近未来を生きるα世代とは何か|日経「20億α世代論」から考える道のり

LIFE STAGE

2026年元旦から始まった日経新聞の連載企画「α-20億人の未来」は、世界最大規模となるα世代が、これからの社会のあり方を大きく左右していくことを示しています。
ただし、そこで語られる「未来」は、決して遠い時代の話ではありません。

私が当サイトにとどまらず、他のサイトでも一貫して用いているのは、「未来」ではなく「近未来」という言葉です。
100年も200年も先のことを想像することも考えることも、さほど意味があるとは思えません。
しかし、25年後までの時間は、今日・明日の延長線上にあり、想像の世界ではなく、現実として手触り感を持つことが可能と思う時間だからです。
25年1単位の人生を、幸運にも3回も繋いでくることができたこともそう考える要因です。

世代論もまた、単なる年代表や分類ではなく、
人生の時間軸、家族の連なり、社会との関係の中で捉えてみる必要があるでしょう。
本記事では、α世代を「遠い未来の主役」としてではなく、すでに私たちの日常に存在する世代として見つめ、その近未来を、一応先行する世代として、共に考えていきます。

また、「世代論」は、他の世代間と比較対象されて論じられたり、しばしば、「次の世代はこうなる」という未来予測としても語られます。
しかし本来は、世代同士が時間の中で連なり、互いに影響し、共生し合う関係でもあります。
本記事では、α世代を単独で切り出すのではなく、上の世代との連続性の中で整理します。

本サイトでは、主カテゴリーの一つに「LIFE STAGE」を配置し、そのサブカテゴリーとして「年齢・年代・世代」を設定しています。
そこで扱うのは、制度論や思想論ではなく、「人生の時間」「家族の時間」「生き方・働き方・考え方の変化」等です。他のサブカテゴリーには、結婚、家族、子育て・教育、ソロ・おひとりさま、高齢者生活、そして介護、終活などを含みます。
そこでは、世代論もまた、これらの種々のライフステージを横断する視点としても位置づけられるのです。

日経の特集記事では、α世代20億人として、膨大な可能性を持つ世代と位置付けています。
しかし、人口減少社会、少子化社会に歯止めが効かない日本社会では何人のα世代がいるのでしょうか?
同世代が「2010〜2024生まれ」として、約1,370万人。日本の総人口の約11%です。
20億人口に比すると、なんと0.7%、1%にも満たないんですね。
少ないから悲観すべき、という気は全くありません。
むしろ、非常に可能性に満ちた、貴重な存在というわけです。

因みに、私も昨年仲間入り?した75歳以上後期高齢者世代人口は、約2,080万人で、総人口比約17%を占めています。710万人も多いんです。
責任の重さ、感じませんか? 何の責任かは・・・。

一応、その実態を知ったうえで、日経記事の概要・要約から始めたいと思います。

日経が示しているα世代20億人社会は、人口が増加を続ける100億人グローバル社会を想定してのものです。
先述したように、日本社会は、人口ではすでにピークアウトしており、その現実はあまりこの連載の中では触れられていません。
但し、特徴とする世代傾向は、いかにも日本的な視点で捉えられていることには、若干違和感を持ちつつ、考察を進めていきます。
本節では、3つの観点から同連載を区分して整理していきます。

この項は、1月1日元旦に掲載された以下の3記事を、連載の序論と位置付けて要約しました。
やや事務処理的な列記スタイルになっています。

α-20億人の未来(1)頂を創れ 分断・格差、突破託す  – 日本経済新聞  (2025/1/1)
自由な世界、自ら描く α世代1123人の声  技術に期待 気候変動に危機感 – 日本経済新聞
人類100億時代、命運握る  所有より体験 違い寛容 – 日本経済新聞

①「頂を創れ」:超巨大世代が“再設計”を担う

α世代の定義とスケール
2010~2024年ごろ生まれ。
世界で20億人超という“史上最大級”の人口規模で、人口が約100億人へ近づく時代と、その後のピークアウト(減少局面)までをまたいで社会の中核になる世代として描かれます。
AIが“道具”ではなく“前提”
3Dプリンター×AIで人工心臓の試作に没頭する高専生の例は、「テックが生活の外側にある」のではなく「生活の内側に埋め込まれている」世代像を象徴しています。
企業側の危機感と適応
パナソニックが“14歳人格のAI”を使ってα世代の思考を解析し、事業変革に生かそうとするのは、次の巨大市場への適応が企業の生死を左右するという焦りの反映です。
希望と不安が拮抗
未来が「明るい/暗い」が拮抗しつつ、明るい理由の中心に「科学技術の進化」があり、AIの日常利用・信頼が高い、という“技術楽観と課題意識の同居”が示されます。
国家レベルのAI人材競争
UAEやサウジが脱石油を見据えAI教育・投資を国家戦略として進めるなど、α世代は個人だけでなく国家の設計対象にもなっています。

結論としての問い
「自由で豊かな世界を、このまま“引き渡すだけ”で維持できるのか」。
α世代は民主主義・資本主義が生んだ矛盾(格差、分断、排斥、気候変動)を“更新する側”として位置付けられています。

②「自由な世界、自ら描く」:α世代1123人調査が示すリアル

未来観
「明るい」51%/「暗い」49%。明るい理由の主因は技術進歩、暗い理由の主因は気候変動。
課題認識
環境問題が最上位で、次いで「AIなど技術の悪用」「戦争や対立」。技術への期待が強い一方で、技術リスクも現実に見ています。
“大人になる”への前向きさ
77%が楽しみと回答。社会課題が多くても、成長や人生への抵抗感が比較的小さい。
長寿志向と“不老不死”の揺れ
長寿を望む声が強い一方、不老不死には賛否が割れ、社会的孤立や取り残され不安も語られます。
AI活用は「調べる」が主、相談は限定的
調べものや買い物でのAI利用が高く、悩み相談は一定あるが、人生の核心は信頼できる人へ、という“使い分け”が見える。
リアルとデジタルの境界が薄い
「リアルが自分らしい」43%に対し、「違いを感じない」38%。生活世界が“二層”ではなく“混合”に近づいています。

③人類100億時代、命運握る:α世代の価値観と消費の癖

Z世代より“さらに”デジタルが初期条件
Z世代が「ネット普及とともに育った世代」だとすると、α世代は「SNS・動画・スマホが最初から存在する世界に生まれた世代」として整理されています。
価値観
多様性・持続可能性・グローバル視点を重視し、文化差への寛容さを受け継ぐ。
消費行動
所有より体験、ブランドよりタイパ(時間対効果)。リアルの口コミ、オンラインレビュー、SNS、AIを“壁なく混ぜる”情報行動も特徴として示されます。
地政学的な人口比重
アフリカ比率が高まり、欧州・東アジアが相対的に下がる。ナイジェリアのような若年人口が厚い国が“人材供給地”として注目されます。

以上の3つの前提のもとに、1月10日までの同連載第1フェーズの記事群で取り上げたα世代の特性を象徴する8つの事例の要約を次に紹介します。
※以下がその8記事です。なおリンク記事は、有料会員がアクセスできます。ご了承ください。

α-20億人の未来(2)米国で育つ「分断の申し子」  敵視の社会、共感でつなぐ – 日本経済新聞 (2025/1/2)
α-20億人の未来(3)「1日5万円」高嶺のディズニー  経済格差、仮想空間が解放 – 日本経済新聞 (2025/1/3)
α-20億人の未来(4)さらば秀才、五感で学べ  AI時代、カラダこそ資本 – 日本経済新聞 (2025/1/5)
α-20億人の未来(5)新MADE IN JAPAN トヨタ×外国人、挑む融合  – 日本経済新聞 (2025/1/6)
α-20億人の未来(6)中国覆う「虚無スラング」  成熟世界、探る創意の旗手 – 日本経済新聞 (2025/1/7)
α-20億人の未来(7)情報過多、人間の限界超す  「チョイパ」、政治すら超進化 – 日本経済新聞 (2025/1/8)
α-20億人の未来(8)「ありがとう」報酬に上乗せ  「共感経済圏」へようこそ – 日本経済新聞 (2025/1/9)
α-20億人の未来(9)α世代の過半、人生100年超  老いも制度も壁越えろ – 日本経済新聞 (2025/1/10)

①分断の申し子:敵視社会を“共感”でつなぐ試み

米国の分断環境が“デフォルト”:陰謀論・偽情報が拡散しやすい中で育つα世代は、「信じられる情報が消える」世界を経験している、と描かれます。
過激化の低年齢化:オンラインを介した勧誘・極端思想の取り込みが、少年を“黒幕”にしてしまう事例が示され、分断が治安・暴力へ接続する怖さが強調されます。
解決の方向性=“脱・二択”:右派/左派/中道の3パターンで答える「非分極化GPT」のように、論点を単純化しない仕組みで、価値観戦争から距離を取る試みが提示されます。
ブロードリスニングと市民AI:災害時の党派対立を越えるため、一人ひとりの声を丁寧に拾い計画に反映する手法が紹介され、“対立を再生のエネルギーにする”見立てが語られます。

②遊びの格差:高嶺のディズニーと、仮想空間の解放

リアル体験がインフレで遠のく:テーマパークの高価格化により、家族の「時間をお金で買うか、体力で買うか」という構図が生まれ、来場構成の変化(子どもの比率低下)が示されます。
娯楽格差は“文化の格差”になりうる:遊びは創造や競争を通じて文化・政治・科学の発展を支えるという視点から、遊びの格差が社会の進歩を妨げるリスクが語られます。
デジタル空間が“機会均等”の受け皿に:ロブロックスのような入場無料の仮想空間では、AIが制作コストやスキル障壁を下げ、アイデア中心で創作・参加が可能になる。
“自分らしさ”の場が二元論ではない:リアル優位は残るが、デジタルとリアルの差を感じない層が迫っており、往復運動が格差緩和の糸口になりうる、という整理です。

③さらば秀才:AI時代は“カラダ”と非認知能力が資本

知能の競争はAIに寄る:生成AIが高度化するほど、「知識の暗記・正解当て」型の優位は薄れる。
教育の焦点が“動機・欲求・実感”へ:AIは膨大な知識を返せても「生きたい」という動機を持たない、という比喩(薄皮まんじゅう)が示す通り、幸福や目的を“実感”として育てる領域が重視されます
共感・対話の訓練:学校内の“法廷”のように、事実認定・論理だけでなく、相手の気持ちを理解し問題解決へ向かう力が、AI時代の土台とされます。
手を動かして現場で学ぶ:高専生のプロトタイプ文化(材料を集めて作る)が、AIを使いつつも“現場で課題を掴む”学びとして位置づけられます。

④新MADE IN JAPAN:トヨタ×外国人で“融合”を試される日本

労働力不足が“産業存亡”の水準に:外国人労働者なしでは成り立たない産業が増え、将来は国内生産維持に必要な外国人比率が大幅に上がる、という危機感が語られます。
大手の採用抑制という旧バランスが崩れる:サプライチェーン維持のために大手が“暗黙の遠慮”をしていた構図が転機を迎え、産業ピラミッド上部まで外国人に頼る可能性が示されます。
共生の条件:保見団地の文脈からは「働かせるだけで切り捨てれば来ない」という、定着・尊厳・生活基盤の重要性が浮かびます。
α世代の役割:身近に外国人がいる環境で育つことで、共生への抵抗感が小さく、“融合から新しい日本の生産”を作る担い手になる、という期待が置かれます。

⑤中国を覆う虚無:成熟社会で“創意の旗手”を探す

“諦め・冷笑”の言語化:スラングの氾濫が単なる流行ではなく、社会の停滞感・投げやりさを映す兆候として扱われます。
上の世代(Z世代)の影響:スマホと動画SNSへの没入、過当競争の疲弊、「頑張っても報われない」感覚がα世代にも降りてくる構図が示されます。
低成長・高失業が見通しを曇らせる:若年失業率の高さや潜在成長率低下見通しが、“努力の物語”を弱める背景になります
活力の再設計=実業回帰×デジタル:「新農人」のように、現場(農業など)にデジタル技能を持つ若者を投入して新しい価値をつくる試みが、成熟時代のエンジンとして提示されます。

⑥情報過多と選択の進化:「チョイパ」とAI政治

情報過剰が“自由”を重荷にする:データ通信量の急増と、過剰情報がもたらす経済損失の推計を背景に、「選択の最適化」が社会課題化します。
チョイパ(選択のパフォーマンス):AIが対話で要望を抽出し、選択肢を絞り込むことで、意思決定の質と効率を上げる発想が中心です。
AI時代のリテラシーは“検証力”:AIの回答を別AIで検証する、複数AIに同質問を投げるなど、“使いこなす側”の行動規範が示されます。
政治への応用=二択から多選択へ:多数の意見をAIで集約し、政策の選択肢そのものを増やす試み(ブロードリスニング+選択肢生成)が、分断と意思決定の遅さを乗り越える道として描かれます。

⑦共感経済圏:ありがとうが“報酬”になる世界

資本主義の欠けた部分を補う仕組み:助け合い・気配り・支援といった“見えにくい貢献”を、投げ銭やポイントで可視化し、給与に上乗せする事例が紹介されます。
競争より仲間・成長・貢献:若者が仕事で重視する順位に「競争」が低いことが示され、価値観が“勝ち負け”から“関係性と意味”へ寄っていることが示唆されます。
学びでも共感が回る:フィールドワークでコインをやり取りし、教える/教わるを循環させる事例は、経済=貨幣だけではない“信頼の回路”の実験として読めます。

⑧人生100年超:不老社会と制度の“壁”を越える

身体拡張が現実になる:脳と機械の接続、バイオ3Dプリンターなど、寿命と身体能力の前提を揺さぶる技術が具体例で語られます。
長寿=幸福とは限らない:α世代は「長く生きたい」だけで突き進んでいない。取り残され不安や、社会制度の歪みへの直感が混じる。
制度の再設計が不可避:年金・医療財政・人口増・食料など、現行制度が想定していない“長寿の社会”に向け、早期から改革の覚悟が必要だと結ばれます。
鍵は健康寿命:健康寿命と平均寿命のギャップ縮小が、本人の幸福と財政の双方に効く、という整理です。

この連載が一貫して描くのは、α世代が“新しい時代の若者”というより、社会のOSを更新せざるを得ない世代だという位置づけです。
人口規模は20億人超。人口が増え切ってから減り始める転換点を、AI・生体技術・仮想空間・情報爆発と同時に経験する。
従い、だから論点は「何を学ぶか」だけでなく、何を前提として社会を組み直すかに移ります。
そこでの「前提」とする課題と組み直しの手段との組み合わせは、次のように整理できます。

分断×AI:分断は“情報環境の設計ミス”として深刻化し、AIは分断を煽るリスクであると同時に、熟議・合意形成を拡張する道具にもなる。
格差×仮想空間:リアルの体験が値上がりで遠のく一方、仮想空間とAIが参加障壁を下げ、創作や遊びの機会均等を作り得る。
教育×身体性:知能の優位はAIに寄りやすい。だからこそ“動機・感情・共感・身体”が教育の中心に戻る。
労働×共生:人材不足が構造化する日本では、外国人との共生は倫理の話にとどまらず、産業と生活の前提条件になる。
寿命×制度:長寿化・不老社会は夢ではなく制度改修の圧力として迫り、健康寿命の延伸が経済と幸福をつなぐ基盤になる。
経済×共感:貨幣だけで測れない貢献を回す“共感経済圏”は、競争中心の資本主義の補完として現実の職場や学びに入り始めている。

以上見てきたα世代が生きていく社会とどんな関係性を持っているか。
その前提となる特徴を再確認します。

α世代は「最大人口世代」として生まれる世界最大人口世代として生まれるα世代

日経連載が繰り返し強調しているのは、α世代が世界で20億人を超える最大人口世代になるという点です。
これは単なる人口規模の話ではなく、消費・教育・労働・政治の中心、すなわち社会の設計思想そのものが、否応なくこの世代に移行し、この世代を中心に再編されていくことを意味します。

技術が「選択肢」ではなく「環境」である世代|「デジタルネイティブ」では足りない世代

Z世代がスマートフォンやSNSのデジタルネイティブであったのに対し、
α世代は、AI、生成技術、仮想空間、アルゴリズムによる推薦や評価が、最初から環境として存在し、組み込まれた環境で育つ世代です。
検索・判断・評価の多くを、人ではなくシステムが担う社会が前提になります。
技術は「使うもの」ではなく、「前提条件」になっていると言えます。

不安定さが常態化した社会で育つ

日経記事では、格差、分断、気候変動、地政学リスクといった不安定要素が「一時的危機」ではなく、常に存在する背景条件・恒常的な背景として描かれています。
α世代は、安定した社会を失うのではなく、最初から不安定な社会を前提、通常として受け入れ、生きる世代とするのです。

α世代とは何か(暫定的定義)α世代とは何か──一言で言えば

以上の前提を受け止めることで、α世代とは、
完成された社会を引き継ぐ世代」ではなく、未完成で更新を前提とした社会を生きる世代
だと言えるでしょう。

前節の総括を受けて、本節では、X世代・Y世代(ミレニアル)・Z世代・α世代 という比較軸を用いて、世代ごとの「前提(育った環境)→強み→弱点(リスク)→社会的役割」が見える形で整理します。
一応、仮説ではありますが。

国・研究機関での世代定義には、年幅に揺れがあります。ここでは一般的に多用される目安を示しています。
X世代:概ね 1965〜1980年ごろ生まれ
Y世代(ミレニアル世代):概ね 1981〜1996年ごろ生まれ
Z世代:概ね 1997〜2012年ごろ生まれ
α世代:概ね 2010〜2024年ごろ生まれ(あなたの要約対象記事の定義に合わせる)
※Zとαは年次が重なる定義もありますが、今回の連載は「α=2010〜24年生まれ」を採用しているため、そのまま踏襲します。

次に、ここでは、社会の持つOS、基本的機能が進行するシステムについての各世代の立ち位置を整理してみます。
まず、テクノロジーについて。
次に、社会課題全般についてという視点です。

世代位置づけ・経験強みリスク
X世代アナログ標準で育ち、成人後にPC・ネットを導入現場感、調整力、既存制度の運用力情報過多・AI時代の速度に疲弊しやすい
Y世代PC・携帯・ネットの普及と同時に成長。Web・SNSを生活に取り込む過程を経験デジタル移行の橋渡し役、ツール適応力成果主義と不安定化(雇用・住宅・将来不安)を真正面から被弾
Z世代スマホ・SNSが初期条件。情報とアイデンティティが強く接続発信力、課題の可視化、価値観多様化への感度分断・炎上・アルゴリズム最適化の罠
α世代SNS・動画に加え、AIが生活インフラ化した環境で成長(連載の主張)AIを「道具」ではなく「相棒・補助脳」として扱える前提判断の外部化リスク/情報の真贋を見抜く訓練が必須(連載⑦)

世代社会課題との関係性・役割
X世代制度の中で働き、組織や地域を回してきた「運用者」。
分断・格差を“結果として引き受ける”局面が多い
Y世代グローバル化・新自由主義的競争・景気停滞・雇用不安定化を背景に、
「努力しても報われにくい」を体験しやすい世代(中国編の“親世代”とも重なる)
Z世代気候危機・多様性・格差・分断を、
問題として言語化し、可視化し、圧力をかける役割が大きい
α世代人口100億ピーク・長寿化・AI超進化を同時に抱える世代。
「問題に気づく」だけでは足りず、
制度・市場・教育・意思決定の仕様そのものを書き換える必要がある――これが連載の核心

次に、先述の日経の連載ごとの主課題についての世代別の立ち位置・関係性についての整理です。
一覧形式にしました。

連載テーマX世代Y世代Z世代α世代
A. 分断(連載①)旧来メディア・地域共同体という「共通土台」の感覚が残る一方、オンライン分断への適応が課題SNS拡大期を通過し、分断が形成されていく過程(フィルターバブル化)を体験分断が日常景観。政治・社会参加もSNS経由で、アルゴリズム影響が強い分断は「空気」として存在。非分極化GPT、市民AI、ブロードリスニングなど、分断前提で合意形成を再設計する可能性
B. 格差と「遊び」(連載②)リアル娯楽が相対的に安価だった時代感覚を持ち、価格上昇の衝撃が大きい家計制約・子育てコストを背負い、娯楽格差を家庭問題として体験リアル高コスト化を前提に、サブスク・無料ゲーム・コミュニティへ重心移動ロブロックス等の仮想空間で、AIにより制作障壁が下がり、「遊び=参加・創作」へ転換。入口段階で格差を緩和し得る
C. 教育(連載③)学歴・偏差値中心の成功モデルを知る世代学歴競争の末期〜転換期を経験し、「勉強→就職→安定」への信頼が揺れた正解の揺れを前提に、非認知能力・探究学習の潮流と接続AIが知能面で優位になり得る前提で、五感・身体・共感・動機が資本になる転換を幼少期から実装する世代
D. 労働力不足と外国人共生(連載④)管理職・中核人材として、現場の人手不足を直撃で受ける採用氷河期/国別格差も含め、労働市場変化を個人の人生として背負う多文化環境に比較的慣れ、共生への心理抵抗は低め学校段階から多文化が日常化し、「融合から新メードインジャパン」を担う土台世代
E. 成熟社会の虚無(連載⑤)成長の物語を信じて努力してきた分、停滞への失望が大きい同上(努力と報酬の乖離を強く体感)停滞が当たり前で、生活防衛・コスパ志向が強まりやすい虚無に飲まれるリスクと同時に、「実業回帰×デジタル(新農人)」など再起動の担い手になる可能性
F. 情報過多と選択(連載⑥)情報洪水を後から浴び疲れやすい一方、熟考・比較の筋力を持つ場合あり情報爆発の移行期を経験し、SNS疲れと効率化の両方を知るアルゴリズム最適化環境で生き、選択の誘導を受けやすいAIと二人三脚で「チョイパ(選択の性能)」を高める設計が標準化し得るが、検証力欠如の危険も
G. 共感経済圏(連載⑦)評価軸は賃金・肩書・成果が中心成果主義の圧を受けつつ、コミュニティ・共感価値にも敏感意味・納得・心理的安全性を重視し、共感の可視化に親和感謝や支援が回る仕組み(トークン・ポイント)が自然化し、資本主義を補完する回路を実装
H. 長寿化と制度(連載⑧)年金・医療制度の制約に最も早く直面負担増と給付不安を長期で背負い、制度持続性への懐疑が強い長寿前提でキャリア・生き方の再設計が必要不老社会・サイボーグ技術まで含む前提崩壊の時代を生き、制度根本改修の当事者世代

以上から、少々乱暴ですが、世代別の特徴を簡潔にまとめました。

X世代:旧制度を回しながら崩れを止血する「運用・修復」世代
Y世代(ミレニアル):移行期の痛みを背負い、新旧を接続する「橋渡し」世代
Z世代:課題を可視化し、価値観の更新を迫る「問題提起・圧力」世代
α世代:AI・長寿・人口ピークの同時進行下で、社会の仕様を組み替える「再設計」世代

それでは、次に、各世代の関係について、考えてみましょう。

α世代を理解するためには、その直前の世代を抜きに語ることはできません。

Y世代:制度のほころびを体感制度が機能していた記憶を持つ最後の世代

Y世代(ミレニアル世代)は、成長期において「努力すれば報われる制度」を部分的に体験しています。
言い換えれば、「まだ機能していた制度」を見てきた一方で、社会に出る過程でその持続可能性に疑問を抱いた世代です。
しかし社会に出る過程で、その前提が揺らぎ始めていることを実感しました。

Z世代:違和感を可視化・共有した世代

Z世代は、制度の矛盾や社会の不公平を「当たり前のもの」として受け取りつつ、それを言語化し、可視化する力を持ちました。
SNSを通じて、違和感や不公正を共有することが、社会的行動の一部になりました。
不公正を「見えないままにしない」感覚は、この世代の大きな特徴です。

Y・Z世代がα世代に残した社会

Y世代は「疑問」を、Z世代は「可視化」を社会に残したとされています。
α世代は、その上に立ち、「では、どう生きるか」「どう組み替えるか」を問われる世代です。
すなわち、疑問が露出した社会を前提に生きる最初の世代になります。

アナログからデジタルへの断層を越えた世代

X世代は、社会の前提条件が大きく切り替わる過程を実体験として知っています。
仕事、教育、家族モデルが「絶対」ではなくなる過程を通過してきました。

一本道の人生モデルを信じきれなくなった経験

この世代にとって人生は、一本道の人生モデルが揺らぎ、計画通りに進むものではなく、途中で進路を変えたり、選択を修正したりすることが珍しくなくなった時代を通過してきました。
この感覚は、子育てにも自然に反映されています。
そのため、α世代に対して、
「この道を選べば安心だ」と言い切ることはできません。
一方で、やり直しや再設定が可能であることも、経験として理解しています。

α世代を育てる親としての現在地

α世代を育てている親世代の多くはX世代です。
この世代は、アナログからデジタルへ、安定から不確実性へと、社会の前提が切り替わる過程を実体験として知っています。
「これが正解だ」と言い切れない一方で、やり直しが可能であることも知っている。
X世代の親は、その両義性を抱えながらα世代と向き合っています。

・その経験が子育てに与える影響

この曖昧さ、不確実さこそが、α世代を育てる家庭の現実です。
過剰に理想化することも、過度に悲観することもなく、
試行錯誤を続けながら子どもと向き合っている家庭が多いのではないでしょうか。
α世代に対して、「これが正解だ」と言い切らない姿勢。
一方で、社会の不確実性を知っているからこその不安。
X世代の親は、その両方を抱えながら子育てをしています。

家庭努力に委ねきれない理由

教育、子育て、デジタル環境、地域との関係は、すでに個々の家庭では設計できない領域に入っています。
α世代の育成は、明確に社会的課題です。

「競争させる社会」から「試せる社会」へ

α世代に必要なのは、早期選別や過度な競争ではなく、試行錯誤とやり直しが許される環境です。
重要なのは、α世代を「強い個人」に育てることではありません。
不確実な社会の中で、試し、失敗し、やり直すことができる余白を、社会として残すことです。

親世代を孤立させない支援の重要性

先に述べたように、α世代の成長を、家庭の努力だけに委ねることには限界があります。
それ故に、子どもを支えるためには、育てる側が孤立しないことが前提になります。
α世代支援は、親世代支援と切り離せません。

典型的な親子間のギャップを考えるとAI社会の現実における格差があります。
α世代は、AIが既に日常生活に深く入り込み、AIエージェントや超知能が現実化している世代です。
一方、その親世代であるX世代は、企業において初期的状況においてもAI格差が広がりつつあります。
従い、将来に対する仕事・働き方の保証という側面での不安感を持つ世代にもなってきています。
そこで親に子に対してAI社会での望ましいあり方などをアドバイスしたり、支援するということは難しいですね。
反対に、子に習うべき状況になってくるわけです。
これは、個人的責任の域を超えて、社会的課題となる兆しでもあります。

私は1950年3月生まれで、昨年後期高齢者世代入りし、今年で76歳です。
3人の息子たちは、それぞれ1974年、1976年、1980年生まれ。全員X世代。
就職氷河期世代にも属するわけですが、それぞれ自分の進むべき道を選択したり、切り拓いたり、夢破れ別の道を再設定したり、とさまざまです。
3人とも結婚し、子どもを2人、3人、4人と持ち、私たち夫婦(妻は1学年上)には9人の孫が。
孫たちは、先頭が今年18歳で、一番下は、今年3歳。
1994年生まれの18歳の二人(双子男子)のみZ世代の最後発組に入り、他の7人全員がα世代に属していることになります。
離れて暮らしてはいますが、彼らの日常生活の一端を、時折り垣間見ることで、デジタルネイチャーとしてのこれからを成長過程で確認することができるかと思います。
それも非常に興味深いことと楽しみにしています。

私が運営するWEBサイト、ONOLOGUE2050、LIFE STAGE NAVI、シン・ベーシックインカム2050論各サイトは、「2050年の望ましい日本社会」のあり方を構想・希求することを目標としてのもの。
生きていれば2050年には100歳。
ここまで75年間生きてこれたことを考えれば、25年四半期先のことや25年単位で考えることは、そうそう無理なこととは思っていません。
息子たちは25年後には私たち夫婦と同じ年齢・年代に。
そして何より、Z世代の孫2人は、43歳。
α世代の孫グループ7人は、上が38歳で、最も下が28歳。

100歳、70代、40代、30代。
2050年は、空想ではなく、年齢表として見える近未来です。

彼らが、どのように成長し、どんな社会に生き、どんな社会生活を送っていくか。
世代論で比較される時代ごとの社会的環境・社会的経済的条件を受け止め、あるいは創造していくのか。
比較的身近なところ、あるいは関係性を持つ状況・条件下での3つの家族と、いくつかは派生する新たな家族の成長や動向を、折に触れ見ていくこと、見続けていくこと。
これも、関心を持って見守りたいものです。

そして願わくば、彼らにとっても望ましい社会がこれから持続的に、形成・創出できるように。
先行し、近々完全な世代交代期を迎える立場ではあっても、考察や提案を行っていきたいと思うのです。
彼らの成長を眺めつつ。

結びに当たって、確認を兼ねて、まず、前述の日経連載の初めに見ることができた、各世代の特徴比較を一覧表にしました。

世代生年目安主な特徴
X世代1960~1980年頃・購買力が高い・情報源の中心はテレビ・新聞・雑誌・自立心が強い
Y世代1981~1995年頃・「モノ」よりも「コト」消費を重視・バブル崩壊や就職氷河期など不況期を経験・安定志向が強い傾向
Z世代1996~2009年頃・ブランドへのこだわりが比較的弱い・「自分らしさ」を重視・承認欲求が強く、「どう見られるか」を意識
α世代2010~2024年・デジタルネイティブ・多様性・グローバル視点を重視・タイパ志向、トキ消費への意識が高い

最後に記述された「α世代」も、25年もすれば、その後に続く、別名の世代に先行する世代と位置付けられます。
いや、もしかしたら「α世代」自体が分割され、顕著な違いが要因となって2分されているかもしれません。

正解のない社会を前提にする力

α世代の近未来には、完成された正解は用意されていないことは当然です。
むしろ、めざす目標や仮の答えを持ち、検証し、更新し続ける力が求められる時代になります。
これは、実はα世代に限ってのことではなく、すべての世代に共通のことでもありました。

AIと共存し、距離を取る感覚

AIやデジタル技術を使いこなす能力だけでなく、
それらと距離を取る感覚も重要になります。
団塊の世代の実社会人生の初期は、当然インターネットはなく、ワープロとフロッピーディスクが使用され始めた時期でした。
そして、ネット社会が進行し、今はAI社会が現実のものとなっています。
α世代の生活は、それらが水と空気(こんな例え自体が団塊世代的ですが)のように、目には見えないけれど、当たり前になっているわけです。

意味と関係性を軸にした生き方

ただAI社会がもたらす効率や成果の多くは、実際には可視化されていることが多いでしょう。
しかし、その評価だけではなく、それらの意味や関係性をより重視する生き方が、一層自然なもの、確認を求められることになるかもしれません。
その時点とこれから、そして近未来を考える上で、それらをデフォルトあるいはデファクト・スタンダードとしてよいかどうか。
その決定や更新・変革が、α世代にとって欠かせない課題になっていくでしょう。

先行する世代や社会ができることは、彼らの生き方を決めることではないことも当然です。
選択肢を狭めず、壊さずに残すこと。
そして見守り、見届けること。
それが、近未来を生きるα世代への、最も現実的な関わり方だといえるでしょうか。

グローバル社会における20億人の同世代に対して、日本の社会のα世代は、何が共通し、何が異なるのか。
その強みと弱みは何か。
それらは、ここまで見てきたように、自ずと前提となる日本社会の種々の前提条件と実情・実態が反映されたものになります。
いきなり、彼らにそのために有効な解を自ら求める役割を課すことは、先行する世代の責任回避です。
しかし、そうした先行世代の姿勢や行動は、間違いなくα世代が観察し、評価し、自らの課題に置き換えて、いずれ臨むことになるでしょう。
もう間もなくのことのような気がします。

世代論は、優劣を競うためのものではありません。
当然のことですね。
また、どちらが恵まれていて、どちらが恵まれていない不幸な世代だ、と論じることにもほとんど意味がないと考えています。
現在と近未来という現実的な時間の中で、
世代同士がどう関係性を持ち、何をどう継承していくかを考えるための枠組みでもあると考えます。

当サイトLIFE STAGE NAVIでは、人生と家族の時間、人と社会の関係のあり方について、世代論の視点からも見つめていきます。
そして別の場・別サイトである ONOLOGUE2050 では、
こうした生活実感を土台に、「シン日本社会2050」というより包括的な構想、制度やシステムへと議論を進めていきます。

α世代の近未来は、まだ定まっていません。
だからこそ、考え、語り、見守り続ける価値があるのだと思います。
願わくば、当サイトが2050年に向けて取り組む、望ましい日本社会の構築・構想化が、α世代にとっても望ましい政策であり、世代をつないで、共にその実現をめざすパートナーに、一時期でも重なることができれば。
こんな嬉しいことはないですね。

今後、関係する他サイトも含め、各世代に関係する多種多様なテーマで、考察・研究・提案を進めてまいります。
⇒ ONOLOGUE2050
⇒ ベーシック・インカム2050論

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