「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ|ステップ7
はじめに
介護離職を防ぐには、職場の制度や働き方の調整だけでは足りません。
現場では、介護が始まった瞬間に「家族の中で誰が何をするか」が決まらず、連絡や判断が混乱し、負担が一人に偏った結果、仕事の継続が難しくなるケースが少なくありません。
介護は突然始まり、長期化しやすい課題です。
だからこそ必要なのは、理想論ではなく**家族の現実に合った“協力体制の設計”**です。役割分担、情報共有、費用負担、緊急時対応、外部サービスの使い方まで、最初に「枠」を作るだけで混乱は大きく減り、仕事も続けやすくなります。
本章では、次の4つを“実務として回る形”で整理します。
- 家族構成に応じた協力モデルと、偏りが起きるポイント
- 家族会議とLINE等を使った情報共有の具体的な型
- 介護休業・介護休暇を「介護を全部やる時間」ではなく「体制構築の時間」として使う方法
- 家族がいない/頼れない場合に、自治体・地域包括・専門職で“協力者を外部に設計する”方法
結論を先に言えば、介護離職を防ぐ家族協力は「仲の良さ」よりも、“決める項目を固定し、仕組みに落とすこと”で決まります。
※本記事は、Webサイト・介護終活.com(https://kaigoshukatsu.com)で公開していた「第7章の関連記事(旧:7-1〜7-4)」を、重複を整理しつつ統合・加筆修正した“改訂統合版”です。
旧記事は、内容の重複を避けるため、順次、非公開化/リダイレクト/canonical設定などで整理します(検索エンジン向けにも重複を残さない運用を行います)。

ステップ7-1|家族で回す介護体制の作り方:役割分担・家族会議・LINE共有の実務テンプレ
本節では「家族がいる場合」を前提に、役割分担と意思確認の考え方を整理します。
家族がいない場合の具体策は、ステップ7-4でまとめています。
介護が始まったときに最初に起きる問題は、「介護そのもの」よりも、連絡と判断の混乱です。
家族の誰かが“とりあえず”動き始めると、負担が固定化し、仕事や健康が削られていきます。
このステップでは、家族構成のモデル(5類型)を手がかりにしながら、家族会議で決める項目テンプレとLINEで記録が残る情報共有の型を用意し、介護が長期化しても回る体制を作ります。
1.家族介護において介護を担う家族構成のモデル(5類型)
このセクションでは、家族内での介護において、どのような家族構成が存在し、それぞれの状況に応じた適切な役割分担や対応方法を考えるための基盤を提供します。
家族構成に応じたモデルを理解することで、家族間での連携をスムーズにし、介護に関わる負担を効果的に分担することができます。
以下、具体的な家族モデル5類型とその特徴を説明します。
モデル1):両親ともに介護が必要な場合
<家族構成>:両親がともに要介護状態(要支援も含みます)であり、子どもたち世代が介護を支えるケースです。
・同居している場合: 同居する子どもが主な介護者となるケースです。
日常的な介護を担当しながら、兄弟姉妹がいる場合は、「週末対応」「通院付き添い」「事務手続き」「費用支援」などで分担を決める必要があります。
・近隣に居住している場合: 近隣に住む子どもが頻繁に訪問し、介護をサポートします。
定期的な訪問や付き添いが求められます。
反面、負担が固定化しやすいので「休む週」を最初に設定するなど、工夫や協力が大切です。
・遠方に居住している場合: 遠方に住む子どもは、可能な範囲で定期的に訪問し、介護者の負担を軽減するための支援や協力を行います。
一方、「現場介護」よりも「定期帰省で穴を埋める」「契約・手続き・費用」を担うと分担が機能しやすいですね。
このように、具体的なサポート方法を話し合い、負担が集中しないようにすることが基本となります。
モデル2): 両親のうち片方が介護を必要とする場合
<家族構成>:両親が存命ですが、片方の親が要介護状態にあるケースです。
もう一方の親が主な介護者となることが一般的ですが、子どもがその役割を果たすケースも多いでしょう。
主介護者が健康である場合、被介護者よりも対応ができる場合など、個々の状況は違うでしょう。
動ける方の配偶者が主介護者になりやすい一方で、“老老介護への移行”が起こりやすいため、子ども世代は「今は軽いから…」で放置しないことが重要です。
・同居している場合: 同居している子どもがいる場合は、介護を担うことができる状態にある親と協力して介護を分担します。
介護の負担を分け合うことができるメリットがあります。
・近隣に居住している場合: 近隣に住む子どもがサポート役として、定期的に介護を分担します。
介護を担うことができる健康状態にある親の負担を軽減するための協力が重要になります。
同居・近隣とも、日常の補助(買い物、通院、見守り)を分担し、主に介護を担っている親の疲弊を防ぎます。
・遠方に居住している場合: 遠方に住む子どもが月や週に一度等訪問し、介護者である親の休息の確保や相談相手になるなどのサポートを行います。
頻繁な訪問が難しいため、電話・LINEで状況確認の頻度を決め、外部サービス導入の条件等を共有しておきます。
モデル3):片親のみが存命でその親が介護を必要とする場合
<家族構成>: 片親のみ存命であり、その親が要介護状態にあり、子ども世代で支えるケースです。
・同居している場合: 同居している子どもが全面的に介護を担うことが一般的で、負担が集中しやすいモデルです。す。
外部支援も積極的に活用することが必要で、早期に外部支援を組み込みやすい体制にします。
・近隣に居住している場合: 近隣に住む兄弟姉妹が定期的に訪問し、主な介護者をサポートします。
介護者が孤立しないように連携が大切です。
・遠方に居住している場合: 遠方に住む子どもが、定期的に訪問し、介護者の負担軽減を図ります。
サポートが必要なタイミングを重視するとともに、定期的に話し合うことも必要です。
近隣/遠方ともに訪問頻度と費用負担を明確化しないと、関係がこじれやすいので、役割を“言語化”して決める必要があります。
モデル4):老老介護の場合
子どもに頼れない/子どもがいない/子どもが介護に関与できないなど、夫婦間で介護を担うモデルです。
超高齢化社会の急速な進行で、高齢夫婦間の介護問題が、大きな問題になってきています。
夫婦間のコミュニケーションは、一般的にはまだ取りやすいですが、夫婦関係や要介護状態によっては、コミュニケーションでは改善・解決できない問題が存在することが多いと思われます。
例えば、体力・判断力の限界が来る、認知症が現れるなど、多く、対応や解決が困難になることも挙げられます。
こうした場合に備えて、早い段階から 自治体の介護担当部門や地域包括センター、介護相談員(ケアマネージャー)など、外部の相談先を“日常の連絡先”として組み込み、コミュニケーションを持つことができるようにしておくことが重要です。
モデル5):ひとり介護・自分介護の時代の対応
頼れる家族がいない、または家族がいても協力が得られず、すべて自分ひとりに親の介護負担が一人に集中するケースです。
少子超高齢化社会において、既に親子とも高齢者という世帯が急増しています。
この場合、家族間のコミュニケーションを行う基盤・資源がないわけです。
介護される親と介護する人自身とのコミュニケーションにすべてがかかっているわけです。
それだけに濃密な、具体的な、かつ率直なコミュニケーションと意思疎通・意志確認が不可欠になります。
この状態は、現在親の介護に関わる人々も、親の介護負担がない人々も、自身が介護を必要とする状況になった時に、同様に切実な問題になることも理解しておく必要があります。
家族が居なくなった時、一体誰とコミュニケーションをとるべきか、取ることができるか。
その備えが絶対に必要になるわけです。
そこでは、「家族会議」ではなく「外部を含めた協力設計」が前提になります。
自治体の介護担当部門や地域包括センター、介護相談員(ケアマネージャー)などの外部のコミュニケーション先を早めに確認・確保し、行動できるようにしておくべきです。
これらのモデルを参考に、それぞれの家族構成に応じた役割分担と対応策を考えることで、家族全員が協力して介護を行う体制を築くことができればと思います。
場合によっては、介護される親の兄弟姉妹等親類縁者や介護する親の子、介護される親の孫が介護に関与・協力することなど、多様な状況も十分あり得ます。
2.現実に起きがちな偏り|理想モデルが機能しない
モデルを示しても、現実には次のような偏りが頻発します。
1)同居者(または近隣者)に負担が集中する
「一番近い人がやる」構図になり、仕事・家庭・健康が削られます。
2)兄弟姉妹等家族間の温度差が大きい
「仕事が忙しい」「家庭がある」「距離がある」など理由は様々ですが、結果として現場が孤立します。
3)“お金だけ”で支援する形に偏る(または支援がゼロ)
金銭支援が有効なこともありますが、現場の負担軽減にならない場合も多く、揉めやすいポイントでもあります。
4)親本人の意思が不明確で、話が進まない
介護の話題を避ける親も少なくなく、ここで先送りが起きると、突発事態で破綻しがちです。
介護の話し合いが進まなくなる大きな要因の一つが、
「親本人の意思がはっきりしない」「何を望んでいるのか分からない」という状況です。
・介護の話題を避ける
・「まだ大丈夫」「考えたくない」と先送りする
・家族の提案に対して明確な反応を示さない
こうした状態は非常に多く見られます。
しかしこれは、親本人が非協力的なのではなく、
「決断を迫られる聞き方」になっていることが原因である場合が少なくありません。
そのため、意思確認は「正解を決める話し合い」ではなく、
“選択肢を狭め、仮決めをするための会話”として行うことが重要です。
①「できないこと」ではなく「してほしいこと」を3つ聞く
いきなり
「何ができなくなった?」
「施設に入る?」
と聞くと、防御的になりやすく、話が止まります。
そこで、次のように聞き方を変えます。
〈聞き方テンプレ〉
「今の生活で、これからも“続けてほしいこと”を3つだけ教えてほしい」
例)
・自分の部屋で寝たい
・お風呂はできれば家で入りたい
・外出や散歩は続けたい
※ここでは、実現可能かどうかは問いません。
“希望を言語化すること”が目的です。
②最低限この2択だけは必ず確認する
介護の設計上、どうしても避けて通れないのが、
**「自宅か/施設も視野に入れるか」**という大枠の方向性です。
ここは細かい条件ではなく、二択だけを確認します。
〈聞き方テンプレ〉
「今すぐじゃなくてもいいけれど、
・できるだけ自宅で続けたいか
・必要なら施設も選択肢に入れてよいか
どちらに近いかだけ、教えてほしい」
・「自宅がいい」
・「施設も全く否定ではない」
・「まだ決められない」
どの答えでもOKです。
“どちらも拒否されない”状態を作ることが重要です。
③決められない場合は「1か月だけ試す」で合意する
親本人がどうしても決められない場合、話し合いを止めてしまうのが最も危険です。
その場合は、「決定」ではなく「試行」に切り替えます。
〈合意テンプレ〉
「じゃあ、決めるのは後にして、
まず1か月だけ、このサービス(デイ/訪問/ショートなど)を“試してみる”ということでどう?」
・合わなければやめてよい
・嫌なら別の方法に変えてよい
・1か月後に必ず見直す
と伝えることで、心理的抵抗が大きく下がります。
④「決められない」は“意思表示”として扱う
重要なのは、「決められない=無関心・拒否」ではないという理解です。
・不安が強い
・情報が多すぎる
・変化が怖い
という状態であることがほとんどです。
そのため、家族側は「決めないなら進めない」ではなく、
「決められない前提で、最小単位から進める」姿勢を取ります。
まとめ(この対策の要点)
親本人の意思が不明確な場合は、無理に結論を出そうとせず、次の3点を徹底します。
▢「してほしいこと」を3つ聞く
▢「自宅か/施設も選択肢か」の大枠だけ確認する
▢ 決められなければ「1か月だけ試す」で進める
この聞き方を使うだけで、話し合いが止まるケースの多くは回り始めます。
なお、この内容は、
・家族会議の議事メモ
・LINEノートの「本人の希望」欄
にそのまま転記しておくと、
「言った/言わない」や認識ズレの防止にも役立ちます。
このように、家族それぞれの思惑や事情があります。
こうした偏りは「家族が悪い」のではなく、構造的に、あるいは心理的に起きやすいものです。
だからこそ、最初から偏りを前提にして、決めるべき項目を固定化します。
3.家族間での定期的な話し合いの重要性|家族会議の有効な実践法
家族間でのコミュニケーションを定期的に行うことは、介護負担を軽減し、役割分担を効果的に行うために欠かせません。
毎月1日や毎週日曜日など、家族全員が予定を合わせやすい日を設定することが有効です。
この項では、家族構成モデルに応じた話し合いの目的と内容を明確にし、定期的なコミュニケーションを実践するための方法を紹介します。
1)家族モデルに応じた話し合いの目的と内容
これらのモデルを参考に、それぞれの家族構成に応じた役割分担と対応策を考えることで、家族全員が協力して介護を行う体制を築くことができます。
なお、場合によっては、介護される親の兄弟姉妹等親類縁者や介護する親の子、介護される親の孫が介護に関与・協力することなど、多様な状況も十分あり得ます。
・モデル1):両親ともに介護が必要な場合
両親が共に要介護の場合、その子である兄弟姉妹間で介護負担をどのように分担するかを話し合うことが必要です。
訪問頻度の調整や、外部支援の導入タイミングを共に決定します。
また、介護に関する情報を家族全員で共有することが重要です。
・モデル2):両親のうち片方が介護を必要とする場合
片方の親が要介護の場合、健康な親が主な介護者となりますが、その負担を軽減するために子どもたちと共に話し合い、役割分担を決めます。
また、将来的な介護計画についても検討し、状況に応じた対応策を考えることが重要です。
・モデル3):片親のみが存命でその親が介護を必要とする場合
片親のみが存命で要介護状態の場合、同居する子供が全面的に介護を担うことが多いですが、他の兄弟姉妹との連携を密にし、定期的に訪問スケジュールを調整することが必要です。
また、外部支援の利用についても定期的に話し合い、適切な対応を行います。
しかし、一応兄弟姉妹との関係と書きましたが、実際には、同居する子とその子(孫)に介護負担が集中し、他の家族が積極的に関わることはむしろ少ないのではと思われます。
そのため、家族間のコミュニケーションもそう簡単にいかないケースも多いのではないでしょうか。
代わりに、金銭的負担でカバーする協力関係もあるかもしれませんが、やはりそれぞれの家族構成と事情に左右されると思います。
前項のモデル4)モデル5)のような、家族間のコミュニケーションができない場合の対策については、別途取り上げることにします。
2)定期的な話し合い(家族会議)の設計
① 頻度は「月1回+緊急時」で十分
最初から頻繁にやろうとすると続きません。
・月1回(オンラインでもOK):状況確認と調整
・緊急時:入院・転倒・認知症症状の変化など
② 議題は固定化する
毎回ゼロから話すと疲れます。
以下の順で回すと現実的です。
・親の状態変化(身体・認知・生活)
・今月困ったこと(3つまで)
・介護サービスの稼働状況(ケアプラン、デイ、訪問)
・主介護者の疲労度・仕事への影響
・次月の担当表(通院、買い物、見守り、手続き)
・外部支援を増やすかどうか(トリガー確認)
・決定事項(誰が・いつまでに)
③ “議事録が残る”だけで揉めにくくなる
LINEのノートやメモでも構いません。
「言った/言わない」を防げるだけで精神的負担が減ります。
3)家族会議で“必ず決める”項目テンプレ|揉める前に枠を作る
話し合いは「気持ちを伝える会」だけだと続きません。
介護離職防止の観点では、最低限、次の項目を“決定事項”として残すことが重要です。
▢主介護者(現場責任者):誰が窓口になるか
▢連絡責任者(情報整理役):LINEまとめ、記録、連絡網
▢手続き責任者:介護認定、更新、契約、支払い管理
▢通院・緊急時担当:平日/休日、昼/夜の担当表
▢費用負担の基本方針:実費・交通費・サービス費・立替の清算ルール
▢外部支援導入の合図(トリガー):
・夜間見守りが必要になった
・転倒や救急搬送が増えた
・主介護者が睡眠不足・体調不良
・仕事に支障が出始めた
▢見直し日:月1回など、必ず定期で更新する
このテンプレを決めるだけで、介護の混乱はかなり減ります。
4)LINEグループの運用(介護連絡を“回る形”にする)
家族全員が効率的にコミュニケーションを取るために、LINEグループを作成することが非常に効果的です。
グループ内では、介護に関する情報共有、スケジュールの調整、緊急時の連絡などを行います。
介護に関連する連絡のみを行うガイドラインを設定することで、グループの運用がスムーズになります。
通知設定を適切に行い、重要なメッセージを見逃さないようにしましょう。
そこで介護の現状や必要な調整事項を確認し、リマインダー機能を活用して定期的な話し合いのリマインダーを設定しておくと、忘れずに実施できます。
① グループの作り方とメンバー
・基本は「介護に関わる人」+必要なら「ケアマネ(連絡方法は別)」
・親本人が見て混乱する場合は、家族だけのグループにして、親には別途共有します。
② 運用ルール(これだけ決めると回ります)
・介護連絡専用にする(雑談は控えめ)
・緊急/重要/共有の3分類を冒頭に付ける
・“今日やったこと”は短文で残す(例:通院、薬、食事量)
・写真共有は「必要な範囲」で(ケアプラン、請求書など)
・反応が遅い人を責めない(代わりに担当表で補う)
③ 情報の置き場所を作る(散らからない工夫)
・ノート機能に「担当表」「連絡先」「服薬」「病院情報」「ケアマネ連絡」を固定
・家族会議の決定事項を“ノートに転記”して、誰でも見られる状態にします。
4.介護離職を防ぐ役割分担の具体例とストレス管理方法
介護離職を防ぐためには、家族全員が協力して役割分担を行い、介護者のストレスを軽減することが重要です。
この項では、家族構成モデルに基づいた具体的な役割分担の方法と、ストレス管理の手段について考えます。
1)家族モデルに応じた役割分担の具体例
・モデル1):両親ともに介護が必要な場合
両親が共に要介護状態の場合、同居している子どもが日常的な介護を担当し、近隣に住む子供が週末に交代で介護を行います。
遠方に住む子どもが月に一度訪問し、介護者の負担を軽減する役割を果たします。
定期的な休息を確保するために、ショートステイなどの外部支援も活用します。
・モデル2):両親のうち片方が介護を必要とする場合
健康な親が主な介護者となりますが、同居または近隣に住む子どもが週末にサポート役として介護を分担します。
遠方に住む子どもは月に一度訪問し、介護者の休息を確保する役割を担います。
健康な親の負担を軽減するために、外部支援の導入や、定期的なリフレッシュの機会を設けることが大切です。
・モデル3):片親のみが存命でその親が介護を必要とする場合
同居している子どもが主な介護者となりますが、近隣または遠方に住む兄弟姉妹が週末や休日に交代で介護を担当します。
訪問介護サービスを併用することで、日常的な負担を軽減し、介護者が孤立しないようにすることが大切です。
また、介護者の体調や精神状態に応じて、介護計画を柔軟に見直すことも重要です。
以上のモデルは、あくまでも参考程度のことで、実際には、個々の介護される親とその家族の事情・状況により介護の協力や分担の仕方・方法はすべて異なります。
まさに、しっかりコミュニケーションをとって頂き、ムリなく、かつ介護を受ける親との良好な関係を保ち、望ましい時間を共有できる介護生活を送って頂ければと思います。
2)ストレス管理方法
①休息とリフレッシュの確保
定期的に介護者が休息を取れるようにすることが大切です。
ショートステイやデイサービスの利用を計画的に導入し、介護者が心身ともにリフレッシュできる時間を確保します。これにより、長期的な介護においても介護者の健康を維持することができます。
②地域グループへの参加や外部とのコミュニケーションの確保
地域の支援グループやオンラインでのサポートコミュニティに参加することで、同じ立場の人々と情報交換をし、孤独感を軽減することも効果的です。
介護者の精神的な負担を軽減するために、カウンセリングやメンタルヘルスケアの支援を積極的に利用することも推奨されます。
③柔軟な役割分担の見直し
介護者の体調や家庭の状況が変化した場合には、役割分担を見直すことが重要です。
定期的な家族会議やコミュニケーションを通じて、現状に合った役割分担を再調整し、無理のない介護体制を維持します。
これらのストレス管理方法を実践することで、介護者が無理なく介護を続けることができ、介護離職のリスクを低減することができます。家族全員で協力し、負担を分かち合いながら進めることができればと思います。
4)役割分担の具体例(モデル別のイメージ)+見直しトリガー(再掲)
用意していた役割分担が、何かしらの理由で継続・維持することが困難になるケースも多々あります。
以下のような状況が現れたり、感じた場合、早期に対応する方策・対策を、家族間の協力で、あるいは外部の支援協力を要請しましょう。
<見直しトリガー(必ず共有)>(再掲)
・主介護者が疲弊(睡眠不足、通院が必要、欠勤増)
・親の状態悪化(転倒、夜間徘徊、食事低下)
・仕事に支障(早退・休職検討)
→ これが出たら、“外部支援を増やす”のが優先です。
5.介護者のメンタル不調を早期に察知する|「頑張りすぎ」を前提にしたケア設計
介護離職を引き起こす直接の原因は、介護量そのものよりも、
「疲弊していることに本人も周囲も気づけない状態」であることが少なくありません。
介護は、「もう少し頑張れる」「今は大丈夫」という自己判断で無理を重ねやすく、
気づいた時には、仕事・健康・人間関係のいずれかが限界に近づいていることも多いのが現実です。
そのため、メンタルケアは気合いや根性論ではなく、仕組みとして“見える化”しておく必要があります。
1)要注意サイン(セルフチェック+家族チェック)
以下の項目が2つ以上当てはまる場合、すでに負荷が強くなっています
▢ 睡眠が浅い/夜中に何度も目が覚める
▢ 食欲が落ちた、または過食気味になっている
▢ イライラ・焦り・無力感が強くなった
▢ 仕事での集中力低下、ミス、欠勤・早退が増えた
▢ 介護以外の人付き合いを避けるようになった
▢ 「自分がやらないと回らない」と感じ続けている
※これは「弱さ」ではなく、介護負担が構造的に偏っているサインです。
2)家族・外部が気づくための共有ポイント
家族がいる場合は、家族会議やLINE共有の中で、次の一言を定期的に確認します。
・「最近、しんどさは10段階で言うとどれくらい?」
・「仕事に影響が出始めていない?」
・「今の体制、3か月続けられる?」
数値化・期間指定をすると、無理を言語化しやすくなります。
3)“休む・頼る”を決断するための行動ルール
次のいずれかに該当したら、体制を見直す合図(トリガー)とします。
・主介護者が睡眠不足・体調不良を訴え始めた
・欠勤・遅刻・早退が増えた
・感情的な衝突が増えた
・「もう限界」「逃げたい」という言葉が出た
→ この時点でやるべきことは、
「もう少し頑張る」ではなく、「外部支援を増やす」です。
4)相談先の具体例(迷わないために)
・地域包括支援センター
・ケアマネージャー(家族の疲弊も含めて伝える)
・かかりつけ医(睡眠・不安・抑うつ症状)
・職場の産業医・人事(介護休業・時短・在宅相談)
※「介護の相談」として話して構いません。
メンタル不調を単独の問題として抱えないことが重要です。
介護におけるメンタルケアは、「頑張らないための甘え」ではなく、
仕事と生活を守るための“安全装置”です。
無理が見えた時点で支援を増やせる体制を、最初から設計に組み込んでおくことが、介護離職防止の要になります。
まとめ
家族介護で一番避けたいのは、「近い人が抱え続ける」状態です。
そのためには、家族の関係性や善意に頼るのではなく、
・決める項目を固定する(主介護者/連絡/手続き/緊急対応/費用/外部支援トリガー)
・情報共有を“記録が残る形”にする(LINEノート等)
・疲弊や状態悪化が見えたら、外部支援を増やす
という“型”を先に作ることが最短ルートです。

ステップ7-2|介護休業・介護休暇の使い方:目的は「介護を全部やる」ではなく「体制を整える」
介護休業・介護休暇は、介護をすべて自分で抱えるための制度ではありません。
本来の価値は、要介護認定・ケアマネ選定・サービス導入・家族の役割分担など、介護が長期化しても回る体制を“短期で整える”点にあります。
このステップでは、制度の基本と利用条件を押さえつつ、「休んだのに楽にならない」を避けるための優先タスクと、制度が使いにくい場合の代替策まで整理します。
1.介護休業制度の概要と利用条件|介護休業の使い方:目的は「介護を全部やる」ではなく「体制を整える」
この項では、介護休業制度の概要と利用条件について、前回記事で提示した家族モデルに基づいて確認し、制度の利用可否について家族間でどのように話し合うべきかを提案します。
また、企業独自の介護支援策の確認方法や、制度を利用できない場合の対応策も検討します。
1)家族モデルを用いた確認の重要性
家族内で介護を担うメンバーがどのような就労状況にあるかを確認することが、「介護休業」の取得可能性を見極めるために非常に重要です。以下に、家族モデルを用いた具体的な確認方法を示します。
・モデル1):両親ともに介護が必要な場合
両親が要介護状態にあり、子どもたちが介護を支えるケースでは、同居している子どもや近隣に住む子どもが介護休業を取得できるかを確認します。
働いている企業や組織がきちんと介護休業法に則って社員・職員の介護休業・介護休暇の取得を支援しているか、あるいは独自の介護支援制度を導入・取得推奨しているかを確認し、自身の活用方法を調べておきましょう。
この準備は、以下のモデルだけでなく、すべてに共通の必要行動です。
・モデル2):両親のうち片方が介護を必要とする場合
配偶者の介護もできる健康状態にある親が主な介護者となるケースでは、もしその親が働いていれば、その企業の介護支援制度の有無を確認し、休業を取得する可能性を検討します。
また子どもが親と共に介護を協力して担う場合も、自分が勤務する企業等についても同様確認しておくことは当然です。
他の協力をしてくれる兄弟姉妹についても同じように調べ、どのように介護を分担できるか、話し合っておきます。
・モデル3):片親のみが存命でその親が介護を必要とする場合
このケースでは、前項でも述べた内容と同じ意味ですが、介護を担う子どもが介護休業を取得できるかどうか、特に就労形態や企業の支援制度の有無を確認します。
また、利用できる地域の支援サービスや、家族間での役割分担についても話し合います
2)企業独自の介護支援策の確認
介護休業法に基づく制度の利用が難しい場合でも、企業が独自に提供する介護支援策が利用できる場合があります。
このような支援策の内容を事前に確認し、家族間で共有することが重要です。
特に、時短勤務やフレックス制度など、法定の介護休業に代わる選択肢を検討します。
3)介護休業で優先すべきタスク(現実的な順番)
介護休業は、長期の介護そのものを一人で担うためというより、介護体制を作るための時間として使う方が成功しやすいです。
そこで、介護休業時に優先して取り組むべき介護対策を以下に挙げました。
・要介護認定やサービス導入の手続き整理
・ケアマネ選定・ケアプラン初期設計
・デイ・訪問介護・ショート等の試行導入
・家族の担当表と費用ルールの確定
・緊急時の連絡体制(自治体・包括・病院・民間)整備
「休業したのに介護が楽にならない」ケースは、休業中に“体制構築”が進まず、休業後に同じ苦労を繰り返す時に起きます。
4)制度利用が難しい場合の対応策
①外部支援サービスの活用
介護休業を利用できない場合、デイサービスや訪問介護など、地域の介護支援サービスを積極的に活用することが推奨されます。これにより、介護者の負担を軽減できます。
②家族間での役割分担
介護休業が利用できない場合、家族間で役割を明確にし、負担を分散させる方法を話し合います。たとえば、平日は働いている家族が支援を行い、週末は他の家族メンバーが介護を担当するなど、柔軟な対応が求められます。
このセクションでは、介護休業制度の概要と利用条件について、家族モデルを用いて具体的に確認しました。
家族間で制度の利用可否を確認し、最適な介護体制を築くことが重要です。
なお、企業独自の介護支援策や、必要に応じて外部支援を活用する方法などについては、別項で取りあげます。

2.介護休暇の使い方:適切なタイミングと活用法、短時間・突発対応の切り札に
介護休暇は、短期間の介護支援を目的とした制度であり、介護休業と同様に育児・介護休業法に基づいています。
介護休暇は、
・通院付き添い
・役所手続き
・ケアマネ面談
・緊急時の一時対応
に非常に向いています。
「急に休むしかない」状況が続くと、職場での信頼も本人のストレスも損なわれます。
介護休暇を“計画的に”使えるだけで、仕事が続けやすくなります。
この項でも、家族モデルを用いて、介護休暇の利用可否を確認し、適切なタイミングで活用するための方法を整理します。
また、制度を利用できない場合の対応策についても提案します。
1)介護休暇の概要
介護休暇は、1日または半日単位で取得できる制度で、短期間の介護対応が必要な場合に非常に役立ちます。
この制度は、介護休業法に基づいており、正社員や特定の条件を満たした非正規社員が利用できます。
介護休業法を順守している企業・団体では、この「介護休暇」の取得についても、企業ぐるみで対応しているのではと想像しますが、中小企業や業種によっては、まだまだ運用が困難な例も多いのではと思われます。
2)家族モデルを用いた確認
前項の「介護休業」での家族モデルの記述と基本的には同じになりますが、一応、繰り返しておきました。
「介護休業」が「介護休暇」に置き換わっただけですが、実際の運用と活用方法に関しては、介護休業とは全く異なり、急な対応、短時間だけの対応など、目的が限定され、かつ非常に役に立つ、助かる制度なので、しっかり確認しておいて頂きたいと思います。
・モデル1):両親ともに介護が必要な場合
両親が共に要介護状態にある場合、同居している子どもや近隣に住む子どもが介護休暇を取得できるかを確認します。
急な体調変化や通院が必要な場合、介護休暇が非常に有効です。
急な場合だけでなく、1日は必要のない、通院のための介護や他の家族の介護の代わり役を担う場合など事前に計画を組んで取得・利用するなど考えられます。
・モデル2):両親のうち片方が介護を必要とする場合
介護を必要とする親がいる家庭では、健康な親が介護休暇を取得できるかを確認し、必要に応じて計画的に取得します。また、家族間での情報共有や役割分担が重要です。
・モデル3):片親のみが存命でその親が介護を必要とする場合
このケースでは、介護を担う子供が介護休暇を取得できるかを確認し、急な対応が必要な場合に備えておくことが求められます。
3)制度利用が難しい場合の対応策
介護休暇を利用できない場合でも、短期間の支援が必要な場合には、以下のような方法を検討します。
①柔軟な時間管理
介護休暇が利用できない場合でも、フレックス勤務や短時間勤務の選択肢がある場合は、それらを活用して仕事と介護を両立させます。
②外部支援の併用
デイサービスや訪問介護を活用し、介護者の負担を軽減します。特に、短時間でのサポートが必要な場合には、地域のサービスを利用することが効果的です。
介護休暇は、短期間の介護支援に非常に有効ですが、その利用には条件や制約があります。
家族モデルも参考にして頂き、利用可否を確認し、場合によっては外部支援を活用することで、介護と仕事を両立させることができるよう働きかけしてください。
3.介護休業や介護休暇を利用できない場合の対応策|制度が使えない/使いにくい場合の代替設計(ここで諦めない)
制度が使えない理由は様々です(自営業、フリーランス、短時間労働、職場事情など)。
この場合は、次の順で“外部を組み込む設計”に切り替えます。
・デイ/訪問介護/ショートで「就労時間」を確保
・家族がいる場合は「現場」より「機能(手続き・金銭・連絡)」で分担
・自治体窓口・地域包括を早期に“日常の相談先”にする
・必要なら民間サービスも併用(見守り、配食、家事など)
すべての家族が介護休業や介護休暇を利用できるわけではありません。
この項では、制度を利用できない場合の対応策について、具体的な方法を紹介します。
1)制度利用の有無・可否の確認と家族間での情報共有
まず、家族内で介護休業や介護休暇を利用できるかどうかを確認することが最初のステップです。
これは、企業の就業規則や労働組合のガイドライン、人事部門の問い合わせによって確認できます。
本来、法律で規定されている制度であり、企業等適用対象となる場合(ほとんどですが)のそのとおり運用する義務・責任があります。
しかし、企業等によっては、その取得申請に圧力をかける風潮や文化があったり、社員・職員自らが遠慮したり躊躇ったりする例もまだまだ多いとされています。
こうした実態から早く抜け出すためにも、その取得の権利を持つ方は、積極的に働きかけ、行動することが大切です。
なおそれとは別に、企業が独自に提供している介護支援制度がある場合、その内容をしっかり把握し、有効に活用する方法を検討しておくこともお薦めします。
2)育児・介護休業法の適用を受けない就労者・自営業者の場合
育児・介護休業法の適用を受けない就労者(例えば、自営業者、フリーランス、短時間労働者など)の場合、法定の介護休業や介護休暇は利用できません。
そのため、以下のような代替策を検討する必要があります。
①地域の介護支援サービスの活用
市町村が提供する介護支援サービスや民間の介護サービスを積極的に利用します。
たとえば、デイサービスや訪問介護、ショートステイなどのサービスを計画的に利用することで、介護者の負担を軽減できます。
②家族間の役割分担と外部支援の計画も
家族全員がそれぞれの役割を明確にし、必要に応じて外部支援を利用することで、介護負担を分散させます。
たとえば、週末だけ訪問介護を利用し、平日は家族でサポートするなど、柔軟な対応も検討してみては、と思います。
まとめ
介護休業・介護休暇は、取れるかどうかだけでなく「何に使うか」で成果が変わります。
休業中は、
・認定・契約・支払いなど“詰まる作業”を片付ける
・ケアマネとケアプランの初期設計を進める
・デイ/訪問/ショートを試し、就労時間を守る枠を作る
・家族の担当表と費用ルールを確定する
に集中すると、復職後の負担が大きく下がります。
制度が使いにくい場合は、働き方の調整と外部支援の組み込みに早めに切り替えましょう。

ステップ7-3|ケアプランとデイサービスの活用法:家族の就労を守るための“外部支援の組み込み”
家族だけで介護を回そうとすると、誰かの生活と仕事が崩れます。
介護離職を防ぐには、ケアプランとデイサービスを「高齢者の支援」だけでなく、家族の就労と生活を守る仕組みとして設計することが重要です。
このステップでは、ケアマネへの伝え方(家族の就労状況と限界の共有)、ケアプランの見直しのコツ、デイサービスの選び方・体験利用のポイントを整理します。
1.ケアプランの作成と活用のポイント
ケアプランは、要介護者の生活を支えるための具体的な計画書です。
ケアマネージャーと連携しながら、家族全員が参加して作成することが望ましいです。
この項では、ケアプランの作成方法と、どのように活用していくべきかを具体的に解説します。
1)ケアプランの作成
①ケアプランとは
ケアプランは、要介護者が受ける介護サービスや支援内容をまとめた計画書で、「居宅サービス計画書」と呼ばれ、ケアマネージャーが中心となり、家族と、あるいは介護を受ける人とも相談しながら作成します。
②ケアマネージャーとの連携
ケアプランを作成する際、家族は要介護者の状態や希望をケアマネージャーに伝えることが重要です。
たとえば、どのようなリハビリが必要か、日常生活でどのようなサポートが必要かを具体的に伝えます。
実際のケアプラン作成例として、Aさんが一人で行えない日常の動作をリストアップし、具体的な支援計画をケアマネージャーとともに策定することで、週に3回の訪問介護サービスが計画に組み込まれたことが挙げられます。
③ケアプランの定期的な見直し
ケアプランは、要介護者の状態や家族の状況・事情に応じて定期的に見直すことが求められます。
原則として、ケアマネージャーの仕事として毎月計画が更新され、介護施設・介護担当責任者、介護される人と家族責任者間でその内容を確認し、署名を行います。
このように介護を担う家族の希望・要望が反映されますし、ケアマネージーから必要に応じて適切な助言や提案も行われ、最適なケアプランを立案し、これに基づいて介護サービスなどが行われます
2)ケアプランの活用
①日常のケアに反映
作成したケアプランを、日常のケアにどのように反映させるかがポイントです。
具体的には、ケアプランに記載されたサービスをどのように利用するか、家族間での役割分担も併せて明確にし、実践していくことになります。
②外部支援との連携
ケアプランに基づいて提供される訪問介護、デイサービスなどの外部サービスと、家族の役割を連携させ、無理のないケア体制を築くことが大切です。
ケアプランは、家族介護の重要な指針となるものです。
ケアマネージャーと密に連携し、定期的な見直しを行いながら、日常のケアに反映させていくことで、より質の高い介護を維持し、実践することができます。
2.デイサービスの選び方と利用法
デイサービスは、要介護者の生活の質を向上させるだけでなく、介護者の負担を軽減するための有効な手段です。
この項では、デイサービスの選び方とその具体的な活用法について解説します。
1)デイサービスの選び方
①デイサービスとは
デイサービスは、要介護者が日中を施設で過ごし、リハビリやレクリエーションを受けられるサービスです。
介護者にとっても、日中の負担を軽減する貴重な時間となります。
②サービス内容の確認
デイサービスを選ぶ際には、施設が提供するサービス内容をしっかり確認しましょう。
リハビリに特化した施設や、社会的交流を重視したプログラムを提供する施設など、要介護者のニーズに合ったサービスを選ぶことが重要です。
その際、ケアマネージャーに相談し、助言や提案を依頼することができるよう良好な関係を作り、維持することが望ましいです。
③デイサービス施設見学と体験利用
実際にデイサービス施設を見学し、施設の雰囲気や内部の設備を知り、可能ならば体験利用を通じてサービス内容や質を確認することも大切なことです。
要介護者が施設に慣れることができそうか、スタッフの対応が親切かどうかなどを確認できればと思います。
2)デイサービスの利用法
①定期的な利用のすすめ
デイサービスは、定期的に利用することで、要介護者の生活リズムを整え、心身の安定を図ることができます。
また、介護者にとっても、休息の時間を確保することが可能になり、非常に有効な方法です。
②利用スケジュールの調整
家族間でデイサービスの利用スケジュールを調整し、他の介護とバランスを取りながら利用することも必要です。
特に、デイサービスを利用する日と、家族が直接介護を行う日をうまく組み合わせることで、介護者の負担を軽減するとともに、安定した生活を送ることができるようにしたいものです。
デイサービスは、要介護者の生活を支えるだけでなく、介護者の負担軽減も目的とした有効で重要な手段です。
サービス内容をしっかり確認し、家族全員で利用スケジュールを調整しながら、最大限に活用していきましょう。
3.家族全員の理解と協力の重要性
ケアプランやデイサービスの利用には、家族全員の理解と協力が不可欠です。
この項では、家族間での情報共有と、役割分担の重要性について考えます。
1)家族間での情報共有
①ケアプランの共有
ケアプランは、家族全員が理解し、共有することが重要です。
定期的な家族会議を開いたり、LINEのグループ機能を用いて、居宅サービス計画書を画像で確認し、その内容やケアプランの進捗や変更点を確認することをお薦めします。
また、デイサービスのスタッフとの定期的なコミュニケーションも重要で、要介護者の状況やサービスの内容についてフィードバックを受けることで、安心してサービスを利用することができます。
②デイサービスの利用報告
デイサービスを利用している場合、その様子や要介護者の状態の報告を受けたり、当人の意見や感想なども聞き取り、家族全員と共通することをお薦めします。
また必要に応じて、改善などの話し合いを行うことができればよいでしょう。
2)関心や理解のばらつきへの対策
①啓蒙啓発活動、情報共有活動
家族内でケアプランやデイサービスに対する関心や理解にばらつきがある場合、積極的に情報を提供・共有し、理解を深めるための啓蒙啓発活動を行います。
具体的には、ケアマネージャーによる説明会や、介護に関するセミナーへの参加を促すことなども考えられます。
また、家族内で介護日誌を共有し、各メンバーが日々のケア内容や気づきを記録することで、全員が同じ情報を共有し、協力しやすくなります。
②協力体制の強化
家族全員が協力して介護に取り組むためには、それぞれの役割を明確にし、定期的にコミュニケーションを取ることが大切です。
まとめ
ケアプランは、介護される人のための計画であると同時に、家族の生活を守るための設計図でもあります。
・ケアマネに「就労状況」「できる/できない」を最初に明確に伝える
・デイや訪問、ショートを組み合わせ、就労時間を守る
・毎月の見直しで、状態悪化や家族の疲弊を放置しない
この3点を押さえるだけで、介護の継続と仕事の継続が両立しやすくなります。

ステップ7-4|ステップ7-4|家族がいない場合の介護支援:自治体・地域包括・専門職で“外部の協力体制”を設計する
はじめに|家族が頼れない介護を「一人で抱えない」ために
家族がいない、または家族が介護に関与できない場合、介護は「孤独な継続戦」になりがちです。
しかし、支えがゼロという意味ではありません。
重要なのは、家族の代わりに、
自治体窓口・地域包括支援センター・ケアマネ・訪問介護などを“日常の連絡先”として固定し、外部に協力体制を設計することです。
これができると、突発の入院・転倒・認知症症状の進行が起きても、判断と連絡が回りやすくなり、生活の破綻を避けやすくなります。
このステップでは、家族が頼れない状況でも介護を現実的に回すために、
- 全体像(何を誰に頼るか)
- 最初の一歩(動き出しの手順)
- 詰まりやすい点(失敗しやすいポイント)
- 実例(どう改善したか)
- 補強策(保険外も含む)
の順で整理します。
1.全体像:家族の代わりに「外部の協力者」を固定する(目的:連絡と判断の混乱を防ぐ)
家族が頼れない場合、介護の課題は「介護そのもの」よりも、次の3つで詰まりやすいです。
- 連絡が回らない(誰に相談し、誰が決めるのかが不明)
- 手続きが進まない(要介護認定、サービス導入、契約、支払い)
- 緊急時に詰む(夜間、転倒、急変、認知症のトラブルなど)
そこで、最初に“外部の協力者”を次のように固定しておきます。
・相談の起点:地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)/自治体の介護保険担当窓口
・サービス調整の中心:ケアマネージャー(居宅介護支援事業所)
・生活を支える実務:訪問介護、デイサービス、ショートステイ、訪問看護 など
・緊急時の備え:見守り・緊急通報、24時間対応サービス、かかりつけ医(可能なら)
「家族会議」ができない代わりに、
“外部の相談先(地域包括)と、実務の司令塔(ケアマネ)”を最初に確保するのが最大のポイントです。
2.最初の一歩:動き出しの手順(目的:迷わず介護を回し始める)
家族がいない/頼れない状況では、まず次の順で動くとスムーズです。
1) 相談先を決める(地域包括 or 自治体窓口)
・すでに介護に困り始めている場合:地域包括支援センターに相談
・要介護認定の申請を進めたい場合:自治体の介護保険担当窓口へ
「誰に何を言えばいいか分からない」段階でも大丈夫です。
状況を説明し、次に必要な手続きを案内してもらうことが最初の目的です。
2) 要介護認定の申請をする(介護保険サービスの入口)
介護サービスを使うには、原則として要介護認定が入口になります。
申請は自治体窓口で行います(本人が難しい場合、代行や支援の相談も可能です)。
3) 認定後にケアマネを決める(体制づくりの中核)
要介護認定(要支援含む)が出たら、次は**ケアマネ(または地域包括)**と連携して、ケアプランを作り、必要なサービスを組み合わせます。
4) 最初は「最低限の枠」からサービスを入れる
いきなり完璧に組む必要はありません。
まずは生活が破綻しやすい部分から、次のような最小限の枠を作ります。
・見守り(転倒・急変への備え)
・入浴・排泄・服薬などの安全確保
・食事・買い物・清掃などの生活維持
・日中の居場所(デイサービス等)
・介護者(本人)側の休息・就労時間の確保(必要な場合)
3.詰まる点:ここで止まりやすいポイントと対策(目的は、失敗パターンを避けること)
家族が頼れない介護では、次の「詰まり」がよく起きます。
1) 手続きが進まず、サービス開始が遅れる
・申請書類や段取りが分からない
・主治医意見書の依頼が遅れる
・認定調査で困りごとを十分に伝えられない
対策:地域包括・自治体窓口に“段取りを一緒に組んでもらう”
不安が強い場合は、認定調査の立ち会い方法なども含めて相談します。
「困ったときの」対応ももちろん必要ですが、「困る前」に調べて、相談することも大切です。
2) 「何ができないか」をうまく説明できず、支援が薄くなる
認定調査やケアプラン作成では、遠慮すると支援が薄くなりがちです。
以下の例のような困りごとがあれば、しっかり伝えることが対策として欠かせません。
対策:困りごとを“場面”で伝える
例:
・夜間にトイレで転びそう
・服薬を忘れてしまう
・食事が不規則で栄養が取れていない
・外出して迷う/鍵をかけ忘れる など
3) 緊急時に連絡先がなく、判断が遅れる
夜間・休日の急変で、誰に連絡するか分からないと詰みます。
こうしたリスクに備えて、以下の対策を打っておきましょう。
対策:緊急連絡の“固定先”を作る
・地域包括/ケアマネの連絡方法(時間外の扱い)
・かかりつけ医、訪問看護の連絡方法
・緊急通報/見守りサービスの導入
◆要点まとめ(ここまでの結論)
本節は、長いので、ここまでの要点を一旦整理しました。
・家族が頼れない場合は、「地域包括+ケアマネ」を最初に固定する
・介護保険サービスの入口は要介護認定
・詰まりやすいのは「手続き」「説明不足」「緊急時の連絡先」
・最初は完璧を目指さず、生活破綻しやすい部分から“最低限の枠”を作る
以降、本節の後半です。
4.実例:外部支援を組み込んで生活が回ったケース(目的:イメージを持ってもらう)
事例1:訪問介護+デイサービスで「自宅生活」を維持できたケース
80代のAさんは一人暮らしで、掃除や買い物、入浴が難しくなっていました。
地域包括に相談し、要介護認定後にケアマネとケアプランを作成。
週に数回の訪問介護(掃除・買い物・入浴介助)と、週1回のデイサービスを組み合わせたことで、生活の安全とリズムが安定しました。
「困ったら相談できる先」ができたことで、本人の不安も減り、状況悪化時も早めに手を打てるようになりました。
事例2:小規模多機能型居宅介護で「日中・夜間の不安」を減らしたケース
70代のBさんは認知症が進み、日中の見守りや生活支援が必要になりました。
家族の協力が得られない状況だったため、ケアマネと相談し、
通い(デイ)・訪問・泊まり(ショート)を柔軟に組み合わせられる小規模多機能型居宅介護を活用。
その日の状態に応じて支援の厚みを調整でき、転倒や徘徊などのリスクへの備えができました。
事例3:デイサービスを増やして「孤立」と「生活の乱れ」を改善したケース
一人暮らしで物忘れが増えた方が、週数回〜高頻度でデイサービスを利用し、
生活リズム・交流・安全確認を確保できたことで、孤立感が軽減し、本人の精神的な安定にもつながりました。
サービスを“増やす”ことは負担の増加ではなく、破綻を防ぐ投資になる場合があります。
5.補強策:介護保険だけでは足りない時の「保険外+地域資源」(目的:最後に詰まらない)
介護保険サービスだけで生活が回らない場合は、次の順で補強します。
1) 見守り・緊急通報を入れて「夜間・急変」に備える
・緊急通報装置
・見守りセンサー
・24時間対応の連絡先を用意できるサービス
このような応急時のための対策の備えを怠らないようにしましょう。
「倒れた時に誰にも気づかれない」リスクを下げるのが最優先です。
2) 配食・家事支援で「生活の底割れ」を防ぐ
・配食サービス(栄養+安否確認が付く場合もあります)
・家事代行(掃除・洗濯など)
・買い物代行
なども利用できるよう備えを!
3) 近隣・友人ネットワークは「小さく」作る:無理をしない
家族の代わりに地域で支えると言っても、広い関係は不要です。
まずは、緊急時に一言声をかけられる人を一人でも作るだけで違います。
自治体や地域包括に、地域の見守り活動・サロン・NPO等を案内してもらうのも現実的です。
4) 契約・支払い・重要書類の管理を“簡単に”固定する
家族がいない場合、ここが抜けると一気に混乱します。
・支払い方法を一本化(口座引落、カード等)
・書類の置き場所を固定(クリアファイル1冊など)
・連絡先一覧(地域包括、ケアマネ、事業所、病院)を紙でも残す
こうした準備も必須です。
補足:家族がいない場合のメンタルケアは「自己チェック+外部固定」
家族がいない場合、メンタル不調はさらに見えにくくなります。
そのため、次の2点を必ずセットで行います。
・自己チェックを定期化する(睡眠・食事・不安・孤立感)
・相談先を固定する(地域包括・ケアマネ・医療機関)
「誰にも言えない状態」が続くこと自体が、最大のリスクです。
少しでも不調を感じたら、体調ではなく“生活が回っているか”を基準に相談してください。
まとめ
家族がいない/頼れない介護のポイントは、「一人で頑張る」ではなく、外部の協力者を固定して“回る体制”を設計することです。
地域包括と自治体窓口を入口に、ケアマネを中心にサービスを組み立て、見守り・配食・家事支援なども必要に応じて補強すると、生活は現実的に維持できます。
迷ったら、まずは一つだけ行動してください。
「地域包括支援センターに相談し、次の一手(申請・連絡先・サービス導入)を一緒に決める」
これが、家族が頼れない介護で最も確実なスタートになります。

まとめ(総括)
本章では、介護離職を防ぐために欠かせない「家族の協力設計」を、4つの観点(役割分担/情報共有/制度活用/外部支援)で整理しました。
介護の負担は、介護の重さだけで決まるのではありません。
「誰が」「何を」「どの頻度で」「どこまで」「費用はどうするか」が曖昧なまま走り出すと、連絡や判断が混乱し、負担が特定の人に集中します。結果として介護者が疲弊し、仕事の継続が難しくなり、介護離職に近づいてしまいます。
だからこそ大切なのは、完璧な家族協力を目指すことではなく、次の順で“回る仕組み”を先に作ることです。
- 話し合いの型を作る(決める項目を固定する)
- 情報共有を仕組みにする(LINE等で記録を残す)
- 制度が使える人は「体制構築の時間」として使い切る
- 家族が頼れない場合は、自治体・地域包括・専門職で協力者を外部に設計する
介護は突然始まり、長期化することも少なくありません。
「辞める前提」ではなく「続ける前提」で、家族の協力体制と外部支援を組み合わせておくことが、本人・職場・家族の全てを守る現実的な選択になります。
<付録:この章の「実行チェックリスト」(家族がいない場合版)>
※このチェックリストは、
「家族がいない/家族に介護を頼れない」状況でも、介護を一人で抱え込まず、外部の協力体制を設計するための実務用チェックリストです。
すべてを一度に埋める必要はありません。上から順に、できるところから確認してください。
① 相談・連絡の起点を固定する(最重要)
▢ 地域包括支援センター または 自治体の介護保険担当窓口を把握した
▢ 電話番号・受付時間・相談方法(電話/来所)をメモした
▢ 「困ったらまずここに連絡する」という相談先を1つ決めた
※家族会議ができない場合、この“最初の相談先”が家族の代わりになります。
② 要介護認定の申請・進捗を整理する
▢ 要介護認定を申請した/申請予定日を決めた
▢ 申請窓口(自治体名・担当課)を把握している
▢ 主治医意見書の依頼方法・病院名を確認した
▢ 認定調査で伝える「困りごと」をメモしている
(転倒、夜間不安、服薬忘れ、食事・外出の困難など)
※「遠慮せず、生活上の困難を具体的に伝える」が重要です。
③ ケアマネージャーを中心に“体制の司令塔”を作る
▢ 担当ケアマネージャー(または地域包括)が決まっている
▢ ケアマネの連絡先(電話・時間外対応)を控えている
▢ 自分(または本人)の生活状況・限界を伝えた
▢ ケアプランの内容を把握し、定期的に確認している
※「何ができないか」「どこで破綻しやすいか」を共有できているかがポイントです。
④ 最低限の介護サービスで“生活の枠”を作る
▢ 見守り・安全確保(訪問介護・見守りサービス等)を検討した
▢ 入浴・排泄・服薬など、危険度の高い部分に支援が入っている
▢ 食事・買い物・清掃など、生活維持の支援を検討した
▢ デイサービスや通所系サービスの利用を検討・体験した
※最初から完璧を目指さず、「生活が崩れやすい部分」から枠を作ります。
⑤ 緊急時・夜間の“詰まり”を防ぐ備え
▢ 夜間・休日の緊急連絡先を決めている
▢ かかりつけ医/訪問看護/事業所の連絡方法を把握している
▢ 緊急通報・見守りサービスの導入を検討した
▢ 入院・急変時の対応フローを簡単に書き出した
※「誰にも連絡できない状態」を作らないことが最優先です。
⑥ 介護保険外サービス・地域資源で補強する
▢ 配食サービス(安否確認付き含む)を検討した
▢ 家事支援・買い物代行などの利用を検討した
▢ 地域の見守り活動・サロン・NPOの情報を把握した
▢ 近隣・友人など、緊急時に一言頼れる人を1人想定した
※広い人間関係は不要。「小さく、確実に」が原則です。
⑦ 事務・お金・書類を“簡単に固定する”
▢ 支払い方法(引落・カード等)をできるだけ一本化した
▢ 重要書類(保険証・認定結果・契約書)の置き場所を固定した
▢ 連絡先一覧(自治体・包括・ケアマネ・事業所・病院)を紙でも残した
※家族がいない場合、ここが崩れると一気に混乱します。
⑧ 見直しの合図(トリガー)を自分で決めている
▢ 転倒・救急搬送が増えた
▢ 夜間不安・徘徊・認知症症状が強くなった
▢ 食事・服薬・清潔が保てなくなった
▢ 強い不安・孤立感・生活の破綻を感じた
→ 1つでも当てはまったら、サービスを増やす/相談先に再連絡する
<この付録の使い方>
・最初は ①②③だけでもOK
・詰まったら、地域包括支援センターにこのチェックリストを見せて相談
・「一人で判断しない」状態を作れれば、介護は回り始めます
最後に
迷っている場合、今日やる行動は一つだけで十分です。
「地域包括支援センターに連絡し、次に何をすべきかを一緒に決める」
これが、家族がいない介護における、最も確実な第一歩です。
▢ 家族モデル(1〜5)を一つ決める
▢ 家族会議で決める項目テンプレ(7項目)を埋める
▢ LINEグループを作り、ノートに固定情報を置く
▢ 介護休業・介護休暇・時短・在宅の可否を家族で共有する
▢ ケアマネに「家族の就労状況と限界」を伝える
▢ デイ/訪問/ショートで“就労時間を守る”枠を作る
▢ 家族が頼れない場合は、自治体・地域包括を“日常の連絡先”にする
次章・ステップ8は、「介護離職防止を想定しての介護の事前準備・計画と相談」というテーマで、ステップ7までのおさらいを兼ねて整理します。

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