休業を終了した日までの日数を合算して得た日数とする。第十五条第一項において「介護休業日数」という。)が九十三日に達している場合
3 第一項の規定による申出(以下「介護休業申出」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、介護休業申出に係る対象家族が要介護状態にあることを明らかにし、かつ、その期間中は当該対象家族に係る介護休業をすることとする一の期間について、その初日(以下「介護休業開始予定日」という。)及び末日(以下「介護休業終了予定日」という。)とする日を明らかにして、しなければならない。
4 第一項ただし書及び第二項(第二号を除く。)の規定は、期間を定めて雇用される者であって、その締結する労働契約の期間の末日を介護休業終了予定日(第十三条において準用する第七条第三項の規定により当該介護休業終了予定日が変更された場合にあっては、その変更後の介護休業終了予定日とされた日)とする介護休業をしているものが、当該介護休業に係る対象家族について、当該労働契約の更新に伴い、当該更新後の労働契約の期間の初日を介護休業開始予定日とする介護休業申出をする場合には、これを適用しない。
(介護休業申出があった場合における事業主の義務等)
第十二条 事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない。
2 第六条第一項ただし書及び第二項の規定は、労働者からの介護休業申出があった場合について準用する。この場合において、同項中「前項ただし書」とあるのは「第十二条第二項において準用する前項ただし書」と、「前条第一項、第三項及び第四項」とあるのは「第十一条第一項」と読み替えるものとする。
3 事業主は、労働者からの介護休業申出があった場合において、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日が当該介護休業申出があった日の翌日から起算して二週間を経過する日(以下この項において「二週間経過日」という。)前の日であるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該介護休業開始予定日とされた日から当該二週間経過日までの間のいずれかの日を当該介護休業開始予定日として指定することができる。
4 前二項の規定は、労働者が前条第四項に規定する介護休業申出をする場合には、これを適用しない。
(介護休業終了予定日の変更の申出)
第十三条 第七条第三項の規定は、介護休業終了予定日の変更の申出について準用する。
(介護休業申出の撤回等)
第十四条 介護休業申出をした労働者は、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日(第十二条第三項の規定による事業主の指定があった場合にあっては、当該事業主の指定した日。第三項において準用する第八条第四項及び次条第一項において同じ。)の前日までは、当該介護休業申出を撤回することができる。
2 前項の規定による介護休業申出の撤回がなされ、かつ、当該撤回に係る対象家族について当該撤回後になされる最初の介護休業申出が撤回された場合においては、その後になされる当該対象家族についての介護休業申出については、事業主は、第十二条第一項の規定にかかわらず、これを拒むことができる。
3 第八条第四項の規定は、介護休業申出について準用する。この場合において、同項中「子」とあるのは「対象家族」と、「養育」とあるのは「介護」と読み替えるものとする。
(介護休業期間)
第十五条 介護休業申出をした労働者がその期間中は介護休業をすることができる期間(以下「介護休業期間」という。)は、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日から介護休業終了予定日とされた日(その日が当該介護休業開始予定日とされた日から起算して九十三日から当該労働者の当該介護休業申出に係る対象家族についての介護休業日数を差し引いた日数を経過する日より後の日であるときは、当該経過する日。第三項において同じ。)までの間とする。
2 この条において、介護休業終了予定日とされた日とは、第十三条において準用する第七条第三項の規定により当該介護休業終了予定日が変更された場合にあっては、その変更後の介護休業終了予定日とされた日をいう。
3 次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、介護休業期間は、第一項の規定にかかわらず、当該事情が生じた日(第二号に掲げる事情が生じた場合にあっては、その前日)に終了する。
一介護休業終了予定日とされた日の前日までに、対象家族の死亡その他の労働者が介護休業申出に係る対象家族を介護しないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生じたこと。
二介護休業終了予定日とされた日までに、介護休業申出をした労働者について、労働基準法第六十五条第一項若しくは第二項の規定により休業する期間、育児休業期間、出生時育児休業期間又は新たな介護休業期間が始まったこと。
4 第八条第四項後段の規定は、前項第一号の厚生労働省令で定める事由が生じた場合について準用する。
(不利益取扱いの禁止)
第十六条 事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
参考(Youtube):知っておきたい 育児・介護休業法(介護編ダイジェスト版)
(参考):育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索
ステップ5-2|介護休業給付金の活用ガイド:収入の減り方・申請手順・家計の守り方
介護休業は「時間」を確保できますが、現実には「お金」が不安で使えない人が多いのも事実です。
そこで鍵になるのが雇用保険の介護休業給付金です。
本節では、給付金の位置づけ、申請の流れ、受給までのスケジュール感を整理し、あわせて「収入が減る期間」を前提にした家計の守り方(固定費の見直し・支援制度の当たり方)まで具体化します。
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以下扱い検討
介護休業制度は、家族の介護を必要とする従業員が、安心して仕事を休みながら介護に専念できるように設けられた制度です。
この制度は、働く世代が増加する介護負担を軽減し、仕事と介護を両立させるための重要な支えとなります。
本記事では、介護休業制度の概要や生活費の補填方法、給付金の申請手続き、そして現状の課題とその対策について説明します。
1.介護休業期間中の生活費補填と家計の安定化策
1)介護休業制度の主たる機能と介護休業補償・補填
介護休業制度は、従業員が要介護状態にある家族の介護を行うために、一定期間仕事を休むことができる制度です。
制度の概要は以下の通りです。
①基本的な考え方
介護を必要とする家族がいる場合、従業員はその家族のために最大93日間の介護休業を取得できます。
この期間は一度に取得することも、複数回に分けて取得することも可能です。
②適用範囲
対象となる家族は、配偶者、子、親、配偶者の親、祖父母、兄弟姉妹、孫などが含まれます。
また、同居している親族や、法律上の養子も対象となります。
③休業期間の設定方法
介護が必要な状況が発生した時点で、従業員は介護休業を申請することができます。
休業期間は家族一人につき93日間であり、この期間は連続しても、分割しても取得可能です。
④介護休業申請と介護休業給付金給付申請
介護休業期間中は、介護休業給付金として、平均賃金の67%が支給されます。
介護休業申出に伴って、介護休業給付金給付申請書を提出すれば、休業期間中原則として支払われない賃金の平均額の67%が、生活費の補填として支給されます。
一種の賃金補償制度といえます。
詳しい手続きは、次項で確認します。

2)生活費補填の方法
介護休業中は、通常の給与が支払われないため、生活費の補填策が重要になります。
以下に、具体的な補填方法を説明します。
①介護休業給付金受給とその計算方法
先述したように、介護休業給付金が、休業期間中の賃金の67%が支給されます。
具体的には、直近6ヶ月の平均賃金を基準に算出され、その67%が月ごとに支給されます。
②受給額のシミュレーション
例えば、月額30万円の給与を受け取っている場合、介護休業中の給付金は約20万円/月となります。
これにより、家計への影響を軽減することができます。
<給付金の計算例>
・平均月額給与:30万円
・介護休業給付金(67%):約20万1千円
3) 家計の安定化策
介護休業中の収入減少を補うための家計安定化策を検討することが重要です。
以下は、具体的な安定化策の例です。
①生活費の節約方法
生活費を削減するために、支出の見直しや節約術を活用します。
例えば、日用品の買いだめ、光熱費の節約、保険料の見直しなどが考えられます。
②他の公的支援制度との併用
介護休業中は、自治体や国の支援制度を併用することで、経済的負担を軽減することができます。
介護保険サービスを利用することは当然ですが、それ以外の具体的な事例とその内容を紹介します。
a. 自治体の支援(“制度名”ではなく“支援メニュー”で把握する)
自治体の支援は、名称や対象要件が地域で異なるため、記事内では制度名を断定せず、次のような 支援メニューの有無 を確認する形がおすすめです。
・紙おむつ/介護用品の助成
・家族介護者への慰労金(実施の有無は自治体差が大きい)
・配食、見守り、緊急通報、家事支援などの生活支援
・介護者向け相談、家族会、レスパイト(介護者の休息)支援
確認先:お住まいの市区町村(高齢福祉・介護保険担当窓口)
※ポイント:介護休業中は「収入減」と「支出増」が同時に起きやすいので、“給付があるか”よりも“支出を減らせる支援があるか” の発想で探すと見つけやすいです。
b.社会福祉協議会の貸付制度
社会福祉協議会では、緊急の経済的支援が必要な家庭向けに無利子または低利子で貸付を行う制度があります。特に、介護休業中の収入減少に対応するための資金や、介護にかかる一時的な費用を補うための貸付が利用可能です。
(事例)
全国社会福祉協議会が提供する「総合支援資金」は、生活費や介護にかかる費用を補うための資金として無利子で貸し出されます。
例えば、介護サービスの利用料や、介護用品の購入費用に充てることができます。
返済期間は5年以内で、収入状況に応じて返済計画を立てることが可能です。
これらの制度を活用することで、介護休業中の経済的負担を軽減し、安定した生活を維持するための助けとなります。
自治体や社会福祉協議会の支援制度については、各地の窓口で詳しい情報を確認し、適切に利用することが推奨されます。
なお、貸付の種類・条件・緊急性の判断は地域の社会福祉協議会で異なります。
まずは「何に困っているか(生活費/一時費用/債務整理の要否)」を整理して相談すると話が早いです。
2.介護休業給付金の申請手続きと受給資格の確認
前回の記事の繰り返しになりますが、重要なので、再確認を兼ねて掲載します。
1)給付金の申請手順
介護休業給付金を受給するためには、正確かつ迅速な申請手続きが必要です。
以下に手順を説明します。
① 申請書類の準備
申請書類=介護休業給付金支給申請書は、労働者が所属する会社の総務部門や人事部門から入手できます。
必要書類には、介護休業申請書、介護が必要な家族の診断書、休業期間の証明書などがあります。
② 提出先と必要な情報
申請書類は、企業を通じてハローワークまたは公共職業安定所に提出します。
提出には、本人確認書類や給与証明書なども必要です。
2)受給資格の条件
給付金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。
① 労働時間と就業状況の確認
・介護休業前に、継続して雇用されていることが条件です。
・また、週20時間以上の勤務が必要です。
・休業中に他の仕事をしていないこと、つまり収入が発生しないことが前提となります。
② その他の条件
・過去2年間において、雇用保険の加入期間が12ヶ月以上であることが必要です。
3)受給までのスケジュール
給付金を受給するまでの期間とそのスケジュールは以下の通りです。
① 申請から受給までの期間
・通常、申請書類が受理されてから約2〜3ヶ月で給付金が支給されます。
② 支給スケジュール
・給付金は月ごとに支給され、休業期間終了後も申請手続きを行う必要があります。
③ 届出銀行口座への振込み
・介護休業給付金支給申請書に記載した、希望振込銀行口座に振り込まれます。
※ 関連リンク: 厚生労働省 介護休業給付金の手続きガイド https://www.mhlw.go.jp/content/000566588.pdf

4)給付金に関するQ&A:あるある疑問例
介護休業給付金についての種々の質問と回答を、厚労省のホームページで見ることができます。
ここでは、質問のリストを、HPから転載しました。
それぞれの回答は、こちらから確認して頂ければと思います。

3.現状の介護休業制度の運用上の問題点と対策
いざ労働者が介護の必要に直面した時、
労使双方が仕事と介護の両立支援制度を十分に理解していない、
もしくは制度を十分に活用できないことにより、介護離職に至るケースは多々あります。
1)介護休業中の心理的負担とその軽減策
介護休業中は、経済的な負担だけでなく、心理的な負担も大きくなります。
特に長期の介護が必要な場合、介護者自身の健康管理やストレス対策が重要です。
①ストレス対策の方法
専門家によるカウンセリング、リラクゼーション法の活用、適度な休息と運動などから選択可能な方法でストレスを溜めない、軽減するよう実践しましょう。
②家族や友人とのサポートネットワーク
介護者が孤立しないよう、家族や友人、地域のサポートネットワークを活用することが推奨されます。
2)企業側のサポート体制と法的義務
企業は、従業員が介護休業を円滑に取得できるよう、適切なサポートを提供する義務があります。
企業側が提供すべきサポートとして、次のような点が挙げられます。
①柔軟な勤務形態の提供
介護休業後の職場復帰を支援するため、短時間勤務や在宅勤務などの柔軟な勤務形態を提供します。
②職場復帰後の支援プログラム
介護休業から復帰した従業員に対して、スムーズに業務に戻れるよう、再教育やリハビリテーションプログラムの提供が望まれます。
※参考:厚生労働省 介護と仕事の両立支援策
3)2024年5月改正法|介護離職防止のための仕事と介護の両立を支援する事業主義務拡充政策
前回の記事で、育児・介護休業法の改正が繰り返し行われていることを述べました。
その中で今年2024年5月に行われた改正について紹介し、事業者が、労働者の仕事と介護の両立を支援するための義務の拡充策が盛りこまれていました。
下図で確認頂ければと思います。
なお、本改正は2025年4月1日/2025年10月1日の段階施行です。
社内制度の整備・周知は「どの施行日に対応するか」を明確にして進めましょう。厚生労働省

まとめ
介護休業制度は、介護を必要とする家族を支えるために設けられた重要な制度です。
介護休業中の生活費補填や家計の安定化策、給付金の申請手続き、そして現状の運用上の課題とその対策について理解することで、より安心して介護と仕事を両立させることが可能になります。
企業側も、従業員がスムーズに介護休業を取得し、復帰できるよう、適切なサポート体制を整えることが求められています。
次節は、「介護休暇と短時間勤務制度の特徴と利用方法」がテーマです。
ステップ5-2|次に取るべき行動
□ 収入減の期間を把握する
・介護休業給付金の支給率・支給時期を確認
□ 家計への影響を試算する
・固定費・変動費を分けて整理
・「減らせる支出」「支援で補える支出」を洗い出す
□ 公的支援の窓口を確認する
・市区町村の介護・福祉担当窓口
・社会福祉協議会(貸付・相談)
(参考):「育児介護休業法」<介護休業>規定条文
第三章 介護休業
(介護休業の申出)
第十一条 労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、第三項に規定する介護休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、介護休業をしたことがある労働者は、当該介護休業に係る対象家族が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該対象家族については、同項の規定による申出をすることができない。
一 当該対象家族について三回の介護休業をした場合
二 当該対象家族について介護休業をした日数(介護休業を開始した日から介護休業を終了した日までの日数とし、二回以上の介護休業をした場合にあっては、介護休業ごとに、当該介護休業を開始した日から当該介護休業を終了した日までの日数を合算して得た日数とする。第十五条第一項において「介護休業日数」という。)が九十三日に達している場合
3 第一項の規定による申出(以下「介護休業申出」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、介護休業申出に係る対象家族が要介護状態にあることを明らかにし、かつ、その期間中は当該対象家族に係る介護休業をすることとする一の期間について、その初日(以下「介護休業開始予定日」という。)及び末日(以下「介護休業終了予定日」という。)とする日を明らかにして、しなければならない。
4 第一項ただし書及び第二項(第二号を除く。)の規定は、期間を定めて雇用される者であって、その締結する労働契約の期間の末日を介護休業終了予定日(第十三条において準用する第七条第三項の規定により当該介護休業終了予定日が変更された場合にあっては、その変更後の介護休業終了予定日とされた日)とする介護休業をしているものが、当該介護休業に係る対象家族について、当該労働契約の更新に伴い、当該更新後の労働契約の期間の初日を介護休業開始予定日とする介護休業申出をする場合には、これを適用しない。
(介護休業申出があった場合における事業主の義務等)
第十二条 事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない。
2 第六条第一項ただし書及び第二項の規定は、労働者からの介護休業申出があった場合について準用する。この場合において、同項中「前項ただし書」とあるのは「第十二条第二項において準用する前項ただし書」と、「前条第一項、第三項及び第四項」とあるのは「第十一条第一項」と読み替えるものとする。
3 事業主は、労働者からの介護休業申出があった場合において、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日が当該介護休業申出があった日の翌日から起算して二週間を経過する日(以下この項において「二週間経過日」という。)前の日であるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該介護休業開始予定日とされた日から当該二週間経過日までの間のいずれかの日を当該介護休業開始予定日として指定することができる。
4 前二項の規定は、労働者が前条第四項に規定する介護休業申出をする場合には、これを適用しない。
(介護休業終了予定日の変更の申出)
第十三条 第七条第三項の規定は、介護休業終了予定日の変更の申出について準用する。
(介護休業申出の撤回等)
第十四条 介護休業申出をした労働者は、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日(第十二条第三項の規定による事業主の指定があった場合にあっては、当該事業主の指定した日。第三項において準用する第八条第四項及び次条第一項において同じ。)の前日までは、当該介護休業申出を撤回することができる。
2 前項の規定による介護休業申出の撤回がなされ、かつ、当該撤回に係る対象家族について当該撤回後になされる最初の介護休業申出が撤回された場合においては、その後になされる当該対象家族についての介護休業申出については、事業主は、第十二条第一項の規定にかかわらず、これを拒むことができる。
3 第八条第四項の規定は、介護休業申出について準用する。この場合において、同項中「子」とあるのは「対象家族」と、「養育」とあるのは「介護」と読み替えるものとする。
(介護休業期間)
第十五条 介護休業申出をした労働者がその期間中は介護休業をすることができる期間(以下「介護休業期間」という。)は、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日から介護休業終了予定日とされた日(その日が当該介護休業開始予定日とされた日から起算して九十三日から当該労働者の当該介護休業申出に係る対象家族についての介護休業日数を差し引いた日数を経過する日より後の日であるときは、当該経過する日。第三項において同じ。)までの間とする。
2 この条において、介護休業終了予定日とされた日とは、第十三条において準用する第七条第三項の規定により当該介護休業終了予定日が変更された場合にあっては、その変更後の介護休業終了予定日とされた日をいう。
3 次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、介護休業期間は、第一項の規定にかかわらず、当該事情が生じた日(第二号に掲げる事情が生じた場合にあっては、その前日)に終了する。
一 介護休業終了予定日とされた日の前日までに、対象家族の死亡その他の労働者が介護休業申出に係る対象家族を介護しないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生じたこと。
二 介護休業終了予定日とされた日までに、介護休業申出をした労働者について、労働基準法第六十五条第一項若しくは第二項の規定により休業する期間、育児休業期間、出生時育児休業期間又は新たな介護休業期間が始まったこと。
4 第八条第四項後段の規定は、前項第一号の厚生労働省令で定める事由が生じた場合について準用する。
(不利益取扱いの禁止)
第十六条 事業主は、労働者が介護休業申出をし、又は介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(参考):育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索

ステップ5-3|介護休暇・短時間勤務・残業/深夜業の制限:“小さく調整して続ける”制度の使い分け
介護は長期化しやすく、「まとまって休む」よりも、日々の通院付き添いや緊急対応に備えた“微調整”が効く場面が多くあります。
介護休暇(年5日/10日)や短時間勤務、残業免除、時間外労働・深夜業の制限などは、まさにそのための制度です。
本節では、介護の局面(始まった直後/在宅が軌道に乗るまで/施設併用など)に合わせて、制度をどう組み替えると続けやすいかを整理します。
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以下扱い検討
介護休暇と短時間勤務制度は、介護を必要とする家族を支えるために働く従業員が、仕事と介護を両立できるように設けられた重要な制度です。
これらの制度の概要や利用方法、そして実際の運用事例や課題について解説し、介護者が安心して働ける環境を作るための情報を提供します。
1.介護休暇に関する「育児・介護休業法」条文
参考までに、今回のテーマである、「育児・介護休業法」で規定している「介護休暇」に関する条文を初めに転載します。
「育児介護休業法」<介護休暇>関連規定条文
平成三年法律第七十六号
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(通称「育児介護休業法」)
第五章 介護休暇
(介護休暇の申出)
第十六条の五 要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(要介護状態にある対象家族が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(以下「介護休暇」という。)を取得することができる。
2 介護休暇は、一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得することができる。
3 第一項の規定による申出は、厚生労働省令で定めるところにより、当該申出に係る対象家族が要介護状態にあること及び介護休暇を取得する日(前項の厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得するときは介護休暇の開始及び終了の日時)を明らかにして、しなければならない。
4 第一項の年度は、事業主が別段の定めをする場合を除き、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。
(介護休暇の申出があった場合における事業主の義務等)
第十六条の六 事業主は、労働者からの前条第一項の規定による申出があったときは、当該申出を拒むことができない。
2 第六条第一項ただし書及び第二項の規定は、労働者からの前条第一項の規定による申出があった場合について準用する。この場合において、第六条第一項第一号中「一年」とあるのは「六月」と、同項第二号中「定めるもの」とあるのは「定めるもの又は業務の性質若しくは業務の実施体制に照らして、第十六条の五第二項の厚生労働省令で定める一日未満の単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(同項の規定による厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得しようとする者に限る。)」と、同条第二項中「前項ただし書」とあるのは「第十六条の六第二項において準用する前項ただし書」と、「前条第一項、第三項及び第四項」とあるのは「第十六条の五第一項」と読み替えるものとする。
(準用)
第十六条の七 第十六条の規定は、第十六条の五第一項の規定による申出及び介護休暇について準用する。
(参考):育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索
2.介護状況に応じた休暇の取得方法と法的枠組み
1)介護休暇制度の概要
介護休暇制度は、従業員が要介護状態にある家族の介護を行うために、短期間の休暇を取得できる制度です。
以下に、制度の概要を示します。
①対象者
介護休暇の対象者は、従業員が介護を必要とする親族(配偶者、子、親、配偶者の親、祖父母、兄弟姉妹、孫など)で、特に日常生活に支援が必要な場合に限られます。
②取得条件
介護休暇は、要介護状態にある家族一人につき年間5日(複数の場合は10日)を上限として取得できます。
短期間の緊急介護や特定の介護が必要な場合に適用されます。
③休暇の種類
介護休暇は、1日単位で取得することができますが、半日単位での取得も認められています。
また、時間単位での取得が可能な企業もあります。
2) 休暇の取得方法
介護休暇を適切に取得するためには、タイミングや手続きの理解が重要です。
①取得申請のタイミング
介護が必要となる時点で、速やかに申請することが求められます。
一般的には、介護が必要と判断された直後に申請を行い、休暇の具体的な開始日を調整します。
②手続き
介護休暇の申請には、会社に対して介護休暇申請書を提出する必要があります。多くの企業では、診断書や介護が必要な状態を証明する書類も求められることがあります。
③留意点
介護休暇を申請する際には、事前に上司や人事部門と相談し、業務への影響を最小限に抑えるように配慮することが重要です。
3) 法的な枠組み
介護休暇の取得には、労働基準法や関連する法規の保護があります。
①労働基準法の解説
労働基準法では、介護休暇を取得する従業員の雇用保護が明記されています。
これにより、介護休暇を取得したことを理由に解雇や不利益な扱いを受けることは禁じられています。
②関連法規
育児・介護休業法も、介護休暇の取得に関して重要な法規です。
この法律では、従業員が介護休暇を取得する権利が保障されており、企業には従業員の介護休暇を認める義務があります。
関連リンク: 厚生労働省 介護休暇の制度と法的枠組みについて https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
3.短時間勤務のメリットとデメリット、実際の運用事例
1)短時間勤務制度の概要
短時間勤務制度は、介護と仕事の両立を図るために、従業員が通常の労働時間よりも短い時間で働くことを可能にする制度です。
①制度の対象者
短時間勤務制度の対象者は、介護を必要とする家族がいる従業員です。
この制度は、特にフルタイム勤務が難しい状況にある場合に活用されます。
②適用条件
短時間勤務は、通常の勤務時間を減らす形で設定されます。例えば、通常の勤務時間が8時間であれば、短時間勤務では1日あたり4時間や6時間に減少します。
③労働時間の設定方法
具体的な労働時間は、従業員と企業の間で話し合いにより決定されます。
柔軟な労働時間の設定が可能であり、介護の必要に応じて時間帯や勤務日数を調整することができます。
2)短時間勤務制のメリットとデメリット
短時間勤務制度の利用には、メリットとデメリットがあります。
①<メリット>
・家族との時間確保
短時間勤務により、介護を行うための時間を確保できます。これにより、家族との関係を維持しながら、介護を行うことが可能です。
・身体的・精神的負担の軽減
通常のフルタイム勤務に比べて労働時間が短縮されるため、介護者自身の身体的・精神的負担が軽減されます。
②<デメリット>
・収入減少リスク:短時間勤務により、給与が減少するリスクがあります。これは、家計に与える影響が大きくなる可能性があります。
・キャリアへの影響
長期にわたる短時間勤務は、昇進やキャリアパスに影響を与える可能性があります。これにより、従業員が将来的に不利な立場に置かれることが考えられます。
3)実際の運用事例
短時間勤務制度の成功事例と実際の運用について紹介します。
①企業の導入事例
多くの企業が短時間勤務制度を導入し、従業員が介護と仕事を両立できるよう支援しています。
例えば、ある企業では、短時間勤務制度を活用した結果、従業員の離職率が大幅に低下し、従業員満足度が向上した事例があります。
②労働者の実例
ある従業員は、介護が必要な親のために短時間勤務制度を利用し、1日6時間勤務に切り替えました。
この制度の導入により、介護と仕事のバランスが取れ、ストレスも軽減されたと報告されています。
関連リンク: 経済産業省 短時間勤務制度の導入ガイドラインhttps://www.meti.go.jp
4.現状の短時間勤務制度の課題と改善策
1)制度利用のハードル
短時間勤務制度は有益ですが、制度利用に関するハードルも存在します。
①制度の周知不足
一部の企業では、短時間勤務制度が従業員に十分に周知されていないため、制度の利用が進んでいないという課題があります。
②企業側の理解不足
特に中小企業では、短時間勤務制度に対する理解が不足しており、制度の導入や利用が難しい場合があります。
2)改善策
短時間勤務制度の普及と利用促進に向けた改善策を提案します。
①企業内研修の強化
企業内での短時間勤務制度に関する研修を強化し、従業員と管理職の双方が制度の理解を深めることが重要です。
②柔軟な運用の促進
企業は、短時間勤務制度をより柔軟に運用し、従業員が利用しやすい環境を整えることが求められます。
例えば、個別の事情に応じた労働時間の調整や、制度利用後のキャリアサポートを提供することが考えられます。
まとめ
介護休暇と短時間勤務制度は、介護と仕事を両立するための重要な制度です。
これらの制度を理解し、効果的に活用することで、介護者が安心して働き続けることが可能となります。
また、企業側も従業員が利用しやすい環境を整えることで、より良い職場環境を実現することができます。
双方が、仕事と介護の両立をムリなく行うことができるよう、これらの制度を着実に、柔軟に利活用することが、介護離職を防ぐことに結びつくと考えます。
次節は、「職場の理解とサポートの重要性」がテーマです。
ステップ5-3|次に取るべき行動(a)
□ 介護の“頻度と緊急性”を整理する
・突発対応が多いか
・定期的な通院付き添いが中心か
□ 制度を組み合わせて考える
・介護休暇+短時間勤務
・残業免除+在宅勤務など
□ 上司・人事と事前相談する
・業務への影響と調整方法を共有
・復帰後の働き方も含めて話し合う

ステップ5-4|職場での理解と支援体制づくり:上司・同僚との合意形成と企業独自制度の活かし方
制度があっても、職場での理解がなければ「言い出せない」「取りづらい」「復帰しづらい」となり、結局は離職に近づきます。
令和6年改正でも、企業側に 雇用環境整備 や 個別周知・意向確認 が求められる方向が明確になりました。厚生労働省
本節では、上司・同僚との情報共有の仕方、業務設計の落としどころ、企業独自制度(相談窓口、在宅勤務、研修など)の作り方・使い方を、実務として組み立てます。
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以下扱い検討
はじめに
介護と仕事の両立を図るためには、職場の理解とサポートが不可欠です。
本記事では、職場内での介護事情の共有、コミュニケーションの重要性、企業独自の介護支援制度の整備について説明します。
職場全体で介護者を支える体制を構築することで、社員が安心して働ける環境を作り出すことが可能です。
1.職場内での介護事情の理解とコミュニケーションの促進
1)職場内での介護事情の共有
職場内で介護に関する事情を共有することは、介護者が安心して働ける環境を作るために非常に重要です。
以下の方法を通じて、社員同士の理解を深めることができます。
①情報共有の手段
定期的なミーティングや社内報を活用して、介護に関する情報を共有します。
例えば、介護者が直面している具体的な課題や、会社が提供している介護支援策の内容について話し合う場を設けることが効果的です。
②ケーススタディの導入
介護をしながら仕事を続けている社員の実例を紹介し、その体験を共有することで、他の社員にも理解が深まります。
2)職場内コミュニケーションの重要性
介護者支援体制を構築するためには、職場内のコミュニケーションが欠かせません。
①介護者支援体制の構築
介護を行う社員が孤立しないよう、チームや上司と密にコミュニケーションを取ることが重要です。
定期的なフィードバックセッションや個別面談を通じて、介護者のニーズを把握し、適切な支援を提供します。
②サポート体制の設計
企業全体で介護者を支援するための組織的な体制を設けます。
具体的には、介護に関する相談窓口の設置や、メンタルヘルスサポートの提供が含まれます。
3)介護休業・休暇取得と協力体制構築のための社内啓発活動
介護問題に対する意識を高めるためには、社内での啓発活動が効果的です。
①社内研修の実施
介護に関する社内研修を定期的に実施し、社員全体の理解を深めます。
研修内容には、介護保険制度の基礎知識や、介護と仕事を両立するための具体的な方法が含まれます。
②情報提供の方法
イントラネットや社内掲示板を活用して、介護に関する最新情報や支援策を社員に知らせます。
また、介護者向けのセミナーやワークショップを定期的に開催することも有効です。
関連リンク: 厚生労働省 職場での介護者支援についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
2.上司・同僚との介護休業・休暇取得協力体制の構築とその効果
1)上司の理解とサポート
上司の理解とサポートは、介護を行う社員が安心して働くための鍵となります。
①具体的な支援方法
上司は、介護を行う社員の状況を理解し、必要に応じて勤務時間の調整や業務内容の見直しを行います。
また、定期的に面談を実施し、介護者の負担を軽減するための提案を行います。
②コミュニケーションの取り方
上司と社員との間でのオープンなコミュニケーションが重要です。
介護者が抱える不安や悩みを上司に相談しやすい環境を整えることが、長期的なサポートにつながります。
2)同僚との協力
同僚との協力体制を構築することも、介護と仕事の両立を支援する上で不可欠です。
①業務分担の見直し
チーム内での業務分担を見直し、介護者が負担を感じないように調整します。
例えば、繁忙期には他の同僚が一部の業務を引き受けるなど、柔軟な対応が求められます。
②サポート体制の構築事例
ある企業では、介護者をサポートするために、同僚が定期的に仕事の進捗をフォローし、介護者が休暇を取る際にも業務が滞らないような体制を整えています。
3)協力体制の効果
職場全体での協力体制が整うと、介護と仕事の両立が容易になり、職場環境にも良い影響を与えます。
①プラス効果
介護者をサポートする体制が整うことで、職場全体の士気が向上し、チームワークも強化されます。また、従業員が長期間にわたって安定して働ける環境が整い、結果として企業の生産性向上にもつながります。
②職場環境改善の具体例
実際に介護支援を行った企業では、介護と仕事を両立するための環境整備が進み、社員の離職率が低下し、企業の評判が向上するなどの効果が見られました。
4)仕事と介護の両立事例:厚労省HPより
厚生労働省のHPに、労働者本人の取り組みによる「仕事と介護の両立事例が掲載されていました。
以下は、(労働者本人)の取り組みにより実行実現した例のリストです。

それぞれの内容については、こちらで見ていただければと思います。
※ 関連リンク: 経済産業省 介護と仕事の両立支援の事例
3.企業独自の介護支援制度整備の動向と課題
1)企業独自の取り組み例
企業による独自の介護支援制度は、法定制度を補完し、より柔軟かつ多様なニーズに対応するものとして注目されています。
多くの企業が独自に介護支援策を導入していますが、今回、以下の4社の例を紹介します。
① 花王株式会社
花王株式会社では、従業員の介護と仕事の両立を支援するために、介護者専用の相談窓口を設置しています。
従業員は、介護に関する相談や情報提供を受けることができ、介護休暇や短時間勤務の利用についてもサポートが提供されます。
また、介護休暇に加えて、長期の介護が必要な場合にはフレックスタイム制度を利用できるよう、柔軟な勤務形態を導入しています。
②株式会社リクルートホールディングス
株式会社リクルートホールディングスでは、「介護セーフティネット」という制度を設け、従業員が介護に直面した際のサポート体制を整えています。
この制度では、介護者向けのメンタルヘルスサポートプログラムや、介護資金の貸付制度を提供しており、従業員が安心して介護と仕事を両立できる環境を整えています。
③ 株式会社ナカノ
広島県に本社を置く建設会社、株式会社ナカノでは、介護休暇や短時間勤務制度の他に、社内で「介護相談会」を定期的に開催しています。
この相談会では、専門家を招いて介護に関する最新情報や、効果的な介護方法についてのアドバイスを受けられるほか、従業員同士で情報を共有する場としても機能しています。
④ 株式会社ラネット
通信販売業を営む株式会社ラネットでは、介護支援のための「在宅勤務制度」を強化しています。
介護が必要な従業員は、在宅勤務を活用することで介護と仕事を両立させることができる環境が整っています。
また、介護支援に関するeラーニングプログラムを提供し、従業員が自宅からでも介護に関する知識を深められるようサポートしています。
後者の2社は、規模が大きくない企業でも、従業員の介護をサポートするための工夫をこらし、柔軟な支援策を提供している例です。他の中小企業にとっても参考になるでしょう。
2)課題と今後の展望
企業独自の介護支援制度には多くの利点がありますが、いくつかの課題も存在します。
①課題
中小企業では、リソースが限られているため、独自の支援策を導入するのが難しい場合があります。
また、制度が存在していても、従業員に十分に周知されていないことも課題の一つです。
②今後の展望
今後は、企業間の情報共有やベストプラクティスの普及が進むことで、より多くの企業が効果的な介護支援策を導入することが期待されます。
また、政府の支援策やインセンティブの導入によって、中小企業にも導入しやすい制度が増えることが望まれます。
このセクションは、次章第6章のテーマ「企業による介護離職防止策の取り組みと活用」に繋がる序論となります
まとめ
職場の理解とサポートは、介護を行う社員が仕事と家庭の両立を実現するための重要な要素です。
職場内での介護事情の共有やコミュニケーションの強化により、社員が安心して働ける環境を整えることが求められます。
また、上司や同僚との協力体制を構築することで、介護と仕事のバランスを取りやすくし、職場全体の士気や生産性の向上にもつながります。
さらに、企業独自の介護支援制度を整備し、社員に周知徹底することで、より多くの社員が安心して介護休暇や短時間勤務制度を利用できる環境を作り出すことが重要です。
これらの取り組みが、介護離職の防止に大きく貢献するでしょう。
ステップ5-4|次に取るべき行動
□ 職場で共有すべき範囲を決める
・誰に、どこまで伝えるかを整理
□ 定期的なコミュニケーションの場をつくる
・上司との面談
・業務調整の確認タイミング
□ 社内外の支援資源を把握する
・社内相談窓口
・外部相談(公的機関・専門家)
(画像)
総括|介護離職防止につなげるために
本章(ステップ5)で確認した通り、介護離職を防ぐ鍵は「気合い」ではなく、制度を“使える形”に整えることです。
介護休業は時間を、介護休業給付金は最低限の収入を、介護休暇や短時間勤務等は日々の調整力を、そして職場の理解形成は継続力を支えます。
特に令和6年改正で、企業側に 雇用環境整備 や 個別周知・意向確認、さらに 40歳等への情報提供 が整理され、介護が始まる前から備える発想が強まりました。厚生労働省
次章(ステップ6)では、企業がどのように制度を実装し、離職を減らしているのか――具体的な取り組み事例と、働く側が“引き出すポイント”を深掘りします。
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以下、扱い検討
第5章では、介護と仕事の両立を支援するための様々な視点から、職場環境の整備とサポート体制の強化について考察しました。
職場内での理解と支援が進むことで、介護を行う社員が離職することなく、長期にわたって働き続けることが可能となります。
企業が積極的に介護支援策を導入し、職場全体で介護者を支える文化を醸成することが、今後の重要な課題であり、社会全体の労働力維持にも寄与します。
次回は、ステップ6「第6章 企業による介護離職防止策の取り組みと活用」を取り上げます。
(参考):育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索

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