同性婚は日本で認められるのか?パートナーシップ制度と憲法論点を整理する:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー6

LIFE STAGE

マッチングアプリ婚活およびデジタル婚活、離婚とシングルマザー化問題、同棲および事実婚問題。
現代の結婚を、阪井裕一郎氏著『結婚の社会学』(2024/4刊・ちくま新書)をベースにして考えるシリーズも、今回で第6回。
前回第5回までの記事のラインアップは、記事末にあります。

今回は、同書の<第5章 セクシュアル・マイノリティと結婚>を受けての考察。
以下の、第5章の構成で主題が読み取れるように、主に「同性婚」に焦点を当てて考えてみます。

第5章 セクシュアル・マイノリティと結婚
1. セクシュアリティをめぐる基本概念
2. LGBTからSOGI(E)へ
3. 異性愛主義社会
4. そもそも「同性婚」?
5. パートナーシップと同性婚
6. 日本におけるセクシュアル・マイノリティ
7. 同性婚の意義
8. あらためて「多様性の包摂」を考える

では、本稿の目的である同性婚について考える前に、前提としてのセクシュアル・マイノリティに関する定義・認識について確認しておきましょう。

まず、セクシュアル・マイノリティとは、性的少数者を意味します。
LGBTとは、Lesbian(女性同性愛者)、Gay(男性同性愛者)、Bi-sexual(バイセクシャル・両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー・性自認が出生時と異なる人)を合わせた呼び方。
これに
Q(Questioning)(性自認や性的指向が未確定の人)を加えて、LGBTQとする場合。
Q(Queerクイア)(従来の性規範(異性愛・男女二元論)の当てはまらない人々を包括的に表す言葉
も加えて、
LGBTQ+とする場合があります。
以上が、セクシュアル・マイノリティとして一般的に区分されている形です。

先に、マイノリティとして包括するセクシュアリティの種類を述べました。
そこで一部先行して触れたように、元々セクシュアリティは、以下の3つの基本概念で把握分類されます。

① 生物学的性別(sex):出生時に医師から宣告された(割り当てられた)身体的な性別|インターセックス、性分化疾患等
② 性自認(gender identity):自分で認識している性|クエスチョニング、Xジェンダー等
③ 性的指向(sexual orientaion):性的に魅力を感じる性別(の方向性)|バイセクシュアル、アセクシュアル等

セクシュアリティの組み合わせパターン
① 生物学的性別は女性、性自認は女性、性的指向は男性:ストレート(マジョリティ)
② 生物学的性別は女性、性自認は男性、性的指向は女性:トランスジェンダー男性
③ 生物学的性別は男性、性自認は男性、性的指向は男性:ゲイ
④ 生物学的性別は男性、性自認は女性、性的指向は女性:トランスジェンダー女性
トランスジェンダー:②④のように、生物学的性別と性自認が不一致の場合(以前は、性同一性障害と呼ばれていた)
シスジェンダー:生物学的性別と性自認が一致
Xジェンダー:生物学的性別に違和感を抱いているが、特に男性とも女性とも思っているわけではない人々を総称
アセクシュアル:他者に性的魅力を感じることがなく、性的行為への関心や欲求が存在しない人

もう一つ、セクシュアルマイノリティを包括的に言い表すものとして、SOGIがあるとのことです。
性的指向(sexual orientaion)SOと、性自認(gender identity)のGIを合わせて、SOGI
これにしぐさや服装などを示す「ふるまう性」を意味する
Gender Expression(性表現)のEを加えて、SOGI(E)
こちらの方が、LGBTよりも普遍的な概念を示すから、ということです。

「多様性を包摂する」。
こうした表現を見聞きするようになってから、かなりの時間・期間・年数が経過しています。
「多様性」という言葉とその使用は、どちらかというと「マイノリティ」を尊重すべき、という議論・論考に端を発している感があります。
マジョリティが一般的であり、マイノリティは、その枠の外にあるという認識から、敢えて多様性を用いることで、同じ枠組みに存在するものとして、権利や制度適用を認める。

こうした認識や捉え方、対応方法は、本来、そうした違いを前提とすることなく同じ規範や文化・風土において、すべてが一般的である。
このようになる社会が望ましいと考えます。
時間がかかるかもしれませんが。

もう一つ、本稿との関係では、一言で「同性婚」と言っても、セクシュアリティの複数の概念とその組みあわせにより、同性婚そのものに多様性があることを知っておきたいと思います。

次に、前項で見た性の多義的な見方をベースにして、結婚・婚姻の変化を、確認しておきましょう。
特にここでは、日本社会ではなく、グローバル社会における変遷と現状を俯瞰します。

・デンマーク、オランダの「ジェンダーニュートラルな婚姻法」
・フランスの「みんなのための婚姻法」
などにより、今まで異性愛カップルにだけに認められていた結婚が、同性愛カップルにも認められるようになって用いられるようになった「同性婚」という言葉。

このことは、従来が異性愛主義社会であったことが前提にあります。
異性愛による結婚が普通であり、同性愛カップル、同性婚は異質とみなされたわけです。
それが、個々人の事情を超えて、社会全般にも意識の変革を求めることとなったのです。

先述のEU諸国の「婚姻法」は、メジャーやマイノリティという区分・分断の壁を、法律で取り払った、一つの理想としての結婚法制と言えるでしょう。
その動きが、今は、世界各国に広がり、2001年にオランダで端を発した同性婚の法制化は、2024年12月までに、ほぼ40の国で導入されています。
異質、マイノリティは、普通になり、マイノリティという後ろ向きの言葉は、不要になりつつあります。
ただ、完全に払しょくされたわけではなく、まだまだ課題は残り続けるでしょう。

ここまでの過程においては、当初は「同性パートナーシップ制」をモデルとしてスタートし、その後、ジェンダーを軸として、性差のない法律に進化・発展してきました。
当然、この新しい婚姻法は、従来の異性法律婚と同じ権利を持つもので、まさにジェンダー問題改革の象徴的な事例ということができます。

なお、本稿ではほとんど触れることがないですが、ジェンダー問題を組み入れた新しい時代の「婚姻法」には、結婚の多様性の中に「宗教」の要素も含むことになります。
カトリックが、欧米における現代の結婚にどのように位置付けられ、影響を与えているか。
私の知識では及ぶべくもないですし、ましてや、イスラム教の女性に関する論外の教義について触れること自体が、本稿では無意味・無力であることは明らかです。
ご理解ください。


この10年ほどの間に、日本においても同性婚を認めるよう訴訟を起こす例が増えてきた感があります。
これは、やはり、前項で示したように、欧米を中心としたグローバル社会で、同性婚が、異性婚と同様に、法的に普通の事とされてきている状況にあることが、大きく影響していると思われます。
テレビドラマや映画で普通に描かれていることでも十分分かりますね。

実際には、日本では、まだ同性婚は法律上認められていません。
同性婚を認めないのは違憲という訴訟動向とは別に、同性カップルが結婚と同等の行政・民間サービスを受けることができるようにという強い要望を受けて、自治体が「パートナーシップ制度」を導入し、認める。
この動きは、2015年に渋谷区と世田谷区で先陣を切って導入されたことをきっかけに広がりました。
2023年6月段階で、全国328自治体が採用しています。

「結婚と同等」の行政サービスを享受できる。
法律婚としての結婚が持つ「私的福祉世帯社会」と「生活共同体」機能は、行政サービスを利用できるなど、社会的機能と直結してこそ、その意義が強くなり、満たされることになります。
同性婚、パートナーシップ制にも、同様に、という論理です。
この論理は、世帯形成・家族形成を前提として考えれば、当然のことと言えるでしょう。
但し、この自治体規定は、本質的には、法的効力はない、とされる自己矛盾も抱えていることも、知っておくべきでしょう。

なお、ここでは深掘りしませんが、「内縁」や「同棲」関係にある異性カップルにおいても、求めがあれば行政、もしくは法律が認めるべきとなるはずです。
問題提起にとどめ、別の機会に取り上げたいと思います。

もう一つ、日本における同性婚の承認問題およびその訴訟においての論争・係争の論拠には、憲法が絡んでいます。
ご存じのように、わが国の憲法では、第3章に、以下の、結婚=婚姻に関する第24条規定があります。

1. 婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない.
2. 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

ここでは、生物学的性区分を根拠として婚姻を規定しているわけです。
従い、同性婚を認めないという司法判断は、憲法上は間違っていないことになります。

それに対して、同性婚禁止は違憲とする立場の論拠は、以下の、憲法第14条の平等規定です。

第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない

この2つの規定は、読み方・考え方・受け止め方で、どちらかが違憲規定であることになります。
憲法内違憲。(これは、他の極めて重大な規定にも見られることですね。)
こうなると、裁判官の心象であったり、社会的な規範の変化や動向などが判決に影響するなど、いわば「法の支配」の矛盾や弱点が露呈し、堂々巡りになる可能性が高いわけです。

(参考):配偶者(はいぐうしゃ)とは

法律上の婚姻関係にある夫または妻。
婚姻届を出した婚姻によって生じる地位であり、法律上は親族となるが、親等はない。
婚姻の届出がなされていない内縁関係の場合は、法律婚とは異なり、法律的に「配偶者」と呼ばない。
配偶者の地位は、婚姻の解消(離婚)で失われる。 

上記にあるように、仮に同性婚を法律婚として認めるとなると、憲法第24条の改正、すなわち改憲が必要になります。
これは保守勢力の改憲最重要課題が第9条にあり、先の衆院選圧勝自民党が、いよいよその時と手ぐすね引いて狙っていることは周知のこと。
夫婦別姓制にも反対の政党が、同性婚を改憲事案とすることなど微塵もないでしょう。
本稿執筆の筆者の考えは、本稿のまとめに当たる次項で述べることにします。

当サイト及び私の結婚に対する基本的な規範は、生物学的性別に基づくべきものという考えです。
すべての夫婦にとってそうということではないですが、性の生殖機能が、社会の形成と維持・継続・継承の原初。
その根源は、生物学的性区分にのみあるからです。

但し、生殖機能の利用・発揮は、個人、個々の夫婦、個々のカップルの自由意思に基づくものであり、決して国や地域社会などから強制されるものではないことは言うまでもありません。
結婚するもしないも、子どもを持つ持たないも、すべて個々人の自由な選択による営為ですから。

そのため、同性婚は、それを望む人々の気持ちを反映させるためには、従来の結婚・婚姻とは異なる概念を設定して、従来とは異なる、新しい婚姻制度を制定して、運用するのが適切と考えています。
結婚ではなく、パートナー(シップ)婚。
マリッジではなく、パートナリッジ、のように。

もちろん、同性婚としてのパートナー婚においても、これまでの法律婚が持つ以下の機能と同じ機能を持ちます。

結婚が持つの3機能
① 経済的機能:収入の共有、リスク分担、扶養等
② 生活共同体機能:住居の共有、家事・育児の分担、日常生活の組織化等
③ 情緒的機能:親密性、帰属感、相互承認等
こうした「私的福祉世帯社会」および「生活共同体」としての結婚世帯同様、パートナー婚も形成・運営・維持され、その権利が守られる。

参照記事:離婚が問いかける結婚制度の本質|ひとり親世帯問題から考える「私的福祉世帯社会」:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー4 – Life Stage Navi

これらの機能を実践・実行する上で、行政サービスは不可欠であり、これにより社会と個々の夫婦・カップルとの関係が多様な社会システム・社会制度が機能するわけです。
もちろん、この改革が実現する時には、戸籍・住民登録・住民票など、関連行政諸手続きとそのシステムの改革が必須であることも言うまでもありません。

ここまでの議論考察では、法律婚がもつ、権利や利便性に傾斜した感があります。
しかし、同性婚を希求するとき、「同性愛」、「愛」が根底にあるのではと思います。
愛するパートナーとの結婚という形を、社会に認めさせたい、認めて欲しい。
それゆえ、同性婚が法律婚であるべき、と。

ここで、別の視点での課題が思い浮かびます。
それは、愛がない同性婚。
形式のみの法律婚同性婚。
充分ありうることです。
極端でも何でもないですが、年齢が離れた同性婚。
もっと言えば、財産・資産目当ての偽装法律同性婚。

失った同性愛の愛も、元々あった愛を証明するものはありません。
「愛」の形を求められない「同性婚」は、養子縁組よりも相当低い壁のため、一旦法律化されれば、リスクや問題が増幅するのではという不安が覗きます。
だから法律婚の同性婚に反対ということでは決してありません。
異性婚においても、偽装や、何かしらの目的を持っての婚姻・結婚は充分あり得るのですから。

多様性を大切にする現代の結婚のあり方。
その態様の一つとしての「同性婚」問題を、少々論点を逸脱して取り上げてきました。
基本的には、新しい形での、法的効力をもつ、行政サービスも同様に享受できる「パートナー婚」「パートナリッジ」が国の法律として成立・導入することを提案したいと思います。

⇒ マッチングアプリ婚活のリアル:デジタル時代の結婚をデータと社会学で読み解く|『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー1 – Life Stage Navi (2026/1/15)
⇒ デジタル化する婚活、これからの期待と不安|『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー2 – Life Stage Navi (2026/1/16)
⇒ 結婚の常識を疑う|生き方の選択肢として結婚を再考する:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー3 – Life Stage Navi (2026/2/17)
⇒ 離婚が問いかける結婚制度の本質|ひとり親世帯問題から考える「私的福祉世帯社会」:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー4 – Life Stage Navi (2026/2/18)
⇒ 事実婚の捉え方と同棲のススメ|『結婚の社会学』から考える新しいパートナーシップ:現代の結婚を考えるー5 – Life Stage Navi (2026/2/19)

関連記事

ピックアップ記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事
  1. 結婚の常識を疑う|生き方の選択肢として結婚を再考する:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー3

  2. 望ましい高齢生活を送るための終活8ステップ|8ステップ総括、補足とまとめ

  3. 望ましい高齢生活を送るための終活8ステップ【番外編】:2010年代の終活ビジネスとお墓事情|樹木葬・散骨・無縁墓・直葬の変化

記事投稿日カレンダー
2026年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728  
ランキング
  1. 1

    「超知能」シリーズ総括:日経『迫る大転換』で読み解くSI、AGIと近未来の可能性

  2. 2

    デジタルライフとは?LIFE STAGE NAVIにおけるカテゴリー設定の背景と今後の展望

  3. 3

    社会的共通資本とは何か|宇沢弘文と新しい資本主義の哲学

おすすめ記事
特集記事
  1. 同性婚は日本で認められるのか?パートナーシップ制度と憲法論点を整理する:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー6

  2. 事実婚の捉え方と同棲のススメ|『結婚の社会学』から考える新しいパートナーシップ:現代の結婚を考えるー5

  3. 結婚の常識を疑う|生き方の選択肢として結婚を再考する:『結婚の社会学』から、現代の結婚を考えるー3

  1. 登録されている記事はございません。
TOP
CLOSE

Warning: Undefined array key "show_hatena_btm" in /home/onologue2050/lifestagenavi.com/public_html/wp-content/themes/muum_tcd085/footer.php on line 360

Warning: Undefined array key "show_pocket_btm" in /home/onologue2050/lifestagenavi.com/public_html/wp-content/themes/muum_tcd085/footer.php on line 365

Warning: Undefined array key "show_pinterest_btm" in /home/onologue2050/lifestagenavi.com/public_html/wp-content/themes/muum_tcd085/footer.php on line 370