介護離職しない、介護離職の必要がない「介活」を日常生活に。
本シリーズの活用は、「介活」の実践から始まります。
本記事は、「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズの総括として、これまでの内容を整理し、改めて介護と仕事をどう両立させるか、その本質を考えることを目的としています。
シリーズとしては今回が一つの区切りになりますが、終わりではありません。
むしろ、これからの介護への備えを日常生活の中で再スタートさせるための起点として位置付けています。
これから介護に直面する可能性がある方はもちろん、すでに介護を担っている方にとっても、立ち止まって状況を整理するための「全体地図」として活用していただければ幸いです。
その上で、本記事がどのような位置づけの記事なのかを、あらかじめ明確にしておきます。
本記事は、Webサイト・介護終活.com(https://kaigoshukatsu.com)で公開していた記事『【シリーズ総括】「介護離職ゼロ」は実現できる?「介活」で考えるこれからの介護』を、重複を整理しつつ統合・加筆修正した“改訂統合版”です。
旧記事は、内容の重複を避けるため、順次、非公開化/リダイレクト/canonical設定などで整理します(検索エンジン向けにも重複を残さない運用を行います)。
「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ|全体総括
1.介護離職者をめぐる現状と今後の予測
まずは復習として、介護離職とは何か、その現状と今後の見通しを簡単に整理しておきます。
1)介護離職とは
介護離職とは、主に家庭内での介護負担が増大し、仕事と介護の両立が困難になることで、仕事を辞めざるを得なくなる状況を指します。
家族や親族の介護が必要になった際、その介護に専念するために離職することを意味します。
本シリーズの第1章では、介護離職を個人の問題ではなく、構造的な問題として整理しました。
⇒ 第1章 介護離職とは何かを構造的に理解する|ステップ1 – Life Stage Navi
2)介護離職の現状
最新の調査によると、介護を理由に離職する人は、2022年時点で年間およそ11万人規模にのぼっています。
その多くは40代から50代の働き盛り世代であり、特に女性の割合が高く約8万人を占めていることが特徴です。
この数は、前回調査から約1万人増加しており、今後も高齢者人口の増加に伴い、介護離職者数はさらに増加することが懸念されています。


介護離職は、本人にとって収入減やキャリア断絶といった経済的負担だけでなく、社会的孤立や精神的ストレスを伴います。
さらに、将来の年金額の減少など、長期的な生活不安にも直結します。
一方、企業側にとっても、経験豊富な中核人材の流出は大きな損失です。
介護休業制度や支援制度は整備されつつありますが、「使いにくい」「知られていない」、結果利用率が低いという課題は依然として残っています。
仕事と介護の両立支援の環境整備が依然として不十分なケースが多いのが実態です。
(参考):⇒ 令和4年就業構造基本調査 結果の概要 (stat.go.jp)
3)介護離職の今後の予測
2025年以降、後期高齢者人口はさらに増加します。
要介護者数の増加に伴い、介護離職のリスクは今後も高まり続けると考えられます。
制度改正や企業の支援拡充が進んだとしても、毎年10万人等という一定数の介護離職が発生する構造は簡単には変わりません。
(参照:下図、「仕事と介護の両立に関連する指標の推移」)


4)「介護離職ゼロ」というスローガンへの疑問
国は「介護離職ゼロ」を掲げていますが、現実にはその実現は極めて限定的です。
一部の大企業では可能であっても、多くの中小企業や非正規雇用、自営業者にとっては現実的とは言えません。
このスローガンは重要な方向性を示す一方で、
「防げなかったのは本人の努力不足ではないか」
という静かな自己責任論を生みやすい側面もあります。
この点については、次章で改めて掘り下げます。
(参考)厚生労働者スローガン:~「介護離職ゼロ」の取組で目指していること~
現在、我が国の構造的な問題である少子高齢化に真正面から挑み、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」の実現を目的とする「一億総活躍社会」に向けた取組が進められています。
このうち、「安心につながる社会保障」に関連する取組の一環として、2020年代初頭までに家族の介護を理由とした離職の防止等を図るべく「介護離職ゼロ」を推進していくこととしており、必要な介護サービスの確保と、働く環境改善・家族支援を両輪として取り組んでいます。
介護離職の理由には、「仕事と介護の両立が難しい職場だった」、「自身の心身の健康状態が悪化した」というものがありますが、その中には「介護サービスの存在・内容を十分に知らなかった」という理由もあり、こうした状況を解消していくために介護に関する情報提供体制を整備していく必要があります。
こうした背景から、介護と仕事の両立を希望するご家族の不安や悩みに応える相談機能の強化・支援体制を充実させるために、介護が必要になったときに速やかにサービスの利用ができるよう、国及び自治体において、介護保険制度や介護休業制度の内容や手続きについての住民の皆さんへの周知拡大を推進していきます。

2.「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズを振り返る|その構成と重点
本シリーズは、「介護離職は本当に防げるのか」という問いを起点に、
防げる場合と、防げない場合が現実に存在することを前提としたうえで、
それでもなお 「準備と設計によって回避できる可能性を最大化する」 ことを目的として構成してきました。
後述する次の章で整理するとおり、本シリーズは理想論でも精神論でもなく、
介護に直面する前から取り組める 実務的な備えの全体像 を提示するためのものです。
ここ本章では、第1章から第9章(+1)までの内容を、シリーズの構成に沿って簡潔に振り返ります。
1)介護離職の現実的な原因と構造の理解(ステップ1)
「第1章 介護離職とは何かを構造的に理解する|ステップ1」では、
介護離職が個人の判断や覚悟の問題ではなく、突発性・情報不足・制度理解不足・職場環境といった複合要因によって生じる構造的な問題であることを整理しました。
介護離職を防ぐためには、まず「なぜ起きるのか」を冷静に理解することが出発点であることを確認しています。
⇒ 第1章 介護離職とは何かを構造的に理解する|ステップ1 – Life Stage Navi
2)介護保険制度と支援制度を「使える状態」にする(ステップ2)
「第2章 介護保険と支援制度を理解し、使える状態にする|ステップ2」では、
介護保険制度の基本構造、申請手続き、サービス内容、費用負担、そして介護保険外支援までを整理しました。
制度は「知っている」だけでは意味がなく、
いざという時に実際に使える状態にしておくことが、介護負担と離職リスクを下げる鍵であることを示しています。
⇒ 第2章 介護保険と介護支援制度を実務で使える状態にする|ステップ2 – Life Stage Navi
3)介護の「場所・人・お金」を整理し、選択する判断軸(ステップ3)
「第3章 介護の“場所と人とお金”を決める|ステップ3」では、
在宅介護・施設介護・併用という選択肢を、感情ではなく条件整理と現実的判断で考える視点を提示しました。
介護の方法を早い段階で整理しておくことが、
仕事との両立や家族関係の混乱を防ぐ重要な要素であることを確認しています。
⇒ 第3章 介護の場所・人・お金を整理し選択する判断軸|ステップ3 – Life Stage Navi
4)自治体・地域資源を活用した支援体制の構築(ステップ4)
「第4章 自治体と地域の支援制度を使いこなす実践ガイド|ステップ4」では、
地域包括支援センターをはじめとする自治体の役割と、地域資源の具体的な活用方法を整理しました。
介護を家族だけで抱え込まず、
公的・地域的支援を前提にした体制づくりが、介護離職回避の現実解であることを示しています。
⇒ 第4章 自治体と地域の介護支援制度を使いこなす実践法|ステップ4 – Life Stage Navi
5)仕事と介護を両立するための制度と現実的対応(ステップ5・6)
「第5章 仕事と介護を両立する制度の全体像|ステップ5」
「第6章 仕事と介護を両立する現実解|ステップ6」では、
・介護休業制度・介護休暇制度の正しい理解
・企業規模や雇用形態による現実的な違い
・職場との調整や働き方の工夫
について整理しました。
制度があっても使えない現実、
使うために必要な準備と交渉の視点を示した章です。
6)家族協力と意思確認による介護体制の設計(ステップ7)
「第7章 家族の協力設計で介護離職を防ぐ|ステップ7」では、
家族間の役割分担、本人の意思確認、メンタルケアを含めた家族関係の設計を扱いました。
介護は制度だけでは成立せず、
家族内コミュニケーションの質が離職リスクを大きく左右することを示しています。
⇒ 第7章 家族で介護を支える体制と役割分担の設計法|ステップ7 – Life Stage Navi
7)介護離職を防ぐための事前準備の全体設計(ステップ8)
「第8章 介護離職を防ぐ“事前準備”の全体設計|ステップ8」では、
情報整理・相談先の把握・緊急時対応・日常介助の視点などを統合し、
介護が始まる前後で行うべき準備を総合的に整理しました。
突発的な介護開始によって離職に追い込まれる事態を避けるためには、
この事前準備段階での行動が最も重要であることを確認しています。
⇒ 第8章 介護離職を防ぐために行う事前準備の全体設計|ステップ8 – Life Stage Navi
8)万一の介護離職後への備えと再構築(ステップ+1)
そして最後に、「第9章(+1)」として、
万一介護離職を選ばざるを得なかった場合でも、
・再就職
・転職
・キャリア再構築
によって生活を立て直すための視点を提示しました。
介護離職は「終わり」ではなく、
整理と再設計によって次につなげることができるという現実的な選択肢を示しています。
⇒ 第9章 万一の介護離職後に備える再就職・転職とキャリア再構築(ステップ+1) – Life Stage Navi

3.先行記事・体験記は、本シリーズのどこに位置づくのか
本シリーズの前後には、制度解説や実践手順とは異なる切り口で書かれた、いくつかの先行記事・体験記が存在します。
それらは一見すると、本シリーズとは別の「単発記事」や「個人的記録」のようにも見えます。
しかし実際には、これらの先行記事こそが、
「なぜ介護離職を“防ぐ設計”が必要なのか」を浮かび上がらせる、重要な出発点でした。
この章では、それらの記事が本シリーズの中で果たしている役割を整理します。
1)体験記は「介護の現実」を立体的・時系列的に残すための記録
当サイトでは、シリーズ「介護離職しないための8ステップ+1」に入る以前に、私自身の介護経験として、
・サ高住(サービス付き高齢者住宅)での生活
・特養(特別養護老人ホーム)での生活
・100歳の看取りと見送り(終活の実際)
を、複数の連載として記録してきました。
ここで残したかったのは、「制度があるのに離職してしまう人の典型」ではなく、むしろ逆に、施設という選択肢を含めて“介護を継続できた側”でさえ、家族には多くの現実的な対応と判断が残り続けるという現実です。
たとえば施設介護では、介護そのものを専門職に担っていただける一方で、家族側には次のような“継続タスク”が発生します。
・入所前後の比較・見学・意思決定(本人同意/家族合意を含む)
・書類・費用・持ち物・衣類等の管理(更新・差し替え含む)
・面会や連絡、状態変化への対応(医療連携・急変時判断)
・終末期の方針確認、看取り後の手続き・整理(終活の実務)
つまり体験記は、制度や施設を否定するためではなく、「介護は“サービスを使えば終わる”話ではない」こと、そして “家族の判断・調整・継続運用”が現実のボトルネックになり得ることを、具体の出来事として残すための記録です。
※以下当該記事リンク
⇒ 93歳義母「サ高住」介護体験記|2015年の記録と気づき – Life Stage Navi
⇒ 98歳義母「特養」介護体験記|コロナ禍における施設介護生活の記録 – Life Stage Navi
⇒ 100歳義母 看取りと見送りの記録|終活を実践した家族の体験(2022年7月〜10月) – Life Stage Navi
この体験の蓄積があったからこそ、本シリーズでは「制度の説明」だけでなく、家族内の役割設計/職場との調整/自治体との接続/費用見積り/情報の持ち方まで含めて、介護離職を避けるための“実装(=日常介活)”として体系化してきました。
2)先行記事は「介護離職は防げるのか」という問いを正面から立てた序論
本シリーズに先行して公開した
「介護離職は本当に防げるのか|『8ステップ+1』シリーズ序論として考える現実と限界」
は、体験記の要約でも、制度解説記事でもありません。
この先行記事の役割は、極めて明確です。
それは、「介護離職は努力すれば必ず防げる」という楽観論に、最初から線を引くことでした。
介護離職は、
・情報不足だけで起きるものでも
・制度を知らなかったから起きるものでも
・家族関係が悪かったから起きるものでも
ありません。
仕事の性質、雇用形態、企業規模、家族構成、居住地、本人の健康状態
これらが複合的に重なった結果として、「防げないケース」が現実に存在する。
先行記事では、その事実を曖昧にせず、
・「介護離職ゼロ」という政策スローガンの限界
・制度と現場のあいだにある構造的なギャップ
・個人努力に還元されがちな現実への違和感
を、体験と調査をもとに整理しました。
つまり先行記事は、このシリーズ全体の「前提条件」を明示するための序論として位置づけられています。
3)体験記と先行記事は「実践法シリーズ」の前提を支える土台
ここで重要なのは、体験記 → 先行記事 → 8ステップ+1
が 一直線の時系列 ではない、という点です。
・体験記 → 介護を「生活として経験した記録」
・先行記事 → その経験をもとに「介護離職は防げるのか?」という問いを社会構造・制度・現実の観点から整理した論考
・8ステップ+1シリーズ → 「防げる可能性があるなら、どこまで準備できるのか」を、実務レベルで具体化した設計図
この順番で位置づけることで、本シリーズは 単なるハウツー集にも、精神論にもならず、
「できること」と「できないこと」を分けた上での現実的な実践論として成立しています。
4)なぜ「8ステップ+1」という構成か
先行記事で明らかになったのは、
介護離職を巡る問題が、単一の対策では解決しないという事実でした。
・制度を知っていても、使えなければ意味がない
・家族がいても、役割設計がなければ機能しない
・仕事があっても、調整の順序を誤れば破綻する
そこで本シリーズでは、
・情報 ・制度 ・場所 ・人 ・お金 ・職場 ・家族 ・日常の備え
を段階的に整理する構造として、「8ステップ」という形を採用しました。
そして、それでもなお起こり得る「万一の介護離職」に備える視点として
「+1(再就職・キャリア再構築)」を付け加えています。
これは、「離職しないこと」を絶対目標にするのではなく、
人生が破綻しないための選択肢を残す、という立場に立っているからです。
5)結論:本シリーズは「理想論」ではなく「設計論」
以上を踏まえると、本シリーズの立ち位置は明確です。
・介護離職は「防げる人もいれば、防げない人もいる」
・しかし「何も知らずに追い込まれる」状況は減らせる
・そのための準備と設計を、できるだけ具体化した
それが「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズであり、
この章は、その思想的・経験的な起点を明示する章です。
4.当サイトの役割と「介活」の提案 ― 介護離職しないための“日常介活”という考え方 ―
本シリーズを通じて明らかになったのは、
介護離職は制度だけでは防げないという現実です。
介護保険制度、介護休業制度、自治体支援、企業の両立支援策。
これらは確かに重要であり、活用すべき制度です。
しかし同時に、それらは「知っていなければ使えない」「準備がなければ間に合わない」
という性質を持っています。
そこで本シリーズでは、
介護が始まってから慌てて対応するのではなく、
日常生活の延長として介護への備えを進めるという考え方を提示してきました。
それが、本サイトが提案する「介活」です。
1)「介活」とは何か ー 介護前から始まる生活設計|介護準備活動と介護生活 2つの「介活」
ここで改めて、「介活」を定義します。
介活とは、
介護が必要になる“前”から行う準備活動と、
介護が始まってからの実践生活の両方を含む概念です。
具体的には、
・家族の健康状態や生活状況を把握する
・介護保険・医療・地域支援制度の基本を知る
・家族間で「もしもの時」の話題を共有する
・仕事と生活の優先順位を整理しておく
といった、特別な行動ではなく、日常の中で少しずつ積み重ねられる行為を指します。
介活は、「介護のために生きる」ことではありません。
介護によって人生や仕事が壊れないようにするための生活設計です。
※参考までに記事末に【広義の「介活」2×2の定義】及び【家族介護「介活」準備項目リスト】を添付しています。
2)なぜ「介活」が介護離職防止につながるのか
介護離職に至る多くのケースでは、
次のような要因が重なっています。
・情報不足
・判断の遅れ
・家族内の意思不一致
・職場との調整不足
これらはすべて、介護が始まる前から予測できた可能性がある課題です。
介活を通じて、
・情報を「点」ではなく「線」で把握する
・家族・職場との対話を事前に持つ
・「離職以外の選択肢」を常に意識しておく
ことで、
介護離職という“追い込まれた決断”を回避できる確率は確実に高まります。
3)当サイトが担う役割
本サイト「Life Stage Navi」は、
介護離職を防ぐための正解を提示する場所ではありません。
そうではなく、
・現実を過度に楽観視しない
・制度の限界も含めて整理する
・個々人が判断するための材料を提供する
という立場から、
介護と仕事、生活を自分なりに設計するための“地図”を提示することを役割としています。
本シリーズは、そのための一つの体系的な試みでした。

5.介護離職をめぐる結論 ― 「介護離職ゼロ」は可能か、その答え ―
では改めて、本シリーズの問いに戻ります。
「介護離職ゼロ」は可能なのか。
結論から言えば、
社会全体としての「完全な介護離職ゼロ」は現実的ではありません。
介護の状況は人によって異なり、
家庭環境、仕事、経済状況、地域資源には大きな差があります。
すべての人が同じ条件で制度を利用できるわけでもありません。
この現実を無視して「ゼロ」を掲げることは、かえって介護に直面した人を追い詰める危険性すらあります。
1)それでも「介護離職を減らす」ことはできる
一方で、介護離職を“減らすこと”は確実に可能です。
本シリーズで示してきたように、
・情報を早く知る
・制度を使える形に整える
・家族・職場と役割を共有する
・外部支援を前提に介護を設計する
これらを実践することで、「辞めるしかない」という選択肢を
「辞めなくてもよい可能性」へと変えることはできます。
2)万一、介護離職を選ばざるを得なかった場合でも
本シリーズでは、介護離職を「絶対にあってはならない失敗」とは位置づけていません。
現実には、介護離職が本人や家族にとって最も合理的な選択となる局面も存在します。
重要なのは、
・離職を「人生の終わり」にしないこと
・再就職・転職・キャリア再構築を視野に入れること
・離職後も社会との接点を保つこと
です。
第9章(ステップ+1)で扱ったように、介護離職後の人生を立て直すための視点を
あらかじめ持っておくこと自体も、立派な介活です。
3)「介護離職しない介護」は、どういう形で実現し得るのか ― 現実的に選び得る4つの方法+1
ここまで読んでいただいた方の中には、
「では結局、介護離職しない介護とは、どのような形なのか」
という疑問を持たれた方も多いと思います。
結論から言えば、介護離職をしないための介護には、唯一の正解はありません。
ただし、現実的に見た場合、多くのケースは次の4つの形のいずれか、
またはその組み合わせに収れんしていきます。
①居宅型介護施設への入所を前提とする介護
特別養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅など、
居宅型介護施設への入所を選択することで、
家族が担う介護負担を大きく軽減する方法です。
特養は要介護3以上という条件がありますが、介護離職を回避するうえでは、
最も「仕事との両立」がしやすい形でもあります。
もっとも、本人の同意が不可欠であり、この合意形成こそが最大のハードルとなります。
②訪問介護・通所介護・ショートステイを組み合わせた在宅介護
在宅介護を前提としながら、
訪問介護、デイサービス、ショートステイを
ケアマネジャーとともに組み合わせ、
介護を「家族だけで抱えない」形にする方法です。
仕事の就労時間や休日を考慮しながら設計することで、
介護と仕事を並立させる現実的な選択肢となります。
③他の家族・第三者に介護を委ねる選択
家族内で役割を再分担する、あるいは第三者に介護を委託するという選択も、
現実には重要な選択肢です。
介護を「誰が担うか」を固定せず、担えない前提で考えること自体が、介護離職回避につながる
ケースも少なくありません。
④外部支援を前提に、自身も介護に関与する形
外部サービスや他者の力を借りながら、自身も可能な範囲で介護に関与する方法です。
この形は準備と調整が不可欠ですが、
本シリーズで提示してきた「介活」を日常的に行っていれば、現実的に選び得る形でもあります。
⑤すべてに共通する前提条件としての「+1」
これら4つのいずれを選ぶ場合でも、共通して不可欠なのが、
・介護保険制度
・介護休業制度
・企業・自治体の支援制度
といった法制度・支援制度を理解し、使うことです。
ただし、すべての人が同じ条件で制度を使えるわけではありません。
その差を前提としたうえで、「使える制度を、使える形に整える」ことが、
介護離職を回避する現実的なアプローチとなります。
その為にも不可欠なのが、本シリーズの理解をも含めて、「介活」であることは十分ご理解頂けると思います。
4)本シリーズの最終的なメッセージ
介護離職は、個人の責任でも、努力不足でもありません。
同時に、制度だけに任せて防げるものでもありません。
だからこそ本シリーズは、「介護離職ゼロ」というスローガンではなく、
「介護離職しないために、どう備えるか」
「介護離職の必要がない状態を、どう設計するか」
という問いに向き合ってきました。
これから介護に直面する可能性のある方も、
すでに介護を担っている方も、
本シリーズを一度きりの記事としてではなく、
何度でも立ち戻れる“全体地図”として活用していただければ幸いです。
介護は、特別な出来事ではなく、誰にとっても起こりうる「生活の一部」です。
その現実と向き合いながら、仕事も、人生も、できるだけ自分らしく続けていく。
そのための一助となることを願い、本シリーズの総括とします。

参考:【広義の「介活」2×2の定義】
1.家族・親族などを介護する人にとっての「介活」
1)これから介護をしなければいけなくなると想定される人、あるいは急遽介護をしなければいけなくなった人にとっての「介護準備活動」
2)既に介護が生活の一部として組み込まれ、実践している「介護実践生活」
2.自分が介護される立場における「介活」
1)介護されるようになる時を想定して行う「自分介護準備活動」
2)家族等だれかに介護を受けている「介護生活」
参考:【家族介護「介活」準備項目リスト】(2017年作成)
1.介護を必要とする家族に関する情報整理・把握
1)現状の居住生活状況の把握
①(介護対象の家族は)家族・親族と同居か別居か
①-1 同居の場合、誰とか、その世帯の構成は
①-2 単身の場合、生活に不便・不都合がないか
①-3 高齢夫婦世帯の場合、双方の健康度や生活状況に問題はないか
②(介護対象の家族の住居は)持ち家か借家か、それ以外の形態か
②-1 持ち家の場合、住宅ローンなど負債はあるか、ないか
②-2 借家の場合、賃料、その他契約内容はどんな内容・条件か
③近隣・地域社会との関係は良好か、関係は薄いか
③-1 関係性がある場合、その対象者と関係度・関係内容
③-2 関係性が薄い場合、自治体など連絡先・相談先情報を把握
2)現状の健康度・病気等の状況の把握
① 現状通院・かかりつけの病院の有無と病状等
② 現状服用の医薬品、施術等
③ 過去既往の病気・ケガ、手術・入院等の有無と内容
④ 現状介護認定の有無・程度、介護サービス・介護予防サービス利用状況
⑤ 健康保険加入状況(健康保険か国民健康保険か)
⑥ 医療費支払い状況(医薬品含む)
⑦ 現状利用・実践の運動、サークル、趣味、仕事等 ※1-1)③と関連
3)現状の家計状況、資産・負債状況等の把握
① 年金種類と受給額、受給方法(金融機関)・管理方法
② 年金外収入(仕事・副業・不動産収入等)の有無・種類・金額等
③ 預貯金、有価証券等流動資産
④ 土地建物等固定資産
⑤ 相続関連情報(本人の相続意向、相続権留保者情報)
4)介護家族情報の整理把握
① 直接介護対応家族・親族状況、意向
② 間接介護関与家族・親族情報、状況、意向
③ 介護体制整備上の問題点・課題と対応方法案
④ 本人の意向・希望
2.介護に関する基本知識・情報の調査・把握
1)介護保険利用のための諸手続き
① 自治体介護担当部署連絡先・相談先、地方包括支援センター連絡先・相談先
② 介護認定調査申請方法とそのプロセス、関与方法等
③ ケアマネジャーの選出方法・相談先
2)介護保険制度、介護システム等の基礎知識
①介護保険利用者要件
①-1 介護保険料負担者と負担介護保険料
①-2 適用対象者年齢要件および年齢外特定疾病要件
①-3 要介護度・要支援度ランクと要件
②介護保険制度の内容
②-1 介護給付・介護報酬制度と負担介護費用
②-2 介護保険適用サービスと介護保険適用外サービス
②-3 介護保険利用時の負担費用と条件
②-4 その他制度内容
②-5 制度改定時の内容確認
③ 民間介護保険
④ 成年後見制度
3)介護施設等の種類と業務内容
① 公共型施設事業所と特徴、事業内容
② 民間型施設事業所と特徴、事業内容
③ 福祉用具事業者と役割、事業内容
④ 医療関連事業所と役割
④-1 医院・病院
④-2 看護事業所
④-3 薬局
⑤その他関係先
⑤-1 自治体担当部門
⑤-2 NPO、ボランティア組織その他業務提携先
4)介護サービス利用方法・利用手続き
① ケアマネジャーの選出・依頼と役割
② 在宅介護・施設介護に応じた介護体制と介護利用方針
③ 月度介護サービス利用計画
5)企業・団体等の介護休業制度、介護支援制度に関する知識・情報
(企業・団体就労者の場合)
① 法定での介護休業制度の内容と利用用法
② 企業団体独自の介護支援制度の有無と内容、利用方法
③ 介護休業制度・介護支援制度利用方法と手続き
6)その他の関連知識
① 認知症に関する知識・情報
② 見守りシステム
③ 成年後見制度
④ 民間介護保険
⑤ 介護関連情報ソース
3.介護体制・方法の検討・計画立案
1)介護を受ける場所・方法の検討・設定
① 在宅介護
② 施設介護(入所・入居型)
③ 在宅介護と施設介護の併用
④ 施設選択要件と選択判断基準
④-1 要介護・要支援度、利用サービス等に応じた選択
④-2 評価・評判による選択
④-3 費用・経済的条件に応じた選択
④-4 家族介護体制に応じた選択
2)医療並行利用時の対応方法
① 必要病院と利用手段
② 訪問診療・訪問看護の必要性と対応方法
3)介護等諸費用の試算・見積もりと負担方法
① 想定介護時の介護・医療費試算と費用負担・分担試算
② 施設入所時の費用負担試算と準備方法
③ 在宅介護選択時の住宅改修諸費用見積もりと負担方法
4)介護担当者とその方法・体制計画
①介護離職防止のための方策
①-1 介護休業制度・介護支援制度利用計画
①-2 必要介護費用負担計画
①-3 (万一)介護離職選択時の諸計画 ※別途項目化、要
②家族・親族介護体制計画
②-1 家族・親族等介護関与打ち合わせ・コミュニケーション
②-2 家族・親族介護費用分担検討
②-3 連絡体制・方法確認
③介活実行計画および実介護生活準備計画
③-1 介活実行スケジューリングと実行プロセス管理、介活ノート作成記入
③-2 介護必要時介護計画およびスケジューリング、実行プロセス管理(介活ノート活用)
③-3 介護生活開始後の変更・必要事項対応
コメント