離婚が問いかける結婚制度の本質|ひとり親世帯問題から考える「私的福祉世帯社会」:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー4

LIFE STAGE

阪井裕一郎氏著『結婚の社会学』(2024/4刊・ちくま新書)をベースにして【『結婚の社会学』から、現代の結婚を考える】シリーズを構成しました。
⇒ マッチングアプリ婚活のリアル:デジタル時代の結婚をデータと社会学で読み解く|『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー1 – Life Stage Navi (2026/1/15)
⇒ デジタル化する婚活、これからの期待と不安|『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー2 – Life Stage Navi (2026/1/16)
の2記事の後、1カ月間が空きましたが、前回以下を公開。
⇒ 結婚の常識を疑う|生き方の選択肢として結婚を再考する:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー3 – Life Stage Navi (2026/1/17)

今回は、同書の<第3章 離婚と再婚>を受けての考察です。
以下が、第3章の構成です。

第3章 離婚と再婚
1. 離婚の変遷
2. 家と離婚ー戸籍が汚れる
3. 親権と「姦通罪」
4. ジェンダーの視点で見る離婚
5. 退出と発言
6. 再婚とステップファミリー
7.「普通」から自由になる

この中の7つの文脈で本稿を企図したのではありません。
上記の1.から3.までは、例によって「離婚」の歴史を振り返っています。
主として、家制度と離婚の関係や男尊女卑の視点で、江戸、明治そして戦前と「離婚」の事情と趨勢を振り返ります。
しかし、その歴史を辿り、学習しても、現代・現在の離婚をめぐる諸課題は、解決できません。

まず、わが国の離婚の実態を確認しておきましょう。

離婚の実態|離婚数とその特徴

2024年1年間の離婚件数は、185,895組。
これは、厚生労働省「人口動態統計」によるもので、全国の市区町村に提出された離婚届の受理件数です。

離婚件数と離婚率の推移

直近2024年(令和6年)の概数と、10年前の2014年(平成26年)を比較すると以下のようになります。

項目2014年(10年前)2024年(直近・概数)変化の傾向
離婚件数約22.2万組約18.6万組約3.6万組の減少
離婚率(人口千対)1.771.55低下傾向
婚姻件数約64.4万組約48.5万組約16万組の大幅減
データが示す離婚の特徴

総数の減少: 10年前と比較すると、離婚件数は年間約4万組ほど減っています。しかし、これは「夫婦仲が良くなった」というよりは、結婚する人(分母)が激減していることが主な要因です。
「3組に1組」の正体: 婚姻件数に対する離婚件数の比率で見ると、長らく「約35%(3組に1組)」という水準で横ばい、あるいは微増傾向にあります。
熟年離婚の増加: 全体の件数は減っていますが、「同居20年以上」の熟年離婚の割合は上昇しており、2022年には過去最高(離婚全体の約2割強)を記録しました。

離婚原因と特徴

裁判所の司法統計(婚姻関係事件数 申立ての動機別)によると、離婚の理由は10年前から大きな順位変動はないものの、「精神的虐待」の存在感が増しています。

男女別の主な要因(上位)
順位夫(男性)の理由妻(女性)の理由
1位性格が合わない性格が合わない
2位精神的に虐待する (モラハラ)生活費を渡さない (経済的DV)
3位異性関係 (不倫)精神的に虐待する (モラハラ)
4位家族親族と折り合いが悪い暴力を振るう (身体的DV)
5位浪費する異性関係 (不倫)

男女共通の第1位は、上表にあるように
性格が合わない(性格の不一致): 10年前も現在も、圧倒的1位です。包括的な理由として使われることが多い項目です。
しかし、より以上に問題なのは、
生活費を渡さない (経済的DV)
精神的な虐待 (モラハラ)
暴力 (身体的DV)
です。

結婚に付随するリスク|ゴール、幸福とは限らない

即ち、結婚がすべての夫婦、家庭・家族に幸せをもたらすとは限らない。
結婚してみて、初めて、相手のことが分かった。
結婚して、相手が変わった、状況が変わった。
表現が適切ではないですが、一種の賭けの要素が、結婚にはある。

しかし、離婚がすべて不幸というわけではなく、上記のような不幸な、不条理な生活にピリオドを打つことができる。それが逆に、幸せ・安心を返してくれる可能性もある。
結婚には、こういう面もあることを認識しておく必要があるわけです。


前項に示したような原因で至った離婚。
本書の「4. ジェンダーの視点で見る離婚」で語られる問題こそ、本稿で取りあげたかったものです。
そこでは、離婚が原因で増えるひとり親世帯の増加と、その貧困問題が提起されています。

令和4年に厚労省から報告された前年度の「全国ひとり親世帯等調査」結果の概要を引用。
下表にあるように、
・母子世帯数 119.5万世帯、父子世帯数 14.9万世帯
そのうち、離婚が原因であるものが、それぞれ、79.5%、69.7%となっています。


特に注目すべきは、特に母子世帯の年間収入の低さです。
これが、現代の結婚が抱える、負の局面の最大の問題と言えるでしょう。

同書では、この後、再婚に視点を当て、夫婦別姓制と子どもの姓の問題、いわゆるステップ・ファミリーにテーマを移しています。
例の是枝裕和監督・福山雅治主演で注目された映画「そして父になる」などが引き合いに出されて、「普通」=常識からの自由、という帰結です。
どうも、私の社会学感覚とは、少々外れた軌道なので、踏み込まずに、離婚と結婚問題に戻って考察を続けます。

結婚が、当初の期待や想像に反し、やむなく離婚というライフステージに至る。
この機会に、再度結婚について考えてみましょう。

結婚は、単なる経済的扶養関係ではありません。
それは、日々の生活を共に営む共同体の形成でもあります。

整理すると、以下の機能を持っています。
① 経済的機能:収入の共有、リスク分担、扶養等
② 生活共同体機能:住居の共有、家事・育児の分担、日常生活の組織化等
③ 情緒的機能:親密性、帰属感、相互承認等
この三層が重なって、結婚世帯が形成され、運営され、維持されるわけです。

住居を共にし、食事をともにし、夫婦生活、家事や育児を分担しながら時間を重ねていく。
結婚とは、そのような具体的な生活の営みを共有する枠組みです。
同時に、結婚は収入を合算し、リスクを内部で吸収する、あるいは経済合理性を実践する機能を持ってきました。
病気や失業といった不測の事態に対して、夫婦という単位で支え合う仕組みでもあります。

この意味で、結婚は一種の「私的福祉世帯社会」を形成してきたと言えます。
しかし、その福祉機能も「私的生活共同体」としての機能も、婚姻関係の継続を前提としています。

そこで発生する離婚は、単に法的関係が終了することではありません。
生活の共同体が解体されると同時に、私的福祉機能も停止することを意味します。
だからこそ、離婚は当事者の人生に大きな影響を与えるのです。
特に、弱い立場に立たされ、追いやられる人ほど。

ここで問われるべきは、離婚が増えたか減ったかという単純な問題ではありません。
結婚という私的な共同体に、どこまで生活保障の役割を担わせ続ける社会であり続けるのか、という問いです。

結婚が続いている限りは安定し、
結婚が解消されれば生活基盤が揺らぐ。

そのような構造がある限り、結婚は完全に自由な選択であるとは言い難い面があります。
そして、無条件で推奨できる個人対個人の契約関係や社会システムではない側面を持っていることも。

結婚をするかしないか、
続けるか終えるか。
それらが人生の重大な選択であることに変わりはありません。
それが今とこれからの生活を大きく左右する制度であり続ける限り、私たちは「結婚」を冷静に認識し、向き合っていく必要があると言えます。

ここまで見てきたように、結婚すべてが幸福をもたらすわけではありません。
互いの関係が、性格の不一致、経済的破綻、心身の安定・安全性の危機などによって、維持不能になる。
こうした状況に、社会は、それは個人の責任の範囲のこと、と突き放すことができるのでしょうか。
個人個人、一世帯一世帯の生活は、社会の一員としての営みです。
前者の「社会」とは、行政の主体、国や地方自治体を意味します。
後者の「社会」は、個人や夫婦や家族が生活する、すべての基盤としての場と機能と環境、そして制度・システムなどすべての条件と状況です。

結婚、出産、子育て・保育、教育。
こうした人の社会的な営みの基盤とルールを提示・提供する「社会」。
その務めとして、ひとり親世帯の貧困や子育てと教育、就労と日常生活への対策と支援を確実に行う責務を、国や自治体という社会があるのです。

反対側からみれば、その社会の一員である私たち一人ひとり、個々の夫婦・家族は、自身の選択する生き方・働き方との関係から「結婚」や「離婚」のあり方について、折に触れ、考えてみるのも良いのではないでしょうか。

なお、今回取り上げた社会的課題等については、関係するWEBサイト、ONOLOGUE2050で取りあげていきます。
シングルマザーの不安を取り除くために必要な政策。
例えば、離婚後、子どもの養育費を支払わない元夫(元父)に対する強制執行や、低所得世帯への支援策などを強く推し進めることなどがあります。
一方で、当サイトが真っ先にイメージし、導入を支持するのは、シン・ベーシックインカム2050です。
こちらは、WEBサイト、https://basicincome.jp でのテーマになります。

当シリーズ、【『結婚の社会学』から、現代の結婚を考える】の次回は、「結婚」の常識を一旦閉じて考える上で有効な「第4章 事実婚と夫婦別姓」を参考にしての考察を予定しています。




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