終活は、人生の最終段階を豊かに過ごし、家族への負担を減らすための重要な準備活動です。
しかし、終活は一律の手順で進めるものではなく、個々の状況や価値観に応じて柔軟に対応するのがよいでしょう。本節では、当シリーズの8つのステップを紹介し、エンディングノートを活用した計画方法や、具体的な例を示しながら終活の進め方を提案します。

終活は人生の後半における計画的な準備行動です。
当シリーズでは、この終活準備は、以下の8つのステップで構成しています。
・第1ステップ:終活の基本の理解と心構え
・第2ステップ:エンディングノートと遺言書の作成
・第3ステップ:老後の生活設計と医療・介護の備え
・第4ステップ:生前整理と断捨離
・第5ステップ:財産と相続の整理
・第6ステップ:葬儀と埋葬の準備
・第7ステップ:家族とのコミュニケーション
・第8ステップ:おひとりさまの終活

但し、各ステップを順序どおりに進める必要はありません。
状況に応じて取り組みやすい部分から、あるいは個人個人の実情に応じて優先順位をつけ、タイミングを見計らって取り組んでいくことをお薦めします。

優先順位を決めるための指針

繰り返しになりますが、終活は一律の順序で進める必要はありません。個人の状況や制約条件に応じて、柔軟に優先順位を決めて進めるのが理想です。
例えば、以下のような事情や状況が終活を始める、あるいは終活の順序を変更するきっかけや要素になるでしょう。
健康状態:持病の有無や状態の変化、介護が必要になる可能性や実際になった場合、など。
年齢:65歳・70歳になったら、75歳後期高齢者になったら、次の誕生日を迎えたら、など、区切りをつけて、という方法。配偶者の年齢や家族の年齢なども、ある意味での区切りにできるかと。
生活状況:自由になる時間の有無や程度も関係しますし、日々のライフスタイルがどうなっているか、これからどうするかを考える機会も活かせます。
年金と貯えで生活できている人は、フリーハンドで終活に取り組むことができそうですが、人それぞれ種々の事情があるでしょうから、考えるべき時が訪れるでしょうし、自分で設定することもできますね。
就労状況:高齢者も働く時代になっています。また働き方も、正規雇用、フリーランス、パート・アルバイトなど人それぞれ。仕事の内容もそれぞれ。いつまで働くか、働けるかによって終活をいつ、どのように実践するか、働き方の違い・仕事内容の違いによって、終活へのアプローチが変わってくるでしょう。
・家族状況:子どもの独立や家を出たタイミング、2世代・3世代の同居、生活中高齢夫婦のみの生活、おひとり生活など家族の状況も終活を考える上での大きな要素になります。

これらの要因や状況に基づいて、取り組むべき項目や順序を個別に設定することが有効になるでしょう。
なお次項で、これらの指針を参考に、個別の事情に応じた終活の進め方をもう少し具体的に考えてみたいと思います。

終活の計画を整理し、管理するために、エンディングノートを活用することは有効です。
エンディングノートについては、次の第2ステップで詳しく取り上げるため、ここでは参考程度にお伝えしておくにとどめますが、自分の希望や必要な情報を記録し、手続きの優先順位を明確にすることができます。

<エンディングノートに記載する主な項目例>
財産目録:資産、保険、銀行口座のリスト
医療・介護に関する希望:介護施設の利用、延命治療の可否
葬儀・埋葬の希望:葬儀の形式やお墓の場所
家族へのメッセージ:感謝の言葉、遺産分配に関する意図

終活計画の管理にも、当然エンディングノートが役に立ちます。
記載した内容を、年に一度など定期的に、あるいはライフイベントや健康状態の変化があった折り等、必要に応じて見直し、更新することで、状況の変化に対応します。
家族とも必要な内容を共有し、万が一のときに備えておくとよいですね。

前項の<優先順位を決めるための指針>で示した終活への取り組みや終活計画を考える上でのタイミングを決める要素や状況について、もう少し具体的に掘り下げてみます。

1)就労状況に応じた終活の進め方

先述したように、高齢者の多くが働き続ける時代になっており、また働き方も、正規雇用、フリーランス、パート・アルバイトなど働き方も仕事の内容も多様です。
どのように働くか、いつまで働くか、働けるかによって終活をいつ、どのように実践するか、人それぞれになります。
そうした就労状況によって、終活に割ける時間やエネルギーが異なるため、それぞれの働き方に応じた進め方について考えてみました。

・フルタイム勤務の場合
正規社員だけでなく、パートやアルバイト契約でもも1日フルに働く高齢者はいます。
そのため、休日や空いた時間を少しずつ活用して、エンディングノートに必要情報を書き留めることから始めてはどうでしょうか。
例えば、財産リストや保険情報を整理したり、重要な書類の保管場所を決めることなどは手掛けやすく、無理なく進められると思います。
すぐに情報が整理できなかったり、どのように調べればよいか分からないなどということもあるでしょう。
そうした事情・状況を確認できること、知ることも大切なことと思います。

フリーランスや副業を行っている場合
フリーランスの人は、自分のペースで計画を進めやすいため、全体像を早めに把握し、あるステップの課題を集中的に、あるいは一括して進めることも可能です。
また、収入が不安定な場合や預貯金に不安がある場合などには、現状のパートやアルバイト、副業の仕事と収入を考えながら、終活を並行していくことにもなります。
そうした事情を今後どう考え、改めていくかも終活の一つの課題となるかと思います。

・無職状態の場合
この就労状況の括りではなく、生活状況の括りで述べるべきかもしれません。
就労なし状態としてここに書き加えました預貯金や退職金、年金所得などによって悠々自適の生活を送っている方には、時間的なゆとり、経済的なゆとりがあるため、終活も自分のペースで進めていくことができるでしょう。
ですが、そうした恵まれた状況ゆえに、終活など現実的に考える必要もない、としている人も多いかと思います。
しかしそれゆえに財産の処理処分など、恵まれていれば恵まれているだけ死後のことについてしっかり考え、備えを行っておくべき課題も多いはずです。
まして死や自分の心身がままならないようになることは思いもよらぬことから、あるいは予期せぬ時期に起こりうること。
やはり、それなりに事前に準備しておくべきでしょう。

2)生活状況・家族状況に応じた終活の進め方

一人暮らしか家族と同居しているかで、終活の進め方は大きく変わります。それぞれの生活状況に合った方法を紹介します。
・一人暮らしの場合
「おひとりさま」の場合、信頼できる第三者や任意後見人を早めに探し、任意後見契約を結んでおくこと等が不可欠になります。
また、おひとりさまに限らないのですが、デジタル遺品整理は、特にこの場合優先課題の一つとなります。
SNSのアカウントやオンラインバンクの情報は、エンディングノートに記載し、死後の手続きを家族や第三者にスムーズに引き継げるように備えておくことをお薦めします。

家族と同居している場合
家族との話し合いを早めに行い、介護についての希望や財産に関する計画を共有することで、円滑な対応が可能になりますし、将来のトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
介護が必要になる前に、介護施設の選択や介護保険の利用計画などを立てておくことが大変有効な備えになります。
とは言っても、家族構成もそれぞれです。
老夫婦二人だけの世帯と、2世代・3世代同居世帯という構成では、高齢者自身の家庭における立場・立ち位置や生活の仕方も多種多様です。
家族家庭状況と自身の諸事情を考慮しての終活準備になるでしょう。
自分を中心にした終活に限らず、家族メンバーのライフステージやライフイベント、ライフスタイルなども終活を考えるきっかけや要因になりうると思います。
これが次の項に繋がります。

3)終活のきっかけとなるライフイベント

自身の退職や家族の結婚、独立、思わぬ死など、家族の数の分発生しうるさまざまなライフイベントが終活のきっかけになりえます。
それぞれのイベントに応じた計画の例を紹介します。
退職後
(延長されていた)定年退職後やパート・アルバイト等の非正規雇用の仕事をリタイアした場合、いよいよ真剣に終活を考えるべきと感じる人も多いかもしれません。
新しい生活が始まるわけで、時間的余裕が生まれるこのタイミングで、生活再設計や資産管理計画を立てるのもよいかと思います。
旅行や趣味の活動も取り入れながら、豊かで楽しい高齢者生活を実現・実践しながら、終活も並行していくことができればと思います。

子どもの独立、世帯・住居の分離時
子どもの独立や2世帯3世帯家族が世帯を分かち、住居を離れる時も終活を考える機会となりえます。
こうした契機に、遺言書の作成や財産分与や相続について考える必要性を感じる場合も十分考えられると思います。この機会に、家族関係や家族とのコミュニケーションの在り方などを改めて考えるきっかけにしてもよいのではないでしょうか。

入院や大病の経験を踏まえて
健康に不安を感じたときや入院した場合等には、これからの自分の生活をどうするか、残るもの、残すべきものなどについて真剣に考える契機となると思われます。
場合によっては、介護や医療に関する希望を伝えるだけでなく、延命治療の必要の有無や葬儀をどうしてほしいかなどについても家族と話し合う機会が生じるかもしれません。

・配偶者や家族の不幸に直面して
あってほしくない例ですが、配偶者や自身の子どもやその家族に不幸(死や入院)などがあると、自分自身の死について真剣に考えることになるのではと思われます。

以上の例ですべてのケースを想定できるはずはありません。
結局は、一人一人の自覚・意志に拠る終活が個々に実践されることになるのはいうまでもありません。

終活は、一律の手順ではなく、個人の状況やライフイベントに応じた柔軟な対応により取り組むことになります。
そこで必要なのは、介護離職を防ぐためには介護の基本的な知識や関連する法律知識を知り、介護生活に備えること。
そして、介護生活を実践することが大きな負担、ムリを生じさせることなく可能にしておくこと。
終活とは何か、実際にどういうことを行っておくべきか、行っておくのが望ましいかを事前に理解し、その準備・対策となることを時間をかけつつ、できれば計画的に実践していくことが必要ということになります。

次節は、<終活を成功させるための心構え>がテーマです。

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