はじめに
第5ステップは、終活の中でも特に「家族トラブル」と「手続き負担」が表面化しやすい 財産と相続を、実務として整理する回です。
相続は、財産が多い家庭だけの話ではありません。
不動産が1つあるだけでも分け方が難しくなり、さらに 負債(借入・未払い・保証) が混ざると、家族の判断が急に難しくなります。
加えて、疎遠な相続人や所在不明の相続人がいる場合、手続きが止まることもあります。
本記事では、①財産管理の基本(資産の棚卸し)から、②相続対策(相続税・非課税・負債の扱い)、③遺言書と相続手続きの準備、④トラブル回避と契約・信託・後見制度までを、4つの節で統合して整理します。
読むだけで終わらせず、各節末尾のチェックリストで「自分の不足」を確認し、エンディングノート/財産目録/遺言書へ落とし込める形にしていきましょう。
※なお、本記事は、Webサイト・介護終活.com(https://kaigoshukatsu.com)で公開していた、「望ましい高齢生活を送るための終活8ステップ」ー15~18までの第5ステップの4記事」を、重複を整理しつつ統合・加筆修正した“改訂統合版”です。
旧記事は、内容の重複を避けるため、順次、非公開化/リダイレクト/canonical設定などで整理します(検索エンジン向けにも重複を残さない運用を行います)。
「望ましい高齢生活を送るための終活8ステップ」
第5ステップ 財産管理と相続対策の基本(贈与・信託・遺言・トラブル回避)
第5ステップのテーマは、「財産管理と相続対策の基本(贈与・信託・遺言・トラブル回避)」。
以下の4つの節(5-1、5-2、5-3、5-4)で構成しています。
第5ステップ 財産と相続の整理
5-1 財産管理の基本知識
1.財産の整理と管理方法:資産運用と不動産管理
2.生前贈与と資産信託の方法
3.資産贈与・寄付と税制優遇のメリット
5-2 相続対策の基本
1.相続の基本:相続人と相続税の仕組み
2.相続税対策と非課税のポイント
3.専門家による相続アドバイスの活用法
5-3 遺言書と遺産相続の準備
1.遺言書の種類と作成方法
2.遺産相続の流れと必要な手続き
3.遺言執行や相続トラブル対策
5-4 トラブル回避と老後の安心
1.トラブルとリスク回避の対策
2.委任契約や後見人制度の活用
3.財産契約と信託の法的効力とリスク管理
ステップ5-1 終活における財産管理の基礎知識|資産整理から生前贈与・信託まで
高齢期を迎えるにあたり、財産の整理と管理は終活においての重要な課題となります。
適切な資産運用や不動産の管理、生前贈与や資産信託、さらには資産贈与・寄付と税制優遇のメリットを理解し、計画的に実行することで、将来の安心と家族への円滑な財産移転が可能となります。
本節では、これらの基礎知識と具体的な方法について解説します。
1.終活としての財産の整理と管理方法:資産運用と不動産
財産の整理と管理は、終活における重要なステップです。
適切な資産運用と不動産管理を行うことで、将来の生活の安定と家族への円滑な財産移転が可能となります。
以下に、具体的な方法とポイントを解説します。
1)総資産の把握とリスト作成
まず、自身の全財産を正確に把握することが重要です。
現金、預貯金、不動産、株式、投資信託、保険、貴金属、骨董品など、すべての資産をリストアップしましょう。
これにより、資産全体の状況を明確にし、管理や運用の計画を立てやすくなります。
2)資産の種類別整理方法
各資産の特性に応じて整理を行います。
・現金・預貯金:各口座の残高や用途を確認し、不要な口座は解約するなどして整理します。
・不動産:所有する不動産の評価額や利用状況を確認し、必要に応じて売却や賃貸などの活用方法を検討します。
・株式・投資信託:保有銘柄や投資先のリスクとリターンを評価し、ポートフォリオの見直しを行います。
・保険:加入している保険の種類や保障内容を確認し、現在の生活状況に適しているかを検討します。不要な保険の処分も選択肢ですし、反対に認知症保険や民間の介護保険への加入なども検討の余地があるかと思います。
・貴金属・骨董品:市場価値を評価し、相続するか、保管方法や売却のタイミングなどを考慮します。
3)不動産の活用と管理戦略
不動産は大きな資産であり、適切な管理と活用が求められます。
・賃貸:使用していない不動産を賃貸に出すことで、定期的な収入を得ることができます。
・売却:維持管理が難しい場合や資金が必要な場合は、売却を検討します。
・不動産事業会社の設立:家族を役員とする不動産管理会社を設立し、資産を法人化することで、相続税対策や所得分散による税負担軽減が期待できます。
4)資産管理ツールと専門家の活用
資産管理には専門的な知識が必要な場合があります。
留意点の例を挙げました。
・資産管理ツール:家計簿アプリや資産管理ソフトを活用し、資産の状況を一元管理します。
・専門家の活用:税理士、弁護士、ファイナンシャルプランナー、不動産鑑定士など、各分野の専門家に相談することで、適切なアドバイスを得られます。
財産の整理と管理は、将来の安心と家族への円滑な財産移転のために欠かせないステップです。総資産の把握から各資産の整理、不動産の活用、専門家の活用まで、計画的に進めることが重要です。

2.生前贈与と資産信託の方法
生前贈与と資産信託は、終活における財産管理の重要な手段です。
これらを適切に活用することで、将来の相続に備え、家族への財産移転を円滑に進めることが可能です。
以下に、それぞれの基本知識、具体例、注意点、導入手順、活用事例について詳しく解説します。
1)生前贈与の基本知識と意義
①生前贈与とは
生前贈与は、個人が生存中に自らの財産を他者に無償で譲渡する行為を指します。
これにより、相続時の財産総額を減少させ、相続税の負担を軽減する効果が期待できます。
②贈与税の基礎控除と税率
日本の贈与税には年間110万円の基礎控除があり、これを超える贈与には税金が課されます。
税率は累進課税方式で、贈与額が増えるほど税率も高くなります。
例えば、一般贈与財産の場合、200万円以下の部分は10%、300万円以下の部分は15%といった具合です。
③対象となる財産の種類
生前贈与の対象となる財産は多岐にわたります。
現金や預貯金、不動産、株式、債券、貴金属、骨董品、生命保険の受取権などが含まれます。
これらの財産を適切に贈与することで、相続税対策や財産の有効活用が可能となります。
2)生前贈与の具体例と注意点
上記の対象財産の生前贈与の例と注意点を挙げました。
①具体例
・現金の贈与: 毎年、子や孫に対して110万円以下の現金を贈与することで、贈与税の基礎控除を活用し、非課税で財産を移転できます。
・不動産の贈与: 自宅や土地を子供に贈与する場合、評価額に応じた贈与税が課されますが、特定の条件を満たすと特例措置が適用され、税負担を軽減できます。
②注意点
・定期贈与とみなされるリスク: 毎年同じ金額を同じ相手に贈与し続けると、税務署から「定期贈与」と判断され、一度に全額が贈与されたと見なされる可能性があります。
これを避けるためには、贈与の都度、贈与契約書を作成し、贈与の事実を明確にしておくことが重要です。
・贈与税の申告: 基礎控除額を超える贈与を行った場合、贈与を受けた人は翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告と納税を行う必要があります。
3)資産信託の仕組みと導入手順
①資産信託とは
資産信託は、財産の所有者(委託者)が信頼できる第三者(受託者)に財産を託し、特定の目的に従って管理・運用してもらう仕組みです。
これにより、委託者の意思に沿った財産管理が可能となります。
②導入手順
・信託契約の締結: 委託者と受託者の間で、信託の目的や内容を明記した契約を締結します。
・財産の移転: 信託契約に基づき、委託者から受託者へ財産を移転します。
・信託の運用: 受託者は、信託契約に従い、財産の管理・運用を行います。
③メリット
・柔軟な財産管理: 委託者の意思に基づき、柔軟な財産管理が可能です。
・相続対策: 信託を活用することで、相続時の財産分配を円滑に進めることができます。
4)家族信託の活用事例
家族信託の例を挙げました。
①家族信託とは
家族信託は、信頼できる家族を受託者として財産を託し、管理・運用を任せる仕組みです。
高齢者の認知症対策や、障害を持つ家族の生活支援などに活用されています。
②活用事例
・認知症対策: 高齢の親が自宅を家族信託により子供に託すことで、親が認知症を発症しても、子供が自宅の管理や売却をスムーズに行えます。
・障害者支援: 障害を持つ子供のために、親が財産を家族信託で託し、他の家族が受託者として管理・運用することで、子供の生活を安定的に支援できます。
③注意点
・信託契約の内容: 信託契約の内容は法的拘束力があるため、専門家の助言を受け、慎重に作成する必要があります。
・税務上の取り扱い: 信託により財産の所有者が変わるため、贈与税や相続税の課税関係が生じる場合があります。税務専門家に相談し、適切な対応を行うことが重要です。
生前贈与と資産信託は、終活における財産管理の有効な手段です。
これらを適切に活用することで、相続税の負担軽減や、家族への円滑な財産移転が可能となります。
各手法にはメリットと注意点があるため、専門家の助言を受けながら、自身の状況に合った方法を選択することが重要です。

3.資産贈与・寄付と税制優遇のメリット
資産の贈与や寄付は、適切に行うことで税制上の優遇措置を受けられ、相続税や所得税の負担を軽減できます。
以下に、具体的な方法とそのメリットについて解説します。
1)資産贈与による税制優遇策
①定期的な贈与の活用:
日本の贈与税には、年間110万円の基礎控除があります。
この基礎控除内で毎年贈与を行うことで、贈与税を支払うことなく財産を移転できます。
例えば、10年間にわたり毎年110万円を贈与すれば、合計1,100万円を非課税で移転可能です。
ただし、毎年同じ金額を同じ相手に贈与し続けると、税務署から「定期贈与」と判断され、一度に全額が贈与されたと見なされる可能性があります。
これを避けるためには、贈与の都度、贈与契約書を作成し、贈与の事実を明確にしておくことが重要です。
②特例措置の活用:
特定の条件を満たす贈与には、非課税となる特例措置があります。
例えば、住宅取得等資金の贈与に関する非課税特例を適用すると、令和8年12月31日までに父母や祖父母など直系尊属から、住宅を新築・購入・増改築するための資金を贈与された場合、一定の金額まで贈与税が非課税になります。
非課税限度額は、次のとおりです。
・省エネ等住宅の場合: 1,000万円
・上記以外の住宅の場合: 500万円
ただし、この特例を受けるためには、受贈者が贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であることや、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であることなど、一定の条件があります。
2)寄付の種類とその効果
①寄付金控除の概要:
個人が特定の団体に寄付を行った場合、所得税や住民税の控除を受けられます。
寄付金控除には「所得控除」と「税額控除」の2種類があり、一般的な所得水準の方にとっては、税額控除の方が控除金額が大きくなる(節税になる)でしょう。
所得税の税率が高い(収入が多い)方には、所得控除の方が控除金額が大きくなる場合があります。
②寄付先の条件:
税制優遇を受けるためには、寄付先が国や地方公共団体、公益社団法人や公益財団法人、社会福祉法人、認定NPO法人など、一定の要件を満たす団体である必要があります。
通常のNPO法人や一般財団法人・一般社団法人は対象とならないので、気をつけましょう。
3)相続税と所得税の違いと優遇制度
①相続税の基礎控除:
相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があります。
例えば、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円となります。この金額以下の相続財産であれば、相続税は課されません。
②贈与税の軽減策:
前述のとおり、年間110万円の基礎控除を活用した贈与や、特例措置を利用することで、贈与税の負担を軽減できます。
③所得税の軽減策:
寄付金控除を活用することで、所得税の負担を軽減できます。
例えば、認定NPO法人に52,000円を寄付した場合、寄付した金額の一部を、本来支払うべき所得税額から差し引くことができます。
控除される割合は寄付金額から2千円を差し引いた額の40%、このケースでは(52,000円-2,000円)×40%=20,000円です。
したがって、納めるべき所得税は500,000円-20,000円=480,000円となり、所得税の金額が低くなります。
4)非課税枠の有効活用法
①住宅取得等資金の贈与特例:
前述のとおり、住宅取得等資金の贈与に関する非課税特例を活用することで、一定の金額まで贈与税が非課税となります。
この特例は、令和8年12月31日までに適用されるため、適切なタイミングでの実行が重要です。
②教育資金の一括贈与特例:
祖父母などの直系尊属が、30歳未満の孫などに教育資金を一括贈与する場合、1,500万円まで贈与税が非課税となる特例があります。この制度は、令和8年3月31日までの適用となっています。
⇒ 国税庁
③結婚・子育て資金の一括贈与特例:
直系尊属から、18歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚・子育て資金を一括贈与する場合、1,000万円まで贈与税が非課税となる特例があります。この制度は、令和7年3月31日までの適用となっています。
⇒ 国税庁
資産の贈与や寄付を計画的に行うことで、税制上の優遇措置を受け、相続税や所得税の負担を軽減できます。
各種特例措置には適用期限や条件があるため、最新の情報を確認し、税理士等専門家に相談しながら適切に活用することが重要です。

まとめ
終活における財産管理は、将来の相続や家族への負担軽減のために重要なステップです。
まず、総資産を把握し、リスト化することで現状を明確にし、資産の種類別に整理・管理を行います。
特に不動産については、活用方法や管理戦略を検討し、必要に応じて専門家の助言を求めることが有効です。
次に、生前贈与や資産信託を活用することで、相続税の負担を軽減し、円滑な財産移転が可能となります。
これらの手法には特例措置や非課税枠が存在し、適切に利用することで大きなメリットを享受できます。
ただし、各制度には適用条件や期限があるため、最新の情報を確認し、専門家と相談しながら進めることが重要です。
さらに、資産の贈与や寄付を通じて税制上の優遇措置を受けることで、所得税や相続税の負担をさらに軽減できます。特に、教育資金や住宅取得資金の贈与に関する特例は、適用期限が設けられているため、計画的な活用が求められます。
総じて、終活における財産管理は、早期から計画的に取り組むことで、家族への負担を減らし、自身の意思を反映した財産移転が実現できます。
各種制度や特例を最大限に活用するためには、最新の情報収集と専門家の助言が不可欠です。これらを踏まえ、安心で充実した高齢生活を送るための準備を進めていきましょう。
【✔ 財産の棚卸し・管理の“基礎”チェック】
この節の目的は、節税テクニックの前に 「家族が困らない財産の見える化」 を作ることです。まずは“把握できている/できていない”を分けるために使ってください。
・□ 現金・預貯金/有価証券/不動産/保険/動産(貴金属・骨董等)を一覧化する方針を決めた
・□ 口座・証券・保険の「どこに何があるか」を家族が追える形に近づけた
・□ 不動産について、所在地・名義・利用状況(自宅/賃貸/空家)を整理できる
・□ 「負債(ローン・借入・未払い・保証)」も同じ棚卸しに入れる意識がある
・□ 生前贈与・信託・寄付のうち、検討対象になりそうな手段を1つ以上メモできた
・□ 必要に応じて相談する相手(税理士/FP/弁護士等)を想定できる
※“完璧な財産目録”をいきなり作る必要はありません。まずは「漏れている可能性がある分野」を特定し、次回の宿題としてメモするだけで十分です。

(2024/11/18)
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