事実婚の捉え方と同棲のススメ|『結婚の社会学』から考える新しいパートナーシップ:現代の結婚を考えるー5

LIFE STAGE

阪井裕一郎氏著『結婚の社会学』(2024/4刊・ちくま新書)をベースにしての【『結婚の社会学』から、現代の結婚を考える】シリーズ。
前回は、離婚に焦点を当て、離婚がもたらす「シングルマザー」等ひとり親世帯の、個人にとっては大きなリスク化、そして社会問題化を以下の記事で取りあげました。
⇒ 離婚が問いかける結婚制度の本質|ひとり親世帯問題から考える「私的福祉世帯社会」:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー4 – Life Stage Navi
これは、現代社会の結婚においても大きな社会問題であり、今後の強力な政策支援が求められる重要課題の一つです。

今回は、社会的なシステムとしての「結婚」という契約方式とは異なる課題を持つ、「同棲」や「事実婚」に焦点を当てて考察します。
同書の<第4章 事実婚と夫婦別姓>を受けての考察です。
以下が、第4章の構成です。

第4章 事実婚と夫婦別姓
1. 結婚から分離する出産と子育て
2. 同棲の普及
3. 同棲を選ぶ理由
4. 事実婚とは何か
5. 内縁が多かった戦前日本
——————————
6. 事実婚と夫婦別姓のつながり
7. 夫婦の姓をめぐる歴史
8. 夫婦別姓をめぐる対立の整理
9. 夫婦別姓に対する批判
10. 姓をめぐる格闘
11. 自分の望む名前で生きること

この構成から分かるように、この章では、事実婚により発生する「夫婦別姓」問題と、その子どもが名乗る「姓」に重点が当てられています。
確かに、現代の課題の代表例ではありますが、夫婦別姓問題は、一般的な「結婚」にまつわるものとしても、課題と認識されています。

事実婚、同棲生活等を軸とするのが本稿の目的ですが、筆者の意向を尊重して、夫婦別姓問題についての私の考えを、先に簡潔に述べておきたいと考えます。
夫婦別姓は認めるべき、以上。
と終るわけにはいきませんね。

結婚の常識を疑って、認めるべき、という議論ではありません。
それが自然でしょ、当然でしょ、と夫婦別姓でないことの方を疑っている立場です。
認められない理由。
一つは、「家制度」の名残り。
慣習というか、因習というか、意外に根強い。特に高齢世代に。
家を守ることと、一人の人生をどう生きるか、という課題は、前者は確かに一つの選択肢として付随する課題を決定していくこともありうる。
しかし、個々人の自由意志を尊重すべき社会においては、別姓を希望すれば認めるべき。
子どもがどちらの姓を名乗るかは、別の課題であり、夫婦間の課題です。
いずれ成人した時に、子どもの方がどちらを名乗るかの選択権を持つ形をとっておくのも良いと。

夫婦別姓の法制化の問題は、唯一、行政上の課題。
戸籍・住民票など、姓に関する訂正作業、システム改訂作業に膨大なコストと労力がかかること。
まあ、これは一度改善・改革すればいいわけで、やるだけです。

1月の衆院選での自民党の圧勝で、夫婦別姓制の議論も法案化も、先送りになりそうですが、あと5年以内くらいには実現し、2035年頃には移行・導入されているのでは、と比較的楽観視しています。

実は、同棲とは欧米では当たり前のこと。
こういう常識は、実は間違い。
元々は、キリスト教社会では、結婚しない同棲は、非道徳的と批判されていた。
それが、この40年間で、結婚せず同棲するカップルが増加。
ここに至る真迄には、以下の3段階があったと。
① 同棲が結婚制度に対する抵抗的な実践(アヴァンギャルド現象)=カウンターカルチャー(逸脱)
② 同棲から結婚へ(ライフコースとしての標準化)
③ 同棲が結婚のオルタナティブ(代替)=ほとんど結婚と区別できないもの

なるほど、という感じです。

もう一つ、意外と思ったり、なるほどと思えたり、という話を。
上記のように変質?化してきた「同棲」。
2008年の米国での調査結果。
① パートナーとより長い時間一緒にいたい:61.2%
② 経済的なメリット:18.5%
③ パートナーとの関係をテスト:14.3%
④ 結婚制度を信じていない:6.0%

そこで意外だったのが、トライアル(お試し)や結婚制度への不信が非常に低かったこと、と紹介しています。
そして、
「現在では、同棲は必ずしも結婚に直結するものではなく、もっとカジュアルな交際の一形態として市民権を得ている」と。

もう一つ、同棲が増えているデータ要因分析として、社会階層的視点から、親の所得や離婚経験が子の同棲選択に強く影響を与えていることを紹介。
不幸な家庭環境から早急に逃れる手段として新たな関係性としての同棲であると。
言い換えると、結婚回避や同棲の増加は、社会構造の流動化や不安定化がその要因というわけです。
ただ、これは欧米社会のことであり、日本では異なる状況にあるとしています。

こうしたどちらかと言うと負の側面が現れての「同棲」には違和感を持ちますね。
こうした例がないとは断言できないでしょうが、極々稀なことと思います。
現代は、もっと明るく、ポジティブなものと。

上記のような欧米事情に対して、日本では、まだまだ遅れているのか、保守的なのか、受動的なのか、はたまた悲観的なのか・・・。
今なお、結婚外で同居するカップルが少ない日本社会。
こうした同居カップルは、日本では、「内縁」か「同棲」に分けうる、と。
しかし、「内縁」という表現は、ニュースで聞く程度で、日常生活において、赤の他人はもちろん、当時者であってもその用語は用いないのではと思うのですが。
その「内縁」状態にあることを「事実婚」とする。
こう一応定義してはいますが、その後の論述で振り回されます。

事実婚は、法律婚と対比させるための「非法律婚」の意味をもつものであること。
事実婚という認識を持っている同棲カップル、そういう認識のない同棲カップル、どちらもいる。
「非法律婚」には、「非婚」も含まれる。
社会学者の議論も入り乱れ、そうした議論を行う意味が曖昧になります。

近代化以前の、足入れ婚や妾婚など家制度と結びついた「内縁」制。
それが、離婚数と私生児数の多さを招き、日本の国力を主張しようとした1900年代初めの政府の試みを断念させたとか。
戦後は、近代化に遅れた日本の「内縁」を否定し、民主化の態様としての事実婚から法律婚主義へシフト。

一応、知っておいてもよい事情が集められていますが、現代とこれからの同棲を考える上で、何かプラスになるかを考えると、ほとんど無意味。

嫡出子、非嫡出子問題について

もう一つ、本稿では取り上げていませんが、関係する課題として「嫡出子」と「非嫡出子」の問題があります。
これも、法的な権利義務関係を争う場合に争点になるところです。
しかし、この呼び方と問題化は、元々は、法律婚と非法律婚との分断と差別に起因するもの。
個々人の尊重を重視する思想の法律への反映・組入れが先行すべきであることは明らかです。
ただそうした事実を発生させた当事者の責任と義務を、併せて法律として明示すべきことも当然です。
本稿では、ここまでの提起としておきたいと思います。



私の個人的な考え・感想としては、「事実婚」という用語は、ピンときません。
「婚」と付けるのは、事故や事件や病気などが起きた場合の、カップル相互の権利義務関係を決めるためのもので、いわば「法的」な意味づけのためのもの。
確かに、そうしたケースには必要ですが、当事者の日常においては、あまり意識しないのが普通ではないかと。
あくまでも想像ですが。

私は、結婚推奨、子どもを持つこと推奨、という人間。単純に。
しかし、結婚がうまくいくかどうかのお試しライフとしての「同棲」は大賛成、大推奨という人間です。

一緒に生活してみて、相手のことがよくわかってくる。
同棲生活を続ける中で、経済面や性愛面や性格・相性や、ライフスタイルを相互に理解できる。
そして、そうした理解のもとに、歩み寄る必要があること、合わせた方がよいこと、譲れないこと、今後努力が必要なこと、などを感じ、考え、話し合っていく。将来のことも。

無論、そういう面倒な?ことを必要としない、自然な、ナチュラルな関係が心地よい。
同棲生活を通じて、このパートナーとならば子どもを持ってもよい、いや持ちたい。
そういうカップルが増えていくのはうれしいですね。

反対に、この生活を、子どもを持つことで変えたくない。そう考える人が出ることも。
いろいろあります。

こんな、ある意味、緩い社会が若い世代によって、緩く形成されていかないかな、と思っています。

当たり前になりつつあるシェアハウスでの生活。
そこでもいろいろな人々が集まり、何かをシェアしていく。

若い世代の利用を禁止する方向に進みつつあるSNSとその社会。
その社会での結婚観や同棲観は、これからどう変質・変化していくでしょうか。

そして加速するAI社会。
こちらの方は、男女の関係のあり方にどのような影響・変化を及ぼすか。
まったく予想が付きません。
AI社会においても、結婚が世間体を保つための通貨儀式・儀礼。
そんな旧い常識が残るのでしょうか。
ごめんですね。

自由に生きる、自由に結婚する、自由に子どもをもつ。
事情が変われば、離婚もする、再婚もする。
非婚もあり、生涯おひとり様もあり。

法律に準じた、形式としての結婚もよし、結婚に等しい事実がある、事実婚・同棲もよし。
夫婦としての私的福祉世帯としての結婚、生活共同体としての結婚。
それに準じた、それと同様の世帯・共同体としての同棲。
個人の思いと価値観を相互に尊重しながらの結婚、夫婦、家族。
時代は変化していっても、そうした価値観には、これからの時代と世代には、ブレがない。
それが疑う余地のない常識、否、普通のこととなる、いろいろ考える必要のない社会。

2050年頃までには、そうなっていて欲しい。

その基盤として、「文化、社会経済システムとしての、日本独自のベーシックインカム|シン・ベーシックインカム2050」を確たるものとして認められるような構想と実現プラン。
当サイトの多様な考察に寄与できる論考を、2つのWEBサイト、ONOLOGUE2050シン・ベーシックインカム2050論で取り組んでいきます。

アカデミックな書を参考にしながら、随分情緒的・情実的な内容になってしまいました。
失礼しました。
何か思想的なものに煽動されての変化ではなく、自然な時間と引き継いでいく世代と時代の流れに応じて、社会と個々人の意識が変化していく、平和裏に。


⇒ マッチングアプリ婚活のリアル:デジタル時代の結婚をデータと社会学で読み解く|『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー1 – Life Stage Navi (2026/1/15)
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