「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ|ステップ3
家族介護あるいは自分介護への備えを進めていくうえで初めに行っておくべき事。
前章のステップ2・第2章で、介護保険制度について理解することを挙げました。
介護は、始まってから考えるほど「場所・人・お金」の判断が遅れ、家族の負担が偏り、仕事との両立が難しくなりがちです。
本章(ステップ3)では、在宅介護/施設介護/併用の選択肢を整理し、介護専門職の頼り方と、費用の見積もりまでをひとつの流れで理解できるようにまとめます。
ゴールは一つです。
介護離職を“前提”にしない意思決定ができる状態をつくることです。
“この記事でできること”3点
・在宅/施設/併用の違いが、条件別に判断できる
・ケアマネ中心に「頼り方」を決め、介護設計を作れる
・自己負担1〜3割を前提に、費用を見積もって更新できる
※本記事は、Webサイト・介護終活.com(https://kaigoshukatsu.com)で公開していた「第3章の関連記事(旧:3-1〜3-5)」を、重複を整理しつつ統合・加筆修正した“改訂統合版”です。
旧記事は、内容の重複を避けるため、順次、非公開化/リダイレクト/canonical設定などで整理します(検索エンジン向けにも重複を残さない運用を行います)。
ステップ3-1|介護施設の種類を整理する:目的・条件・向く人が一目でわかる比較
介護施設は「名前」だけでは違いが分かりません。
重要なのは、入所条件(要介護度・医療ニーズ・認知症など)と施設利用の目的(生活の場/リハビリ/医療・看取り)を先に押さえることです。
ここでは代表的な施設を、向いている人・向いていない人が判断できる形で整理します。
1. 介護施設の種類と目的・特徴
介護施設には、厚生労働省が規定する基準に従って建設・設置された以下のように多様な施設があり、それぞれに規定された介護関連サービスが提供されています。
1)特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、常時介護が必要な高齢者を対象とする公的施設です。
要介護3以上の要介護度が入所の条件となっており、費用が比較的低く、手厚い介護サービスが提供されます。
しかし、施設数に対して入所希望者が多く、多くの地域で入所待ちとなっている問題があります。
現状、全国に約7,900施設あり(2024年時点・厚生労働省公表資料ベース)、年間で約62万人が利用しています。
2)グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホームは、認知症の高齢者が共同生活を送る施設で、小規模で家庭的な環境が特徴です。
専門的な認知症ケアが提供されますが、費用が高めで利用者が限定されることがあります。
全国には12,124施設あり(2024年時点・厚生労働省公表資料ベース)、少人数制で運営されています。
3)有料老人ホーム
有料老人ホームは民間企業が運営する施設で、介護付き、住宅型、健康型の3種類があります。
設備やサービスが充実している一方、費用が高い点がデメリットです。
全国に13,525施設あり(2024年時点・民間調査および公表資料ベース)、利用者数は特別養護老人ホームに次いで多くなっています。
4)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、自立した生活を送りたい高齢者向けの住宅で、生活支援サービスが提供されます。自立した生活を続けながら支援を受けられる一方で、介護サービスは別途契約が必要です。
全国に5,000以上の施設があります(2024年時点・国土交通省/厚生労働省公表資料ベース)。
5)介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設はリハビリを中心とした介護施設で、退院後のリハビリや短期入所が可能です。
長期入所は難しいですが、医療ケアが充実しています。
全国には3,000以上の施設があり(2024年時点・厚生労働省公表資料ベース)、年間で多くの利用者がいます。
6)ショートステイ(短期入所生活介護)
ショートステイは短期間の介護が必要な高齢者を対象とする施設です。
一時的な入所が可能で、家族の介護負担を軽減するために利用されますが、短期間の利用に限られます。
全国に1,000以上の施設があります。
7)デイサービス(通所介護)
デイサービスは日中の介護サービスを提供する施設で、日帰りで利用できます。
日中のケアとリハビリを提供し、家族の負担を軽減しますが、夜間は自宅での介護が必要です。
全国に4,000以上の施設があります。
8)介護医療院
長期の医療と介護が必要な方が入所し、日常的な医学管理や看取り・ターミナルケア(緩和ケア)を受けることができます。2024年4月1日現在、全国に926施設あります。(参考)介護医療院の開設状況について(厚生労働省公表資料)
2. 介護施設選びのチェックポイントと介護施設見学の注意点
まず、施設選びを始める前に情報収集を行いましょう。
インターネット、自治体の窓口、ケアマネージャーなどから情報を集め、リストを作成します。
その上で、以下の点を理解し、適切な施設を選びます。
前項とほぼ重複した内容がほとんどですが、チェックポイントとして確認して頂ければと思います。
1)特別養護老人ホーム(特養)
常時介護が必要で、費用を抑えたい場合に選びます。
但し、要介護3以上が入所の絶対条件で、資産や所得などに関しての付帯条件もあり、誰でも無条件に利用できる施設ではありません。
特養は費用が安く、手厚い介護サービスが受けられますが、希望者が施設数・収容者数に対して多く、入所待ちが長いことが問題です。
2)グループホーム (認知症対応型共同生活介護)
認知症のケアが必要で、家庭的な環境を求める場合に選びます。
グループホームは小規模でアットホームな環境が提供され、専門的な認知症ケアが受けられます。
3)有料老人ホーム
充実した設備とサービスを希望する場合に選びます。
有料老人ホームは施設のバリエーションが豊富で、設備やサービスが充実していますが、費用が高い点に注意が必要です。
4)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
自立した生活を送りたいが、生活支援サービスが必要な場合に選びます。
サ高住は自立した生活を続けながら支援を受けられるため、自立したい高齢者に適しています。
5)介護老人保健施設(老健)
退院後のリハビリや短期入所を希望する場合に選びます。
老健はリハビリに特化しており、医療ケアが充実していますが、長期入所は難しいです。
6)ショートステイ(短期入所生活介護)
短期間の介護が必要な場合に選びます。
ショートステイは一時的な介護が必要なときに利用され、家族の負担を軽減しますが、利用期間が限られます。
7)デイサービス (通所介護)
日中の介護が必要な場合に選びます。
デイサービスは日中のケアとリハビリを提供し、家族の負担を軽減しますが、夜間は自宅での介護が必要です。
8)介護医療院
長期の医療と介護が必要な方が入所し、日常的な医学管理や看取り・ターミナルケア(緩和ケア)を受けることができます。
病院や診療所が転換する例が多く、それだけにまだ施設数が少ないため、ニーズに十分こたえきれない状況といえます。
・介護施設見学の際の注意点
施設の見学は、利用施設を決める上で必ず行うべきです。
取り寄せた資料や、自治体や厚生労働省のホームページ掲載の施設情報を用いて、見学先を決め、事前に見学の予約を取り、期間・時間に余裕を持って見学しましょう。
施設の雰囲気を観察し、スタッフの対応や入居者の表情を確認しましょう。
また、共用部分やトイレなどの清潔さをチェックすることも重要です。
居室や食堂、浴室などの設備を実際に見て確認してください。
可能であれば、入居者と直接話をして、施設の雰囲気やサービスの質について聞いてみましょう。
これ以外に、意外に見落としそうなこと、忘れそうなことがあります。
それは、施設を利用している人の数と介護サービスを担当しているスタッフの数です。
施設の収容規模に対して介護サービスを担当するスタッフが多いか、不足しているかも見た感じや、施設担当者への質問で確認してみてはと思います。
その他、施設へのアクセスの利便性、施設周辺の自然環境・商業環境などもチェックしておきたいものです。
3.介護施設運営主体の種類と業界の特徴
利用施設の検討・決定に直接的な関係はありませんが、介護施設の特徴や利用に関する間接的な情報として、知っておいても良いと思われることを以下に付け加えておきたいと思います。
1)介護施設運営主体の種類
介護施設を運営する事業者形態としては、主に以下が挙げられます。
・社会福祉法人などの公的施設
社会福祉法人は、公益性を重視した非営利の法人で、主に特別養護老人ホームなどを運営しています。公的支援があり、費用が低く抑えられている点が特徴です。
現状、全国には約20,670の社会福祉法人が存在し(2022年度公表資料ベース)、そのうち、高齢関係事業を主に行っている法人は6,736法人です。
(参考)
・厚生労働省の統計情報:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service22/dl/gaikyo.pdf
・全国社会福祉協議会のウェブサイト:https://www.shakyo.or.jp
・社会福祉法人の現況報告書等の集約結果(2022年度):https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/zaihyou/zaihyoupub/aggregate_results.html
・民間運営施設
民間企業が運営する施設には、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などがあります。これらの施設は、設備やサービスが充実している一方で、費用が高い傾向があります。
・病院経営施設
病院が運営する主な介護施設は、介護老人保健施設ですが、サ高住や有料老人ホームも経営している病院グループもあります。医療ケアが充実しているため、医療ニーズが高い利用者、医療・看護のサポート体制も一体化したサービスを求める人に適しています。
2)介護業界の構造
介護業界は、大手生保グループや介護専門大手によるチェーン事業者と中小零細事業者から構成されています。
大手企業には、ニチイ学館、ツクイ、ベネッセスタイルケア、SOMPOケア、損保ジャパン、第一生命、明治安田生命などがあります。これらの企業は、全国規模で事業を展開し、安定したサービスを提供しています。
一方、中小零細事業者は地域密着型で、個別のニーズに対応する柔軟性があります。
・M&A動向
2023年以降、介護業界ではM&Aが活発化しており、
日本M&Aセンターなどが多くの取引を支援しています。
2024年も取引件数は高水準で推移すると見込まれています(2024年時点の業界予測)。
2023年の代表的な事例としては、日本生命によるニチイ学館の買収があります。
(参考記事)
・ION Analyticsの記事: https://ionanalytics.com/homes-sweet-homes-japan-nursing-care-M&A-ramps-up-2025
・S&P Global Market Intelligenceの記事: https://www.spglobal.com/marketintelligence/en/news-insights/latest-news-headlines/japan-M&A-set-for-growth-in-2024
・Chambers and Partnersのガイド: https://practiceguides.chambers.com/global-practice-guides/corporate-M&A-2024/japan
・倒産動向
近年(2023年〜2024年時点)、介護業界では倒産件数が増加傾向にあります。
特に中小零細事業者は、人手不足や経営資源の制約から経営難に陥りやすい状況が続いています。
一方で、大手企業は経営基盤が強固であるため、安定した運営が続いています。最新の倒産動向については、以下を参照ください。
⇒ ”東京商工リサーチの最新調査報告” https://www.tsr-net.co.jp/news/
今回は、いずれ行うことになる介護でそのうちのどれかを利用することになるでしょうから、介護施設の種類を知って頂き、どのような状況でどの施設を利用するのがよいか、利用すべきか、利用できそうかなどをイメージできるようになって頂くことに目的がありました。
知人・友人やそのご家族、ご近所のご家族の介護の話・情報を見聞きする機会も多分あると思います。
その情報と今回の内容とが重なり合った部分もあるのではと思います。
その確認をしたり、今までに見聞きすることがなかった施設についての確認も行って頂ければと思います。
特に、これから機会がある介護で、この施設は費用面や介護サービス内容から利用できる、利用すべきだな、などシミュレーションをしてみることをお薦めします。
次節は、「3-2: 介護専門職の役割と選び方、関係づくり」で、介護サービスを実際に提供してくれる介護の専門職の方々の種類と役割、関係性について、基本的なことを理解したいと思います。

ステップ3-2|介護を支える専門職を理解する:ケアマネ中心に“頼り方”を決める
介護で最も差が出るのは「良い人に当たるか」ではなく、専門職に“どう頼むか”が決まっているかです。
特にケアマネージャーは、介護サービスの設計図を描く存在です。
ここでは、主要な介護専門職の役割と、家族側が後悔しない関わり方をまとめます。
1.介護専門職の種類、資格要件と役割
介護に関わる専門職は多岐にわたり、それぞれ特化した役割と資格要件があります。
ここでは、以下の主要な介護専門職と介護業務に関連した専門的な仕事を担当する職種の役割、働き方を紹介します。
1)ケアマネージャー(介護支援専門員)
・役割:介護サービスの計画を立て、各種サービスの調整を行います。
・資格要件:介護支援専門員実務研修の修了と試験合格が必要です。
・働き方:自治体や民間の介護事業所に所属して働くことが一般的です。
2)ホームヘルパー(訪問介護員)
・役割:高齢者の自宅を訪問し、日常生活の支援を行います。
・資格要件:介護職員初任者研修(初級)、介護職員実務者研修(中級)、介護福祉士(上級)があります。
・働き方: 訪問介護事業所に所属して高齢者の自宅を訪問する場合と、高齢者が入居している特養やサ高住、老人ホームなどの施設やデイサービス等通っている施設、短期に入所する施設内で働くなど、特定の介護施設に所属して施設内で働く場合があります。
3)訪問看護師
・役割: 介護職とは異なり、医療的なケアを提供し、病状の観察や健康管理を行います。介護職は原則、この仕事に従事することはできません。
・資格要件: 看護師資格と訪問看護の実務経験が必要です。
・働き方: 訪問看護ステーションに所属して利用者の自宅を訪問します。
4)理学療法士
・役割: 身体機能の維持・回復を目的としたリハビリテーションを提供します。
・資格要件: 理学療法士国家試験の合格が必要です。
・働き方: 病院やリハビリテーション施設に所属して働く場合と、在宅介護で利用者の自宅を訪問する場合があります。
5)作業療法士
・役割: 日常生活動作の改善を目的としたリハビリテーションを提供します。
・資格要件: 作業療法士国家試験の合格が必要です。
・働き方: 病院やリハビリテーション施設に所属して働く場合と、在宅介護で利用者の自宅を訪問する場合があります。
6)介護助手(無資格者)
・役割: 資格がなくても、介護施設や在宅での介助サービスに従事することができます。具体的には、掃除や食事の準備、簡単な介助などを行います。
・資格要件: 特に資格は不要ですが、施設によっては研修を受けることがあります。
・働き方: 特定の介護施設に所属して働く場合が多いですが、在宅介護の場合もあります。
以下の2職種は、直接介護業務を担当することはなく、特定の専門業務領域を担当します。
7)社会福祉士
・役割: 福祉サービスの提供と相談支援を行います。
・資格要件: 社会福祉士国家試験の合格が必要です。
・働き方: 自治体の福祉事務所や社会福祉法人に所属して働きます。
8)精神保健福祉士
・役割: 精神障害者の生活支援と社会復帰支援を行います。
・資格要件: 精神保健福祉士国家試験の合格が必要です。
・働き方: 自治体の精神保健福祉センターや精神科病院に所属して働きます。

2.認可介護施設に必要な介護専門職の種類と人数基準
認可介護施設では、介護専門職の種類とその人数が法令で定められています。
以下に主要な基準を示します。
1)特別養護老人ホーム(特養)
・介護職員: 入居者3人につき1人以上
・看護師: 入居者100人につき1人以上(夜間を除く)
・ケアマネージャー: 施設ごとに1人以上
2)有料老人ホーム
・介護職員: 入居者3人につき1人以上
・看護師: 医療的ケアが必要な場合、常勤で1人以上
・ケアマネージャー: 施設ごとに1人以上
3)グループホーム
・介護職員: 入居者3人につき1人以上
・看護師: 医療的ケアが必要な場合、非常勤でも配置
・ケアマネージャー: 施設ごとに1人以上
4)デイサービス
・介護職員: 利用者10人につき1人以上。介護職員には介護職員初任者研修(初級)以上の資格が求められます。
・看護師: 必要に応じて配置
・ケアマネージャー: サービス提供責任者が必要
5)ショートステイ
・介護職員: 利用者3人につき1人以上。介護職員には介護職員初任者研修(初級)以上の資格が求められます。
・看護師: 必要に応じて配置
・ケアマネージャー: 施設ごとに1人以上
3.介護専門職選びの基本と信頼できる介護サービスの見分け方、有効な活用法
介護専門職の選び方については、利用する介護施設に委ねることが多く、実際に自分で選択できるケースは限られています。
ここでは、選択できる場合の選択基準と信頼できるサービスの見分け方について述べます。
1)ケアマネージャーの役割と有効な活用法
・ケアマネージャーの役割
ケアマネージャーは、介護サービス利用者にとって望ましい介護サービス計画を立案・提案する責任があります。
このため、ケアマネージャーと良好な関係を築き、ニーズや希望を明確に伝えることが重要です。
・居宅型施設の場合の注意点
特定の居宅型施設に配置されたケアマネージャーは、施設専属の立場となるため、施設主導型の押し付けのサービス計画が提示されることがあります。
この場合、なかなか、利用者サイドの心構えや具体的な要求要望を伝えることが難しいという問題があります。
このため、利用者や家族は、自分のニーズや希望をしっかりと伝え、必要なサポートを得るよう努めましょう。
2)介護サービスを検討、選択できる、あるいはすべきケース
・自ら介護サービス計画を立てる
実は、実際にどのような介護・介助サービスを受けるかの計画は、介護を受ける人自身、あるいはその家族が立てても良いのです。
興味関心がある人、自分で考えて計画を立てたい、実際に必要かどうか有効かどうかを自分で判断したいと考え、そのために介護保険制度や介護・介助サービスなどを詳しく調べて、納得がいく介護を受けたい人。
それらの人は、十分その価値があると思います。
・介護サービス利用者のニーズに基づく選択
例えば、特定の医療ニーズや介護・介助ニーズがある場合、その分野に特化した、あるいは適した専門担当者をケアマネジャーに依頼して、あるいは自身で探して指名します。
ケアマネージャーが配慮してくれる場合もありますが、自身が明確に希望を伝えることで実現する場合があります。
・サービス提供者の評価と実績の確認
利用者のレビューや評価を確認し、実績のある介護施設あるいは個人サービスを選びます。
・施設における介護専門職の配置基準の確認
認可介護施設が法令で定められた基準通りに介護専門職を配置しているか確認し、その基準を満たした事業者と介護専門職を選ぶようにしましょう。
施設のパンフレットやホームページ、訪問時などに確認するとよいでしょう。
3)信頼できるサービスの見分け方
前項の2)と意味合いが重なっていると感じられると思いますが、念のため、提供される、あるいは受ける介護・介助サービスが信頼できるかどうか判断する上での留意点を上げておきます。
・資格の確認
専門職が適切な資格を有しているか確認します。
・実績と経験の確認
提供するサービスの実績と経験を確認し、信頼性を評価します。
・サービス提供内容の詳細確認
提供されるサービスの内容と範囲を詳しく確認し、ニーズに合致しているか評価します。
4)有効な活用法
ここまで述べてきたことと一部重複しますが、一般論として、介護専門職のサービスを受ける上で有効な活用方法をメモしておきます。
・良好な関係づくりおよびコミュニケーション形成
介護専門職および介護施設と利用者・家族が良好な関係を築くことが重要です。
事前準備としてのコミュニケーション、介護サービスを受ける状態になった時に定期的な、あるいは臨機応変にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築しましょう。
こちらの希望を率直に、はっきりと伝えられること、疑問や質問も率直に伝えられること、そのための関係づくりといえます。
・介護される者およびその家族としての在り方
自分の状態や希望を専門職に伝え、自立を目指した取り組みを心掛けましょう。
また本人が無理な場合は、家族として本人に代わって介護担当者や事業所とコミュニケーションを取ることができるようにしておきたいものです。
その際家族間のコミュニケーション、意思疎通をしっかり行っておくことが不可欠であることを確認しておきます。
以上、前回の介護施設についての理解に続いて、介護専門職についての理解を目的とした説明・解説を行いました。
基本的なことですが、介護離職を防ぐ上で、知っておきたい内容です。
こうした基礎知識を持っているかいないかは、実際に悩み、しっかり考える必要が生じた場合に、判断や行動に違いが生じさせることになると思います。
次節は、自宅で、在宅で介護サービスを受けることについて「在宅介護のメリットとデメリット」と題して考えます。

ステップ3-3|在宅介護の現実:メリットだけでなく、負担と限界を見積もる
在宅介護には確かに良さがありますが、同時に「見積もっておかないと詰む負担」もあります。
ここでは、在宅介護のメリットを押さえた上で、身体・心・時間・お金の4つの負担を現実的に点検し、対策(レスパイト等)まで整理します。
なお、本章では、制度やサービスの説明だけでは見えにくい
「家族が担う在宅介護の現実」や「家族介護の限界」を補うために、
介護現場を長年取材してきた
結城康博氏執筆の『在宅介護』(2015年8月20日刊・岩波新書)で示された視点も参照しています。
制度上は可能とされている在宅介護が、
実際の家庭生活の中でどのような負担や矛盾を抱えるのかを、現場の視点から確認するためです。

1.在宅介護とは?
1)在宅介護とは|定義と在宅介護の内容
在宅介護とは、高齢者や障がい者などの介護が必要な方が自宅で日常生活を送るために、介護者(家族や専門の介護スタッフ)が介護サービスを提供する形態を指します。
具体的には、以下のような内容が含まれます。
・身体介護:食事、排泄、入浴、着替え、移動の介助など、基本的な日常生活動作の支援。
・生活援助:掃除、洗濯、買い物、調理など、家事全般の支援。
・医療ケア:訪問看護、服薬管理、リハビリテーションなど、医療的な支援。
・心理的支援:介護者や被介護者のメンタルヘルスのケアやカウンセリング。
自宅での介護ですが、家族だけで介護を行うのではなく、外部の介護専門職の方や看護専門職の方に家に来てもらって介護や看護をしてもらうのも在宅介護(看護)であることを知っておきましょう。
2)在宅介護を選択する事情・理由と心構え
在宅介護を選択する背景には、以下のような事情や理由があります。
・家族の希望を優先し、家族との絆を大切にする
被介護者が家族に介護してもらいたい、介護する人が自分で介護したいという希望が優先し、その結果家族の絆が維持・形成されます。
・慣れ親しんだ環境で生活する
華族の希望と一致することですが、自宅で過ごすことが、被介護者にとっては、生活上の種々の場所や要領が分かっており、安心感をもたらすことが大きな要素です。
・費用面の考慮
種々のかつ多額の費用がかかる施設介護よりも在宅介護のほうが費用を抑えられることが一般的と考えられています。但し、この場合、家族が負担する身体的・精神的・時間的な負担やコストは考慮されても、試算されてもいません。
・柔軟なケアの提供
個別のニーズに応じた柔軟なケアが可能です。しかし、家族では対応できないケアが発生する場合には、外部のサービスを利用する必要があり、柔軟に対応することが簡単ではない場合もあり得ます。
2.在宅介護の利点(メリット)と日常生活への影響
前項の在宅介護を選択する理由背景と重なり合いますが、もう少し掘り下げて考えてみます。
1)家族の絆を深める
在宅介護は家族と過ごす時間を増やし、有形無形の効果をもたらし、絆を深めることができます。
<家族の結束>
・共同作業:介護を通じて家族全員が協力し合うことで、家族の結束が強まります。
・日常的な交流:介護をすることで、家族間のコミュニケーションが増え、お互いの理解が深まります。
・感謝の気持ち:介護を受ける側もする側も、互いに感謝の気持ちを持つことで、絆が深まります。
<世代間の交流>
・知恵の伝承:高齢者が持つ知識や経験を若い世代に伝える機会が増え、家族の歴史や伝統が継承されます。
・親密な関係の構築:親や祖父母との親密な関係が築かれ、子供たちにとっても良い影響を与えます。
2)介護者の安心感
自宅という慣れた環境での介護は、被介護者にとって精神的に安定しやすくなり、プラスの効果ももたらします。
<心理的安定>
・安心感:自宅という慣れた環境での生活は、被介護者にとって安心感を与え、精神的に安定しやすくなります。
・ストレス軽減:知らない場所や人に囲まれるストレスが減少し、リラックスした状態で過ごせます。
・個別対応:個別のニーズに応じた柔軟な対応ができるため、被介護者の満足度が高まります。
<生活の質(QOL)の向上>
・日常生活の継続:自宅での生活を続けることで、被介護者はこれまでの生活習慣を維持できます。
・プライバシーの確保:施設では難しいプライバシーの確保が、自宅では可能です。
・家族との交流:日常的に家族と過ごす時間が増え、社会的孤立感が軽減されます。
3)個別対応が可能
施設では難しい個別のケアが実現しやすいことも大きなメリットです。
<カスタマイズされたケア>
・個別のニーズに応じたケア:被介護者一人一人の状態やニーズに合わせたケアが可能です。
・柔軟なスケジュール:介護のタイミングや内容を柔軟に調整でき、被介護者のリズムに合わせたケアが提供できます。介護する人の都合も組み入れることもできます。
<専門的なケアの導入>
・訪問介護や訪問看護の利用:必要に応じて専門的なケアサービスを利用し、質の高い介護を提供します。
・リハビリテーションの導入:リハビリ専門のスタッフを訪問してもらい、在宅でのリハビリを実施します。
4)費用面での柔軟性
在宅介護のほうが費用を抑えられる場合があります。
以下のような観点から取り組んでみてください。
<費用削減のポイント>
・介護サービスの選択:必要なサービスだけを選んで利用することで、無駄な費用を抑えられます。
・介護保険の活用:介護保険を活用して、訪問介護やデイサービスなどの費用を軽減します。
・公的支援制度の利用:自治体の助成金や補助金を利用して、経済的負担を軽減します。
<経済的な計画>
・長期的な資金計画:将来的な介護費用を見据えて、計画的に資金を準備します。
・予算の見直し:定期的に予算を見直し、無駄な支出を削減します。
<設備投資の節約>
・必要最低限の設備投資:自宅での介護に必要な設備だけを導入し、過剰な投資を避けます。
・リースやレンタルの活用:介護用品のリースやレンタルを活用して、初期費用を抑えます。
以上、在宅介護のメリット、利点に焦点を当てて見てきました。

3.在宅介護の課題デメリットとその対策方法
前項で見てきたメリットに対して、実際には、その反対的な要素・要因から、さまざまな問題・課題が発生します。
この項では、その内容を改善・解決策も併せて確認していきます。
1)身体的・精神的負担
介護者自身の健康管理が重要です。具体的な対策としては、レスパイトケアや介護サービスの一時利用があります。
<身体的負担の軽減策>
・レスパイトケアの利用:介護者が休息を取るための一時的なケアサービス(ショートステイ、デイサービス、夜間ケア)を利用することで、身体的な負担を軽減します。
・リハビリテーションのサポート:介護者自身が体力を維持するためのリハビリプログラムやエクササイズを取り入れます。
・適切な介護技術の習得:介護者が正しい身体の使い方や介護技術を学び、無理な姿勢や動作を避けることが重要です。
<精神的負担の軽減策>
・カウンセリングやサポートグループ:介護者向けのカウンセリングやサポートグループに参加し、心理的なサポートを受けます。
・趣味やリラクゼーションの時間確保:定期的に趣味やリラクゼーションの時間を設け、ストレスを軽減します。
・レスパイトケアの活用:レスパイトケアを利用して、介護から一時的に離れることで、精神的なリフレッシュを図ります。
先述したレスパイトケア(Respite Care)とは、介護者(主に家族)が一時的に介護から解放され、休息やリフレッシュの時間を持つことができるようにするための以下のようなケアサービスです。
このサービスは、介護者の身体的・精神的な負担を軽減し、介護の質を維持するために重要な役割を果たします。
〇ショートステイ:介護施設に短期間入所することで、家族が一時的に介護から解放されるサービスです。数日から数週間の利用が可能です。
〇デイサービス:日中だけ施設でケアを受けるサービスで、家族が仕事や用事を済ませる間、被介護者を預けることができます。
〇訪問介護:介護者が外出する際や一時的に休息を取る際に、介護スタッフが自宅を訪問して介護を行うサービスです。
〇夜間ケア:夜間だけ介護を担当するスタッフが来て、家族が夜間の休息を取れるようにするサービスです。
レスパイトケアは、介護者が自分自身の健康とウェルビーイングを保つために非常に重要です。
また、介護者がリフレッシュすることで、被介護者に対してもより良いケアを提供できるようになります。
2)経済的負担
介護にかかる費用を計画的に管理するため、あるいは軽減するための助成制度の活用方法を紹介します。
<介護保険制度の活用>
・介護サービスの利用:介護保険を利用して、訪問介護、デイサービス、ショートステイなどのサービスを受けることで、費用を抑えます。
・介護保険外サービスの利用:介護保険が適用されないサービスについても、自治体やNPOなどの支援を活用します。
<助成金や補助金の申請>
・自治体の助成制度:各自治体が提供する介護支援助成金や補助金を調査し、申請手続きを行います。
・介護用品の補助:介護ベッドや車いすなどの介護用品に対する補助金を利用します。
<経済的負担の軽減策>
・予算管理:長期的な介護費用を見据えた予算計画を立て、計画的に資金を管理します。
・費用の見直し:介護にかかる費用を定期的に見直し、無駄な支出を削減します。
3)技術・知識の不足
介護の専門知識を習得するための研修や講座、オンラインリソースを活用し、不足する、あるいは必要な情報・知識を以下のような方法で入手します。
<研修や講座の受講>
・介護技術研修:地域の介護研修センターや民間の講座に参加し、最新の介護技術を学びます。
・専門資格の取得:介護福祉士やホームヘルパーなどの資格取得を目指し、専門的な知識を深めます。
<オンラインリソースの活用>
・介護情報サイト:信頼できる介護情報サイトで最新の情報を収集し、知識をアップデートします。
・オンライン講座:インターネットを通じて受講できる介護講座やウェビナーに参加します。
<地域のサポート>
・地域包括支援センター:地域包括支援センターに相談し、必要な情報やサポートを受けます。
市区町村の福祉担当部署に電話で連絡するかホームページから相談しましょう。
・介護者同士のネットワーク:地域の介護者同士で情報を共有し、互いにサポートし合います。
・介護施設:もちろん、近くにある介護施設に質問や相談を積極的に行うこともよいでしょう。
4)時間管理の難しさ
仕事との両立を図るための時間管理方法やスケジュール調整のポイントを説明します。
<スケジュールの見直し>
・優先順位の設定:介護と仕事、家庭生活の優先順位を明確にし、効率的に時間を使います。
・タイムマネジメントツールの活用:スケジュール管理アプリやカレンダーを活用して、予定を整理します。
<介護と仕事の両立>
・フレキシブルな働き方:テレワークやフレックス勤務制度を利用し、仕事と介護の両立を図ります。
・職場の理解と協力:上司や同僚に介護の状況を説明し、職場の理解と協力を得ます。
<サポート体制の確立>
・家族や友人の協力:家族や友人に協力をお願いし、介護負担を分担します。
・地域のサポートサービス:地域のボランティアや支援サービスを活用し、時間的な負担を軽減します。
4.結城康博氏著『在宅介護』に見る在宅介護・家族介護の実態と限界点
結城康博氏の『在宅介護』(2015年8月20日刊・岩波新書)の「第1章 在宅介護の実態」と「第2章 家族介護の実態」では、在宅介護と家族介護の現状と問題点を詳述しています。
その2つの章から以下、私なりの考えを付け加えて整理してみました。
1)在宅介護の現状
・高齢化社会の進展
日本では高齢化が進み、在宅で介護を受ける高齢者の数が増加しています。
・在宅介護の普及
介護保険制度の導入により、在宅での介護が推進されてきましたが、その実態は必ずしも容易ではありません。
2)在宅介護の問題点
・介護者の身体的・精神的負担
在宅介護を行う家族は、肉体的・精神的な負担が非常に大きいです。
介護者が疲弊し、自らの健康を損ねるケースも少なくなく、r時に家族や自身を殺める悲しい事件も発生しています。
・社会的孤立
介護者は介護に専念するあまり、社会から孤立することが多い側面があります。
友人や職場との関係が疎遠になり、精神的な支えを失うこともその要因の一つです。
・経済的負担
在宅介護には多額の費用がかかります。
被介護者の年金収入や預貯金だけで介護費用を賄うことが困難な例も多い現状があります。
介護に専念するために仕事を辞めざるを得ない場合もあり、収入が断たれたり、大きく減少するなど家計に大きな影響を及ぼします。
・専門的知識・技術の不足
家族が専門的な介護知識や技術を持たないことが多く、不適切な介護が行われるリスクがあります。
必要な介護サービスや支援制度を知らないことも問題です。
3)家族介護の限界
・介護者の高齢化
介護を行う家族自体が高齢化しており、自らも介護が必要な状況に陥ることが増えています。
高齢者が高齢者を介護する「老老介護」の問題が深刻です。
・介護の担い手の不足
少子化の影響で、介護を行う世代が減少し、介護の担い手が不足しています。
単身高齢者や子供のいない夫婦にとっては、介護が一層困難です。
・介護負担の偏り
介護の負担が一部の家族に集中しやすく、特定の家族が過度な負担を背負うことになります。
介護負担の分散や支援の必要性が求められています。
・社会的支援の不足
公的支援や地域社会の支援が十分に機能していないケースが多いです。
・家族だけでなく、社会全体で支える体制の整備が必要です。
※本書を、介護に関する書のバイブルと評価しています。
ほぼ10年前に出版され、その時に既に種々問題提起している書ですが、本質的な問題は、現在も何ら変わることがありません。ご一読をお薦めします。
※『在宅介護-「自分で選ぶ」視点から』
※これらの内容は、「ステップ3-4: 自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り」「ステップ3-5: 介護の場所の選択・方法の選択と介護離職防止対策」で扱う課題でもあります。
以上、今回は、実際に家族を介護することになる場合、なった場合に、自宅・在宅で行う介護を想定し、プラス面、マイナス面、発生しうる問題点などについて考えてみました。
次節は、既に見てきた各種介護施設における介護と今回取り上げた在宅・自宅介護を組み合わせて介護を考える「自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り」をテーマとします。

ステップ3-4|在宅×施設の併用設計:負担軽減と費用見積もりの基本
在宅か施設かは二者択一ではありません。多くの家庭にとって現実解は、在宅+外部サービス(デイ/ショート/訪問)の併用設計です。
このパートでは、併用パターンを事例で示し、費用の増減も含めて「続けられる設計」に落とし込みます。
1.結城康博氏著『在宅介護』にみる在宅介護サービスと外部施設介護サービスの使い方
結城康博氏の『在宅介護』では、「第4章 在宅介護サービスの使い方」「第5章 施設と在宅介護」「第6章 医療と介護は表裏一体」などで、在宅介護サービスと外部施設介護サービスの活用方法も解説されています。
これらのサービスの適切な組み合わせや利用方法を理解することは、介護者にとって非常に重要です。
以下では、それぞれのサービスの具体的な内容を紹介し、どのように活用するかを整理しています。
1) 在宅介護サービスの使い方
在宅介護サービスは、介護を必要とする高齢者が自宅でできる限り長く安心して生活できるよう、様々なサポートを提供するものです。以下では、代表的な在宅介護サービスの内容を説明し、それぞれの役割や効果について整理します。
・訪問介護: 日常生活の援助、身体介護、医療的ケアなどを含むサービスです。訪問介護員が家庭を訪れ、日常生活を支援することで、介護者の負担を軽減します。家庭内でのケアが可能で、特に日常的な支援が必要な場合に役立ちます。
・訪問看護: 医療機関と連携し、看護師が自宅を訪問して医療ケアを提供します。病状の観察や医療処置、リハビリテーションなどを行い、病状が不安定な高齢者に対して安心できる支援を提供します。
・デイサービス: 日中に施設で提供されるサービスで、リハビリやレクリエーション、食事提供が含まれます。デイサービスを利用することで、家族の負担を軽減しつつ、高齢者が社会的な交流を持つ機会が増え、生活の質が向上します。
・ショートステイ: 短期間の入所サービスで、家族が休養や外出をする際に利用されます。介護者が一時的に介護から解放され、リフレッシュするために非常に重要なサービスです。
以上のサービスを組み合わせて利用することで、介護者の負担を軽減し、介護を受ける高齢者がより質の高い生活を送ることができます。
2) 外部施設介護サービスの使い方
外部施設介護サービスは、在宅介護が困難になった場合や、専門的なケアが必要な場合に活用されることが多いです。以下では、主要な外部施設介護サービスについて説明し、それぞれの特徴と利用の際のポイントを紹介します。
・特別養護老人ホーム: 常時介護が必要な高齢者向けの施設で、24時間体制のケアが提供されます。重度の要介護者に対して適切なケアが行われ、安心した生活が提供されます。
・グループホーム: 認知症高齢者向けの小規模施設で、家庭的な環境でのケアが行われます。少人数の生活環境で、認知症の進行を緩やかにする効果が期待されます。
・有料老人ホーム: 自費での入居が必要ですが、個別のニーズに応じた多様なサービスが提供されます。サービスの質が高く、プライバシーが守られる環境が整っています。
・医療型ケア施設: 医療と介護が一体となった施設で、医療的なサポートが必要な高齢者向けです。医療ケアが必要な高齢者にとって、安全で適切なケアを受けられる場所です。
これらの外部施設介護サービスを理解し、状況に応じて適切に選択することが、介護者と高齢者の双方にとって最適なケアを提供するための鍵となります。
※本書を、介護に関する書のバイブルと評価しています。
ほぼ10年前に出版され、その時に既に種々問題提起している書ですが、本質的な問題は、現在も何ら変わることがありません。
ご一読をお薦めします。
※『在宅介護-「自分で選ぶ」視点から』

2.自宅介護で不可能な介護と負担軽減介護への対応とケアマネージャーの活用法
自宅介護を行う中で、家族だけでは対応が難しい場面や、介護者自身の負担が大きくなりすぎる状況が生じることがあります。
ここでは、そのような状況に対応するための方法と、ケアマネージャーの活用方法について整理します。
これらの対策を講じることで、介護者と家族全体が無理なく介護を続けられるようサポートします。
1) 自宅介護で不可能な介護への対応
自宅での介護は可能な限り行いたいと考える家族が多いですが、専門的な知識や技術が必要なケア、または重度の身体介護などは、家族だけで対応するのが難しい場合があります。
そのような場合にどのようなサービスを利用できるかを紹介し、適切な対応を図るための指針を示します。
・専門的な医療ケア: 自宅での介護では対応が難しい医療ケア(例:点滴や褥瘡のケアなど)は、訪問看護を利用して行います。訪問看護師が専門知識を活かし、安全で効果的なケアを提供します。
・重度の身体介護: 移動や入浴といった重度の身体介護は、家族にとって大きな負担となります。これらのケアは訪問介護員に依頼し、専門的なサポートを受けることで、介護者の負担を軽減します。
・緊急対応: 急な病状の悪化や緊急の対応が必要な場合、地域包括支援センターや緊急対応サービスを活用します。これにより、迅速かつ適切な対応が可能となり、家族の不安を和らげます。
これらのサービスを適切に利用することで、自宅での介護が難しい状況でも安心して介護を続けることができます。
2) 負担軽減のためのサービス・施設利用
介護者が介護に専念するあまり、自身の健康や生活に影響が出ることがあります。
こうした事態を避けるため、介護者の負担を軽減するためのサービスや施設の利用が重要です。
以下に、そのようなサービスを紹介し、どのように活用すべきかを説明します。
・デイサービス: 日中のケアを施設に任せることで、介護者が自分の時間を持つことができます。これにより、精神的なリフレッシュや身体的な休息が可能となり、長期的な介護を支える基盤を整えることができます。
・ショートステイ: 家族が休息を取ったり、外出する際に短期間の入所サービスを利用することで、介護者は安心して休息を取ることができます。このような定期的な休養が、介護者の健康維持に不可欠です。
・リフレッシュサービス: 介護者自身が定期的に休息を取るためのサービスを利用することが推奨されます。これにより、介護疲れを予防し、介護の質を維持することができます。
これらのサービスを積極的に利用することで、介護者自身の健康を守りながら、質の高い介護を提供し続けることが可能になります。
3) ケアマネージャーの活用
介護に関する全体的なプランニングやサービスの調整は、ケアマネージャーの役割が重要です。
ケアマネージャーの活用により、適切なケアプランを作成し、家族が抱える問題を解決するためのサポートを受けることができます。以下に、ケアマネージャーの具体的な活用方法を説明します。
・ケアプランの作成: ケアマネージャーは、個々の状況に応じたケアプランを作成し、適切なサービスを組み合わせます。家族は現実的な問題や不安をケアマネージャーに伝えることで、より適切なケアプランの改善が可能となります。
・サービス調整: 複数の介護サービスを利用する場合、その調整は煩雑になりますが、ケアマネージャーのサポートによりスムーズに調整が行えます。これにより、サービスの利用が効率化され、家族の負担が軽減されます。
・アドバイス提供: ケアマネージャーは、介護に関する様々なアドバイスや情報提供を行い、家族の負担を軽減します。これにより、家族は必要な情報を得て、適切な判断を行うことができます。
このようにケアマネージャーとの連携を強くすることで、家族全体の介護負担を軽減し、より良い介護環境を整えることができます。

3.在宅訪問介護医療サービス、外部介護施設サービスの併用事例と利点
在宅訪問介護医療サービスとは、在宅で、外部事業者の訪問介護・訪問看護サービスを受けること、外部介護施設サービスは、デイサービスやショートステイなど、外部の介護施設に行って(送迎付きを含みます)介護サービスを受けることを意味しています。
それらを事情に応じて組み合わせて利用することで、負担の軽減など介護の改善を図ります。
1)併用事例の紹介
①デイサービスと訪問介護の併用
<ケース概要>
長女(45歳)はパートタイマーとして午前9時から午後3時まで働いています。
週5日勤務で、土日は休日です。彼女は夫と中学生の子供2人と同居しており、家族全員が日中は学校や仕事で家を空けるため、要介護2の母親の介護が必要です。
母親は軽度の認知症と、日常生活動作(ADL)に一部介助が必要な状態です。
<併用サービス>
・デイサービス:母親は週に3回、デイサービスに通い、日中は施設で過ごします。外部施設の活用です。
ここでは、リハビリテーションやレクリエーション活動を受け、認知機能の維持に努めています。
・訪問介護:夕方、デイサービスから帰宅後に訪問介護員が自宅を訪れ、入浴介助や夕食の準備を行います。
在宅介護としての利用形態です。
<メリット>
・長女は母親がデイサービスに通っている間、仕事に集中でき、家に帰ってきた際に母親のケアを訪問介護員に頼ることができるため、精神的・肉体的な負担が軽減されます。
・デイサービスでは母親に対して社会的な交流や適切なケアが提供され、訪問介護では個別のニーズに応じたケアが行われるため、母親のQOL(生活の質)が向上します。
<一層の改善提案>
・定期的なケアマネージャーとの相談: ケアマネージャーと定期的に相談し、デイサービスの日数を増やす、訪問介護の時間を調整するなど、母親の状態や家族の状況に応じた柔軟な対応を行うことが推奨されます。
・究極の選択肢
母親の介護が家庭での負担を超えるようになった場合、認知症が進行した際にはグループホームへの入所、要介護3以上の状態になった場合には特別養護老人ホーム(特養)への入所を選択肢として検討することが考えられます。
これにより、母親が専門的なケアを受けつつ、家族の負担を大幅に軽減できます。
②ショートステイと在宅介護の併用
<ケース概要>
70代男性Bさんは、要介護3の状態で、ほぼ車椅子生活を送っています。
彼の妻は70歳であり、主に在宅で介護を行っていますが、妻自身も高齢であるため、定期的に休息が必要です。
<併用サービス>
・ショートステイ: Bさんは月に一度、1週間程度のショートステイを利用しています。施設では専門的な介護が提供され、Bさんの状態に合わせたケアが行われます。
・在宅介護: ショートステイ期間以外は、妻が自宅で介護を行い、訪問看護師のサポートも受けています。
<メリット>
妻が定期的に休息を取ることで、長期的に介護を続ける体力と精神的余裕を保つことができます。
ショートステイ中にBさんは適切な医療と介護を受けることができ、症状の進行を抑えるためのリハビリも受けられます。
<一層の改善提案>
・介護サービスの再評価と変更
Bさんの状態に応じて、訪問看護や訪問介護の利用頻度を見直し、ショートステイの期間を調整することで、妻の負担をさらに軽減することができます。
また、週に数回デイサービスを追加することも検討する価値があります。
・究極の選択肢
Bさんの状態が悪化し、妻の介護負担が限界に達した場合、Bさんが認知症を伴う場合にはグループホーム、要介護3以上の状態であれば特別養護老人ホーム(特養)への入所も考慮するべきです。
これにより、妻が自宅での介護から解放され、夫婦の生活の質を保つことが可能になります。
以上の2つの例については、次項で、実際にかかる費用を試算しています。
確認してください。
2)併用による負担軽減
①サービスの組み合わせ方
<ケーススタディ>
60代の介護者Cさんは、要介護3の母親Dさんの介護を行っています。Cさんはパートタイムで働いており、母親の介護を続ける中で肉体的・精神的に負担が増してきました。
<改善提案>
・デイサービス利用回数の増加:母親のデイサービス利用日数を増やすことで、Cさんがより多くの時間を自身のケアや休息に充てることが可能になります。外部施設の利用です。
例えば、週5日のデイサービス利用を検討し、Cさんが働いている間、母親が安全でケアを受けられる環境を整えます。
・訪問看護の導入:母親の健康状態が不安定な場合、訪問看護師の定期的な訪問を加えることで、Cさんの不安を軽減し、適切な医療ケアが提供されるようにします。これも一種の在宅介護(看護)です。
・施設入所の選択肢:母親の介護がCさんにとって大きな負担となり、家庭での介護が困難になった場合、認知症の場合はグループホームへの入所、要介護3以上の場合は特別養護老人ホーム(特養)への入所を検討することができます。これにより、母親が専門的なケアを受けつつ、Cさんの負担を大幅に軽減できます。
②ケアマネージャーと連携
<具体例>
Eさんは、複数の介護サービスを利用して母親の介護を行っていますが、その調整に苦労しています。
ケアマネージャーと定期的に相談し、サービスの利用スケジュールを見直しました。
<改善提案>
・サービスの最適化: ケアマネージャーと連携して、訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの利用頻度や内容を定期的に見直すことが重要です。母親の状態やEさんの状況に応じて、より柔軟にサービスを組み合わせ、効率的に利用できるようにします。
・精神的支援の導入: Eさんが精神的に疲弊している場合、ケアマネージャーを通じてカウンセリングや介護者向けのサポートグループを紹介してもらうことで、精神的な負担を軽減することができます。
・施設への入所: 母親の状態が進行し、Eさんの負担が限界に達した場合、特別養護老人ホームやグループホーム(認知症の場合)への入所を考慮し、母親が適切なケアを受けながらEさんが負担を軽減できるようにします。
③柔軟な利用
<事例>
70代の夫Fさんは、要介護3の妻Gさんの介護を行っていますが、妻の症状の進行に伴い、介護の内容が変わってきました。
ケアマネージャーと相談しながら、訪問介護の回数を増やし、必要に応じてデイサービスからショートステイへの切り替えを行っています。
<改善提案>
サービスの柔軟性の向上:Fさんの負担をさらに軽減するために、ショートステイの利用頻度を増やすか、妻がより専門的なケアを受けられる特別養護老人ホームへの入所を検討することができます。
妻が認知症の場合は、グループホームへの入所も選択肢となります。
<将来の計画>
介護の負担がFさんの健康や生活に影響を及ぼしている場合、ケアマネージャーと相談し、妻の介護を継続するための長期的なプランを立て、必要に応じて施設への入所を検討します。
また、訪問看護やリハビリテーションのサービスを追加することで、妻の生活の質を向上させつつ、Fさんの負担を減らすことが可能です。
外部介護サービスや施設サービスの併用によって、介護者の負担を軽減し、質の高いケアを提供することが可能になります。
しかし、こうした負担軽減策による介護サービスの利用度・利用回数の増加や、居宅型施設への入所は、当然ながら経済的な負担の増加にもつながります。経済的負担の増加を見積り、その対策を考慮した上で、適切な判断を行うことが重要です。
また、経済的負担が増加することで、家族は自分自身で介護を行うことを選択せざるを得なくなり、最終的には介護離職に至る可能性もあります。
したがって、様々な改善策を検討し、ケアマネージャーにも相談することで、家族全体の負担を最小限に抑え、最も望ましい選択を行えるようにすることが必要です。
このようにして、介護者とその家族が、生活の質を保ちながら、持続可能な介護生活を送ることができるようにしていきたいものです。
4.介護施設利用と在宅介護の費用比較と費用対策
ここではもちろんごくごく一部ですが、介護施設や介護サービスを利用した場合、在宅介護・自宅介護を選択した場合、併用した場合、それぞれにかかる費用の試算例を挙げてみることにします。
1)費用の具体例
①施設介護の費用
<特別養護老人ホーム(特養)>
・費用構造:入所者の要介護度や所得によって異なりますが、基本的に月額10万〜20万円程度が一般的です。この費用には、介護サービス費、食費、居住費などが含まれます。
・メリット:24時間体制での介護が提供され、医療ケアも充実しているため、重度の要介護者にとって安心できる環境です。
・デメリット:待機者が多く、すぐに入所できない場合があります。また、所得が高い場合は負担が大きくなることがあります。
<有料老人ホーム>
・費用構造:月額20万〜50万円程度と、特養に比べて費用が高額です。入居一時金が数百万〜数千万円かかるケースもあります。サービス内容や施設の立地により費用が大きく変動します。
・メリット:サービスの充実度が高く、個別ニーズに応じたケアが可能です。また、プライバシーが保たれる居住環境が整っています。
・デメリット:高額な費用がかかるため、資金計画が重要です。
②在宅介護の費用
<訪問介護>
・費用:要介護度やサービス内容に応じて月額1万〜5万円程度。介護保険を利用することで自己負担は1割〜3割に抑えられます。
・特徴:自宅で介護を受けるため、家族との生活が継続できる点がメリットです。
<訪問看護>
・費用:1回の訪問で約3000円〜1万円程度。こちらも介護保険の適用があり、自己負担は1割〜3割。
・特徴:医療ケアが必要な場合に安心できるサービスです。医師との連携が重要です。
<デイサービス>
・費用:1日利用で約1000円〜3000円程度。食費や送迎費が別途かかる場合があります。
・特徴:日中の活動が充実し、リハビリやレクリエーションが提供されます。家族の介護負担を軽減します。
<ショートステイ>
・費用:1泊2日で約2000円〜1万円程度。利用日数により総費用は変動します。
・特徴:家族が休息を取るために利用することが多く、施設によっては長期利用も可能です。
2)在宅介護・外部介護施設併用時の費用負担
上記を受けて、今度は、併用した場合の費用負担試算例です。
①デイサービスと訪問介護の併用
<ケース概要>
長女(45歳)は要介護2の母親を介護し、週3回のデイサービスと、夕方の訪問介護を併用しています。
<費用の試算>
・デイサービス:週3回利用で月額約1万8000円(1回約1500円×12回)。
・訪問介護:週3回利用で月額約1万5000円(1回約1250円×12回)。
・総費用:合計約3万3000円(1割負担の場合)。2割負担なら約6万6000円、3割負担なら約9万9000円。
<改善後の費用>
デイサービスを週5回に増加し、訪問介護を夕方毎日利用する場合、月額の総費用は約5万5000円(1割負担の場合)に増加します。2割負担なら約11万円、3割負担なら約16万5000円になります。
<結論>
サービスを増やすことで母親のケアは充実しますが、経済的負担が増えるため、資金計画が不可欠です。
②ショートステイと在宅介護の併用
<ケース概要>
70代男性Bさん(要介護3)は、週に一度ショートステイを利用し、他の日は訪問看護と妻の介護を受けています。
<費用の試算>
・ショートステイ: 1泊2日を月4回利用で月額約1万6000円(1泊約4000円×4回)。
・訪問看護: 週2回利用で月額約3万2000円(1回約4000円×8回)。
・総費用: 合計約4万8000円(1割負担の場合)。2割負担なら約9万6000円、3割負担なら約14万4000円です。
<改善後の費用>
ショートステイの利用頻度を増やし、訪問看護を週4回に増加する場合、月額の総費用は約8万円(1割負担の場合)に増加します。2割負担なら約16万円、3割負担なら約24万円です。
<結論>
より多くのサービスを利用することで介護負担は軽減されますが、費用が増加するため、慎重な検討が必要です。
(参考ー1)介護保険基準に基づく自己負担割合
・1割負担:65歳以上で介護保険を利用している多くの人が該当。年収が一定以下の場合、負担が1割となります。
・2割負担:年収280万円以上の現役並み所得者が該当。
・3割負担:高所得者が該当し、年収340万円以上が目安。
(参考ー2):訪問看護の保険適用について
訪問看護の費用負担は、利用する状況に応じて介護保険または健康保険の適用が決まります。
・介護保険適用の場合
65歳以上で要介護認定を受けている場合、訪問看護は介護保険の適用となります。介護保険では、自己負担は1割から3割です(所得に応じて異なります)。
・健康保険適用の場合:
40歳以上65歳未満で、特定疾病(例:がん末期、筋萎縮性側索硬化症など)の場合や、65歳以上でも要支援1・2の認定を受けている場合は、訪問看護に健康保険が適用されることがあります。この場合、自己負担は通常3割です(年齢や所得による)。
どちらが適用されるかは、要介護認定の状況や年齢、病状によります。具体的な費用負担については、担当のケアマネージャーや医療機関に確認することが大切です。
以降の3)資金計画の立て方、および4)介護費用の節約方法については、一般論的な記述にとどまり、漠然として具体性に欠けるかもしれません。
前項で見て頂いたような種々の取り組みが、次項以降と繋がっていますので、その内容を思い起こして頂きながら、確認して頂ければと思います。
3)資金計画の立て方
a. 長期的な資金計画
・費用の試算:介護費用を具体的に見積もり、長期にわたる介護に備えた資金計画を立てることが重要です。例えば、毎月の費用を把握し、数年間にわたる総額を算出します。
・資産の整理:現在の資産や収入を確認し、どの程度の介護費用を捻出できるかを評価します。また、不動産の売却やリバースモーゲージの活用なども選択肢として検討します。
b. 助成制度の活用
・介護保険:介護サービス費用の大部分をカバーするため、積極的に利用しましょう。サービス利用に際しては、ケアマネージャーと相談し、必要なサービスを選定します。
・自治体の助成金:各自治体が提供する助成制度も活用します。例えば、低所得者向けの助成金や介護用品の補助金などがあります。地域包括支援センターで詳細を確認しましょう。
4)介護費用の節約方法
a. 低コストのサービス活用
・地域包括支援センターの利用:地域包括支援センターでは、無料または低額で受けられる介護サービスや相談窓口が提供されています。介護保険外のサービスも紹介してもらえることがあります。
地域包括センターや自治体の介護担当部署に積極的に問い合わせしてみましょう。
・デイサービスの一部利用:毎日利用するのではなく、週に数回の利用にとどめることで、費用を抑えることができます。また、短時間の利用も選択肢です。
b. 費用の見直し
・割引制度の利用:特定の介護サービス業者が提供する割引プランや、パッケージサービスを利用することで、費用を節約することができます。地域や施設によっては、セット料金やキャンペーンを実施している場合があり、これらを利用することで費用を抑えることができます。
・サービスの見直し、定期的チェックと適切な選択:ケアマネージャーと定期的に相談し、必要に応じてサービス内容を見直しましょう。利用者の状態や家族の状況に応じて、無駄なサービスを削減し、実際に必要なサービスに集中することで、コストを削減しながら最適なケアを提供できます。
介護施設の利用と在宅介護を組み合わせることで、介護者とその家族にとって最適な介護体制を築くことができます。
しかし、これに伴う費用の増加や経済的負担も考慮する必要があります。
特に、介護保険による自己負担割合や利用するサービスの頻度に応じて、費用が大きく変動するため、事前の資金計画と助成制度の活用が重要です。
また、定期的にサービス内容を見直し、必要に応じてケアマネージャーと相談しながら、柔軟に対応することで、費用を抑えつつ最適なケアを提供することが可能です。
つまりは、家族が無理なく介護を続けられるよう、経済的な側面も含めた総合的なプランを立てることが、介護離職を防止し、家族全体の生活の質を向上させる鍵となります。
一昨年100歳で亡くなった義母がサ高住と特養、2つの介護施設で必要とした費用について以下の記事で書いています。少し古い話ですが、何かしらの参考にはなると思います。
以上、今回は、実際に介護生活になるとどういう介護をどのように利用し、その費用はどのくらいになるか、などをイメージして頂けるように説明してきました。
次節は、このステップ3・第3章の総括として、重複する内容が多くなりますが、「最終判断の実践ガイド:チェックリストで“介護離職しない”選択へ」というテーマでの最終節となります。

ステップ3-5|最終判断の実践ガイド:チェックリストで“介護離職しない”選択へ
最後は、情報を集めるだけで終わらせず、家庭の条件に合わせて「決める」段階です。
介護は状況が変化します。
だからこそ、チェックリストで“今の現実”を見える化し、定期的に見直せる判断軸を作っておくことが、介護離職防止に直結します。
1.介護形態を決定する介護資源と条件を確認するー チェックリスト活用法
介護の場所や方法を選択する際には、以下のような介護資源と条件を確認することが重要です。
チェックリストを活用して、適切な介護形態を選びましょう。
1)<介護資源の確認>
・家族のサポート体制
家族全員が介護に対する意識を共有し、どれだけ協力できるかを確認することが必要です。例えば、介護に対する意欲や協力体制がどの程度整っているかを評価します。
・経済的資源
介護には多くの費用がかかるため、資金計画を立てることが重要です。具体的には、介護保険や助成金などの公的支援制度の活用を考慮し、自己負担額を把握しておきましょう。
・地域の介護サービス
地域で提供されているデイサービスや訪問介護などのサービスを確認し、それらをどのように活用できるかを検討します。これにより、家族の負担を軽減し、適切なサポートを受けることが可能になります。
2)<条件の確認>
・被介護者の状態
被介護者の健康状態や要介護度を評価し、どの程度の介護が必要かを把握します。また、精神的な安定性や認知症の有無も確認することで、最適な介護方法を選ぶ材料とします。
・住環境
自宅のバリアフリー化や介護設備の整備状況を確認し、必要に応じて改善することが求められます。例えば、手すりの設置や介護ベッドの導入などが挙げられます。
・介護者の負担
介護者自身の健康状態や精神的な負担を考慮することも重要です。介護者が無理をせず、長期にわたりケアを続けられるような環境づくりが必要です。
3)<チェックリストの活用法>
・優先順位の設定
介護において重要な項目を明確にし、優先順位を設定することで、必要なチェックリストを作成します。これにより、どの介護形態が最適かを選びやすくなります。
・選択肢の評価
チェックリストを活用して、各選択肢のメリット・デメリットを評価します。その結果、家族や被介護者にとって最適な介護形態を選ぶことが可能になります。
-------------------------------
上記の要素も反映させて、介護形態を決める上で正しく現状を把握し、望ましい結論に導く上での確認すべき課題/項目を整理し、チェックリストを作ってみました。
但し、チェックがかかった項目数や区分ごとのバランスなどによって、自動的にどういう介護形態が望ましいか、必要かという結論・結果がでるわけではありません。
これらの項目の内容を整理することが、望ましい介護の方法を決定する上での参考になる、あるいはできると理解しておくとよいでしょう。
【介護形態を決定するためのチェックリスト】
1. 被介護者の状態
□ 健康状態(病歴、現在の病状)
□ 介護の必要度(要介護認定のレベル)
□ 精神状態(認知症の有無、精神的な安定性)
2. 家族のサポート体制
□ 家族の介護に対する意識(意欲と協力体制)
□ 家族の健康状態(介護者の身体的・精神的健康)
□ 家族のスケジュール(仕事や他の家庭責任との両立)
3. 経済的資源
□ 介護にかかる費用の予算(短期・長期)
□ 公的支援制度の利用状況(介護保険、助成金)
□ 自己負担可能額(毎月の介護費用として支払える金額)
4. 住環境の整備
□ 自宅のバリアフリー化(手すり、スロープの設置)
□ 介護設備の整備状況(介護ベッド、車いす)
□ 介護スペースの確保(介護に適した部屋の有無)
5. 地域の介護サービス
□ 利用可能な訪問介護サービス(内容と費用)
□ 利用可能な訪問看護サービス(内容と費用)
□ デイサービスの有無と内容(リハビリ、レクリエーション)
□ ショートステイの有無と内容(短期入所、休養目的)
6. その他の考慮点
□ 介護者の負担軽減策(レスパイトケアの利用)
□ 緊急時の対応計画(緊急連絡先、緊急時の対応策)
□ 介護者と被介護者の相性(相互理解とコミュニケーション)
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2.介護する人、介護される人の相互理解と介護制度・介護サービス生活の理解
介護する人と介護される人の相互理解を深めることが、スムーズな介護生活の鍵です。
また、介護制度や介護サービスを理解し、効果的に活用することも重要です。
1)<相互理解の促進>
・コミュニケーションの確立
定期的に話し合い、介護する側とされる側の気持ちやニーズを共有することが重要です。
例えば、被介護者の不安や不満を聞き取り、介護者のストレスや負担についても理解を深めることで、お互いの信頼関係を築きます。
・感情の理解
介護される人の不安や不満、介護する人のストレスや負担に対して共感し、理解することが大切です。
このような感情の理解が、円滑な介護生活を支える基盤となります。
2)<介護制度の理解>
・介護保険制度
介護保険制度の仕組みや利用方法を理解することで、適切なサービスを選びやすくなります。
これにより、被介護者に適切ななケアを提供するための支援を受けることができます。
・公的支援制度
自治体や国が提供する支援制度を活用し、経済的な負担を軽減することも重要です。
例えば、助成金や公的介護保険を適切に利用することで、家庭の負担を減らすことが可能です。
3)<介護サービスの理解>
・訪問介護・訪問看護
在宅で提供されるサービスの内容と利用方法を理解し、被介護者の生活の質を向上させることが重要です。
適切なサービスを選ぶことで、被介護者にとって最適なケアを提供できます。
・デイサービス・ショートステイ
外部施設で提供されるサービスの利用方法を学び、被介護者と家族のニーズに合ったサービスを選ぶことが求められます。
これにより、家族の負担を軽減し、介護離職を防ぐためのサポートを得ることができます。
この中でも触れましたが、一般的に「コミュニケーション」という言葉で簡単に片づけてしまいがちですが、実際には、そう簡単にコミュニケーションを持ち、しっかり意思疎通すること、同意を形成することは難しいのが現実です。
介護する人、介護される人とシンプルな関係にとどまらず、他に家族がいる場合、複雑かつ困難になる可能性が増します。
現在住んでいる場所が違うこともありますし、もちろん性格や仕事・預貯金等資産その他、種々の利害関係も絡み合って、教科書のようにコミュニケーションを通して良い人間関係を作ることは、むしろ難しいのではと思います。
前項で提案した<チェックリスト>の構成項目を見ただけでも、そのすべてについてコミュニケーション課題とし、必要な決定や確認を行うことが簡単ではないことが分かると思います。
その改善解決について詳述する必要があると思いますが、機会を改めて行いたいと思います。
チェックリストの各項目の意味するもの、内容などを見える化する必要もありますし。
3.介護離職防止に役立つ在宅介護と施設介護の組み合わせとその他の要素
介護離職を防ぐためには、在宅介護と施設介護を組み合わせることが有効です。
また、その他の要素も考慮する必要があります。
一応、以下の記事を参考にして頂ければと思いますが、要点のみ、確認の意味でメモしておきます。
⇒ 自宅介護と施設介護の併用方法と費用比較:結城康博氏の視点から見る使い方と負担軽減策 (kaigoshukatsu.com)
1)<在宅介護と施設介護の組み合わせ>
・併用の利点
在宅介護と施設介護を組み合わせることで、家族の負担を軽減し、被介護者に最適なケアを提供できます。
例えば、週に数回のデイサービス利用や、定期的なショートステイの活用が効果的です。
・併用事例
週に数回デイサービスを利用し、必要に応じてショートステイを組み合わせることで、家族と被介護者双方の負担を分散させることができます。
このような併用事例を参考に、自宅介護と施設介護のバランスを取ることが重要です。
2)<その他の要素>
・フレキシブルな介護計画
介護の状況は常に変わる可能性があるため、状況に応じて柔軟に介護計画を変更することが大切です。定期的に見直しを行い、最適な介護計画を維持しましょう。
・職場との連携
介護離職を防ぐためには、職場の理解とサポートを得ることが必要です。
上司や同僚とのコミュニケーションを通じて、介護と仕事を両立させるための協力を求めることが大切です。
・地域資源の活用
地域の支援サービスやボランティア活動を活用し、家族の負担を減らすことも重要です。
地域に根ざした支援ネットワークを活用することで、介護生活の質を向上させることができます。
4.結城康博氏著『在宅介護』「最終章これからの在宅介護はどうあるべきか」による提言
最後に、先の記事でも取り上げましたが、結城康博氏の『在宅介護ー「自分で選ぶ」視点から』の「最終章 これからの在宅介護はどうあるべきか」から、今後の在宅介護のあり方についての提言を総括の一部として紹介します。
1)<在宅介護の未来>
・共生社会の実現
高齢者と若者が共に支え合う社会の構築を目指すことが、これからの在宅介護の重要な課題です。
世代を超えた共生社会の実現が、高齢者の生活の質を向上させます。
・地域包括ケアシステム
地域で完結するケアシステムの整備が、今後の在宅介護においてますます重要となるでしょう。
地域全体で支えるケア体制を構築することで、持続可能な介護を実現します。
2)<家族介護の支援>
・家族の負担軽減
家族介護者の負担を軽減するための具体的な支援策が求められます。
例えば、レスパイトケアや訪問介護の充実が、家族の負担を軽減する鍵となります。
・介護者の育成
介護者の教育・研修を充実させ、質の高い介護を提供できる人材を育成することが重要です。
介護者のスキル向上が、被介護者の生活の質を向上させます。
<社会全体での取り組み>
・介護の社会化
介護を家族だけでなく、社会全体で支える体制を整備することが求められます。
介護の社会化が進むことで、家族の負担を大幅に軽減することが可能です。
・持続可能な介護制度
持続可能な介護制度を構築し、将来の高齢化社会に対応できるようにすることが重要です。
制度の改善と適切な財源確保が、長期的な介護の安定を支える鍵となります。
本章で取り上げた結城康博氏の議論は、介護を社会全体で支える必要性を強く示しています。
同氏の提言は、
介護を家族だけの問題として抱え込ませないための
重要な問題提起であり、制度設計を考えるうえで大きな示唆を与えてくれます。
「介護を社会化する」と、専門家や研究者が好んで用いる「社会化」をキーワードとしていることがそれを物語っています。
しかし、私自身は、この「社会化論」に無条件で賛成はしていません。
なぜなら「社会化」の「社会」は均一の条件であることを意味しませんし、必ずばらつきが生じます。
「社会化」という言葉が示す内容は必ずしも一様ではなく、
実際には自治体ごとの制度差や運用の違い、地域資源の多寡、担い手の質と量などによって、
支援の実態には大きなばらつきが生じています。
その例を挙げると、
・関連する法律・法令・法規も自治体により違いがあります。
・社会の枠組みを、ボランティアやNPOに広げると、やはり違いがあります。
・何より、「社会」の中心・軸であるべき国・国政・行政が政党により、政権により政策にブレが生じます。
これに、
・企業が「社会」に加えられると、一層その格差・違いが拡大します。
そのため、本章では、
結城氏の提言を一つの重要な視座として参照しつつも、
各家庭が置かれている条件や制約を前提に、現実的に選択可能な介護の形を検討することを重視しています。
すなわち、最終的に
「どの介護の形を選び、どこまで社会資源を使い、どこに無理が生じているのか」を判断するのは、
制度や専門家ではなく、
介護に関わる当事者とその家族自身です。
本章は、その判断を
感情や思い込みではなく、情報と現実認識に基づいて行うための材料として位置付けています。

是非、以下の2つの介護体験記も参考にしてください。
関連情報が満載です。
⇒ 93歳義母「サ高住」介護体験記|2015年の記録と気づき – Life Stage Navi
⇒ 98歳義母「特養」介護体験記|コロナ禍における施設介護生活の記録 – Life Stage Navi
まとめ|介護離職を防ぐための“場所・人・お金”の決め方(第3章総括)
介護離職を防ぐうえで重要なのは、「気合い」よりも 設計です。
本章で確認した要点は、次の3つに集約できます。
1.場所は二択ではなく“組み合わせ”で考える
在宅/施設のどちらが正解かではなく、デイサービスやショートステイ、訪問介護・訪問看護などを組み合わせ、家族の生活が破綻しない形を作ることが現実的です。
2.人は“選ぶ”より“頼り方を決める”
ケアマネージャーに希望条件(介護者の就労、限界ライン、優先順位)を言語化して渡せるかで、ケアプランの質が変わります。
遠慮せず、家族の事情も含めて共有して構いません。
3.お金は“怖がる”より“見積もる”
併用は負担を減らしますが、サービスを増やせば自己負担も増えます。
自己負担1割・2割・3割の前提を確認し、増えた分をどう吸収するか(助成・制度・家計設計)まで含めて判断することが大切です。
介護は、家庭の条件によって最適解が変わります。だからこそ、結論は一回で固定せず、「状況が変わったら組み替える」前提で、場所・人・お金を更新していきましょう。
次章(ステップ4)では、こうした設計を支えるために欠かせない 自治体・地域の支援制度を整理し、使いこなす方法へ進みます。
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介護離職はなんとしてでも防ぐべき。
これを何とか現実のものとできるように、これからの介護に備えて頂きたい。
そういう目的・意図でこのシリーズ「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」に取り組んでいます。
そのための究極的なポイントは、
・絶対に介護離職はしない、せずに望ましい介護を実現し、望ましい介護生活を送る、という強固な意志を持つこと、
・そのための準備・備えを、これからの日常生活を通して着実に実践する、と決意すること
にあります。

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